『レシピクリエーション③ 「自分のレシピ」は、どう育っていくのでしょうか』

2026年09月08日 19:53
日本ハーブスイーツ協会

基本レシピを作る。
そこから、

ひとつ変える。

食べてみる。

また少し調整する。

ここまで来ると、少しずつ、

「これは元のレシピとは違うな」

という感覚が生まれてきます。

でも、そこで次に出てくるのが、
こんな疑問です。

どこからが「自分のレシピ」なのでしょうか。

ハーブを変えたら。

果物を変えたら。

分量を少し調整したら。

組み合わせを変えたら。

それだけで、
自分のレシピと呼んでいいのでしょうか。

Herb Sweets Methodで考える
『レシピクリエーション』の最後に、私はこの部分をとても大切にしています。

なぜなら、自分のレシピとは、
誰も見たことのないものを突然発明することではないからです。

基本を知り、

自分で考え、

作り、

食べ、

また考える。

その繰り返しの中で、

少しずつ、

自分の判断が増えていったもの。

それが、自分のレシピになっていくのだと思っています。

〜「完全なオリジナル」を急がなくていい〜

オリジナルレシピ。
そう聞くと、何か特別なものを作らなければならないように感じます。

誰も使ったことのない素材。

見たことのない組み合わせ。

新しい製法。

そんなものを考えなければ、

オリジナルとは言えないように思えるかもしれません。

でも、お菓子作りには長い歴史があります。

クッキー。

マフィン。

スコーン。

ケーキ。

ショートブレッド。

基本となる形は、すでにたくさんあります。
そこから学ぶことは、
何も悪いことではありません。

むしろ、
しっかりした基本があるからこそ、
安心して自分の方向へ進めます。

大切なのは、
「誰もやったことがないか」
ではなく、
自分で考えて選んだかどうか。
そこからです。

〜最初の「自分らしさ」は、とても小さなものです〜

たとえば、基本のカモミールマフィンがあります。

そこへ、自分が好きなオレンジ
ジャムを合わせてみた。
それだけかもしれません。

あるいは、
ローズのクッキーを、
自分には少し華やかすぎると感じて、ローズを少し控えめにした。
それだけかもしれません。

でも、そこには、
自分の感覚があります。

「私はこのくらいが好き」

「この組み合わせで食べたい」

その小さな判断が、
レシピクリエーションの大切な一歩です。

最初から大きく変えなくてもいい。
むしろ、小さな選択を重ねること
の方が、自分らしいレシピにはつながりやすいと思っています。

〜作って終わりではなく、「もう一度作る」〜

一度アレンジして、おいしくできた。それだけでも十分うれしいものです。

でも、自分のレシピへ育てていくなら、もう一度作ってみます。
同じように作れるだろうか。

香りは同じだろうか。

食感は。

焼き色は。

翌日もおいしいだろうか。

一度だけうまくいったものと、
何度作っても同じように仕上がるものでは、少し意味が違います。

レシピとして残すなら、
再現できることも大切です。

〜「再現できる」は、自由を失うことではありません〜

感覚で作ることは、
とても楽しいものです。

このくらい。

少しだけ。

今日はこれを。

そんな自由さも、
ハーブスイーツの魅力です。

でも、人に伝えたい。

教室で使いたい。

お店で出したい。

あるいは、

半年後の自分がもう一度同じものを作りたい。

そうなったときには、
少しだけ数字が必要になります。

ハーブは何gだったか。

果物はどのくらいだったか。

焼成は何度で何分だったか。

だから、自由に作ったものを、
一度だけきちんと記録してみる。

すると、感覚で生まれたものが、
レシピとして残せる形
になっていきます。

〜メモが「自分のレシピ」に変わる瞬間〜

最初のメモは、
本当に簡単で構いません。

「ローズ少し減らす」

「ラズベリーを足した」

「焼き時間2分長め」

そんな程度です。

でも、何度か試作するうちに、
少しずつ数字が整っていきます。

ハーブはこのくらい。

果物はこのくらい。

この温度で焼く。

この状態がいちばん好き。

そうやって、
自分の中で決まってくる。

すると、ただのアレンジメモだったものが、少しずつ、
ひとつの完成したレシピへ変わっていきます。

〜「なぜこうしたのか」まで残してみる〜

さらに一歩進めるなら、
数字だけでなく、
理由も少し残しておきます。

なぜ、

このハーブを選んだのか。

なぜ、

この果物を合わせたのか。

なぜ、

このくらいの香りにしたのか。

なぜ、

甘さをこの程度にしたのか。

この理由が残っていると、
あとでレシピを見返したときに、
そのときの判断まで思い出せます。

そして、別のレシピを作るときにも使えます。

「このときは酸味で香りを明るくしたから、次も同じ考え方が使えそう」

そんなふうに、
ひとつのレシピの経験が、
次のレシピへつながっていきます。

〜完成とは、「もう変えないこと」ではありません〜

自分のレシピができた。
そう言っても、それで一生変えない必要はありません。

季節が変わる。

使うハーブが変わる。

材料が変わる。

自分の好みも変わる。

すると、同じレシピでも、
少し調整したくなることがあります。それでいいと思っています。

レシピは、
一度完成したら動かしてはいけないものではありません。

むしろ、作り手と一緒に育っていくものでもあります。

〜以前好きだったものが、少し変わることもあります〜

何年もお菓子を作っていると、
自分の感覚も変わります。

以前は、
しっかり香る方が好きだった。
でも今は、
少し穏やかな方が好き。
以前は、
甘さを強くしていた。
今は、
素材の香りをもう少し残したい。

そういう変化があります。

それは、
昔のレシピが間違っていたということではありません。

そのときの自分には、
それがちょうどよかった。

そして今は、
今のちょうどよさがある。

レシピクリエーションは、
自分の感覚の変化も含めて、長く
続いていくものだと思っています。

〜季節によって「自分のレシピ」に枝を増やす〜

ひとつの基本レシピができたら、
季節ごとの枝を作ることもできます。

春は、
イチゴ。

夏は、
柑橘やミント。

秋は、
リンゴやナッツ。

冬は、
チョコレートやスパイス。

同じ基本生地。

同じ考え方。

でも、
季節によって表情が変わります。

そうすると、ひとつのレシピが、
一年を通して何度も使えるものになります。
自分のレシピとは、
ひとつの完成品ではなく、そこからまた枝が伸びていく土台にもなります。

〜「誰に食べてもらうか」で、レシピはまた変わります〜

自分用なら、少し個性的でもいい。

家族なら、
みんなが食べやすいように。

子どもと作るなら、
香りを少し穏やかに。

贈り物なら、
華やかさを加える。

教室なら、
再現しやすさも大切。

お店なら、
保存性や作業性も考える。

同じレシピでも、目的によって
調整する部分が変わります。

だから、
「自分のレシピ」というのは、
自分だけが食べるものという意味ではありません。
自分が考えて、その場に合う形へ整えられるレシピ。

私は、それも自分のレシピだと思っています。

〜レシピを創ることは、判断を重ねること〜

ここまで来ると、
レシピクリエーションという言葉が、少し違って見えてきます。

何かを発明すること。
ではなく、
ひとつひとつ判断すること。

このハーブにしよう。

このくらいにしよう。

この果物を合わせよう。

少し甘さを調整しよう。

この食感は残そう。

この焼き方でいこう。

小さな判断を積み重ねた結果、
ひとつのお菓子ができる。

つまり、レシピを創るということは、自分で選べるようになること
でもあります。

〜香りのバランスが、判断を支えます〜

ここで、
Herb Sweets Methodの最初の柱、
香りのバランスが生きてきます。

このハーブを、
どのくらい感じさせたいのか。

前に出すのか。

後ろへ置くのか。

ほかの素材と一緒に感じさせるのか。

自分で判断できるようになると、
レシピの香りを、ただ数字で決めるだけではなくなります。

作りたいお菓子に合わせて、
香りを整えることができます。

〜フレーバーペアリングが、次の可能性を広げます〜

そして、二つ目の柱、
フレーバーペアリング。

何と合わせるか。

なぜ合わせるか。

どんな役割を持たせるか。

ここが分かってくると、
ひとつのレシピから、
次の組み合わせが生まれます。

このハーブなら、
果物を変えてみよう。

この香りなら、
少し苦味を加えてみよう。

このお菓子なら、
ナッツの香ばしさも合いそう。

組み合わせの知識が、
新しいレシピの種になります。

〜三つの柱は、最後にはひとつになります〜

香りのバランス。

フレーバーペアリング。

レシピクリエーション。

最初は、
別々の考え方として学びます。

でも、実際に自分でレシピを作るときには、三つを同時に使っています。

どのくらい香らせるか。

何と合わせるか。

どんなお菓子にするか。

三つを行ったり来たりしながら、
ひとつの答えを探します。

だから、
Herb Sweets Methodの三つの柱は、最終的には、
ひとつのお菓子を自分で創るための、ひとつの思考になっていきます。

〜「私ならこうする」が生まれたら〜

レシピを見たとき、最初は、

「この通りに作ろう」

と思います。

それが、だんだん、

「ここはこういう理由なのかな」

に変わる。

そして、

「私なら、少しこうしてみたい」

に変わる。

この、

「私ならこうする」

が生まれたとき、
レシピクリエーションは、
かなり自分のものになっています。

もちろん、実際に作ってみたら、
うまくいかないこともあります。

でも、
自分で考えて、
自分で試して、
自分で次を決める。

その循環ができれば、
また前へ進めます。

〜レシピは、知識の集積でもあります〜

ひとつのレシピを作るまでには、
たくさんの経験があります。

香りが強すぎた経験。

弱すぎた経験。

組み合わせが合わなかった経験。

思った以上においしくなった経験。

焼きすぎた経験。

少し変えたらよくなった経験。

そうしたものが、少しずつ蓄積されて、ひとつのレシピになります。

だから、完成したレシピの数字だけを見ると、とてもシンプルに見えても、その裏側には、たくさんの判断があります。

レシピクリエーションを学ぶということは、この裏側にある思考も、
少しずつ自分の中へ蓄積していくことです。

〜いつか、レシピを見なくても考えられるようになる〜

経験が増えてくると、
冷蔵庫にある果物を見て、

「これなら、あのハーブが合いそう」

と思う。
庭のハーブを摘みながら、

「今日はスコーンにしようかな」

と思う。

季節が変わったときに、

「そろそろチョコレートと合わせたいな」

と思う。

そういうことが、
少しずつ自然になります。

そのとき、頭の中では、
香りのバランスも、
フレーバーペアリングも、
レシピクリエーションも働いています。

でも、いちいち名前を意識する必要はありません。

考え方が、自分の中に溶け込んでいるからです。

〜レシピを持つことから、レシピを生み出せることへ〜

たくさんのレシピを持っていることは、とても豊かなことです。

でも、そのレシピを土台にして、
自分で次を考えられるようになると、世界はさらに広がります。

32種類の基本レシピがある。
そこから、
33番目。
34番目。
35番目。
その先は、
数える必要もありません。

季節が変われば、
また新しい組み合わせが生まれます。

自分の好みが変われば、
また新しい一品が生まれます。

食べてもらう人が変われば、
また違う形になります。

だから、
レシピクリエーションには、
終わりがありません。

〜自分のレシピとは、自分の判断が宿った一品〜

Herb Sweets Methodにおける
レシピクリエーション。
その三本目の最後に、
私はこう考えています。

自分のレシピとは、
誰も作ったことのないものだけを指すのではありません。

基本を学び、

香りを感じ、

素材を考え、

自分で選び、

作り、

食べ、

調整したもの。

そこに、
自分の判断が宿っていること。

それが大切です。
基本を大切にしながら、

基本だけで終わらない。

レシピを尊重しながら、
レシピに縛られない。

学んだものを、

自分の暮らしや仕事の中へ持ち帰り、
そこからまた新しい一品を生み出していく。

それが、私たちが考える
レシピクリエーションです。

〜香りを整え、つなぎ、創る〜

香りのバランス。

フレーバーペアリング。

レシピクリエーション。

この三つを通して、

Herb Sweets Methodが目指しているものは、
難しい技術を身につけることだけではありません。

ハーブの香りを自分で感じる。

素材との関係を自分で考える。

そして、
自分でひとつのお菓子を創る。

香りを整え、つなぎ、創る。

その繰り返しの中で、
いつか、

レシピを「作る人」から、
レシピを「生み出せる人」へ。

ハーブスイーツの学びが、
そこまで広がっていけば、
とても豊かなことだと思っています。


日本ハーブスイーツ協会
白水

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