基本レシピを一度作り、
「ここから少し変えてみたい」
と思ったとき、
次に出てくるのが、
どこまで変えていいのだろう
という疑問です。
ハーブを変える。
果物を変える。
砂糖を減らす。
油脂を変える。
粉を変える。
焼き方を変える。
考え始めれば、触れられる場所は
たくさんあります。
けれど、
全部を一度に変えてしまうと、
元のレシピとは別物になりすぎて、
何が良くて何が悪かったのか分かりにくくなります。
だからレシピクリエーションでは、
まず、何を残し、何を変えるのか。
ここを考えます。
〜レシピには「骨格」と「表情」があります〜
ひとつのレシピを見たとき、
私は大きく、骨格になる部分と、
表情を作る部分に分けて考えることがあります。
骨格になるのは、そのお菓子らしさを支えている部分です。
たとえば、
小麦粉。
卵。
油脂。
砂糖。
水分。
膨張剤。
こうした材料の関係です。
ここを大きく動かすと、
食感や膨らみ、
口どけ、
焼き上がりそのものが変わります。
一方で、表情を作る部分には、
ハーブ。
果物。
ナッツ。
チョコレート。
ジャム。
紅茶。
スパイス。
トッピング。
などがあります。
もちろん、
これらも生地へ影響します。
けれど、比較的、
「違う表情へ展開しやすい部分」
でもあります。
最初のアレンジでは、まずこの
表情の部分から触ってみる。
すると、元のレシピの安定感を
残しながら、自分らしい違いを
作りやすくなります。
〜まずは「何を残したいか」を決める〜
アレンジというと、どうしても、
「何を変えよう」
から考えます。
けれど、私はその前に、
何を残したいかを考える方が
分かりやすいと思っています。
たとえば、
このマフィンの、
しっとりした食感が好き。
このクッキーの、
ほろっと崩れる感じを残したい。
このスコーンの、
軽い口当たりを残したい。
このショートブレッドの、
バターのコクは残したい。
そこが決まれば、むやみに全部を
変えなくて済みます。
つまり、好きなところを残して、
その上に新しい表情を重ねる。
これが、最初の
レシピクリエーションでは
とても使いやすい考え方です。
〜変えるなら、目的をひとつ決める〜
なんとなく変えることも、
もちろん楽しいものです。
けれど、
学びながらアレンジするなら、
ひとつだけ目的を決めておくと、
結果が見えやすくなります。
たとえば、
もっと爽やかにしたい。
少し華やかにしたい。
冬らしい深さを出したい。
子どもでも食べやすくしたい。
贈り物らしくしたい。
庭のハーブを使いたい。
季節の果物を入れたい。
こうして目的を決めると、
何を変えるべきかが見えてきます。
爽やかにしたいなら、
柑橘や酸味。
深くしたいなら、
チョコレートやナッツ。
華やかにしたいなら、
ローズやベリー。
目的があると、アレンジは単なる思いつきから、意図のある変更へ変わります。
〜ハーブを変えるときは「量」より「位置」を見る〜
レシピのハーブを別のものへ変えたい。
これは、ハーブスイーツではとても自然なアレンジです。
けれど、
元のハーブが2gだったから、
次のハーブも2g。
という考え方だけでは足りません。
ハーブは、種類によって香りの強さも、方向性も、余韻も違います。
だから、まず見るのは、
元のハーブがそのお菓子の中で、
どんな位置にいたのかです。
主役だったのか。
果物を支えていたのか。
後ろから香りを整えていたのか。
そして、置き換えるハーブにも、
同じ位置を任せたいのか。
それとも、
あえて違う役割にしたいのか。
ここを考えます。
つまり、単純な置換ではなく、
役割ごと置き換える。
この感覚があると、香りのバランスを崩しにくくなります。
〜果物を変えるときは、水分にも目を向ける〜
果物は、アレンジしやすい素材に見えます。
イチゴをリンゴへ。
オレンジをレモンへ。
ベリーを別の果実へ。
けれど、果物は香りや酸味だけではありません。
水分を持っています。
甘さもあります。
場合によっては、
果肉のやわらかさも違います。
だから、果物を大きく変えると、
生地の状態まで変わることがあります。
水分の多い果物なら、
生地が重くなるかもしれません。
酸味が強ければ、
全体の印象が変わります。
甘い果物なら、
砂糖の感じ方も変わります。
つまり、果物のアレンジは、
フレーバーだけでなく、
生地との関係まで見ておく必要があります。
〜チョコレートやナッツは「足しやすい」けれど、足しすぎない〜
チョコレート。
ナッツ。
ドライフルーツ。
こうした素材は、比較的アレンジに使いやすいものです。
少量加えるだけでも、
味や食感に変化が出ます。
けれど、ここで気をつけたいのが、
足した分だけ、ハーブの存在感が変わるということです。
チョコレートを加えれば、
苦味やコク、油脂感が増えます。
ナッツを加えれば、
香ばしさや食感が加わります。
すると、元々ちょうどよかったハーブの香りが、少し後ろへ下がることがあります。
そこでまた、ハーブを増やすのか。
それとも、あえて後ろに置くのか。
ここでも、
香りのバランスが関わってきます。
〜甘さを変えるときは、香りの感じ方まで見る〜
「少し甘さを控えたい」
というアレンジも、よくあります。
でも、砂糖を減らすことは、単に
甘さを減らすだけではありません。
砂糖には、食感や焼き色、水分保持などにも関わる働きがあります。
そして、ハーブの苦味や青さを、
やわらげる役割をすることもあります。
つまり、砂糖を減らすと、
ハーブの香りや苦味が、
前へ出てくることがあります。
反対に、
甘味のある素材を加えた場合は、
ハーブが穏やかに感じられることもあります。
だから、甘さを変えるときも、
味だけでなく、香りがどう変わるか
を見ます。
〜油脂を変えるときは、かなり慎重に〜
バターを植物油へ。
バターを別の油脂へ。
こうしたアレンジもできます。
けれど、油脂は、
お菓子の食感と香りの両方に大きく関わります。
バターなら、
香り。
口どけ。
コク。
生地の広がり方。
焼成後の風味。
さまざまな部分に影響します。
そして、ハーブの香りを抱え込む
働きにも関わります。
だから、油脂を変えるときは、
単純に同量で置き換えるだけではなく、完成したお菓子の性格そのものが変わることを考えます。
最初のうちは、
油脂を大きく変えるより、ハーブや副材料からアレンジを始める方が、
違いをつかみやすいと思います。
〜粉を変えるときは、「別のレシピ」に近づいていく〜
小麦粉を変える。
全粒粉を加える。
米粉にする。
アーモンドパウダーを増やす。
粉の変更は、
レシピクリエーションとしてとても面白いものです。
けれど、ここまで触ると、
元のレシピの骨格そのものが変わってきます。
吸水。
グルテン。
口どけ。
焼き上がり。
香ばしさ。
いろいろな部分が変わります。
つまり、これはもう、軽いアレンジというより、新しいレシピ設計に
近づいていく変更です。
もちろん、
そこへ進んでも構いません。
ただ、どの段階のクリエーションをしているのかを、自分で分かっていることが大切です。
〜「足す」だけではなく、「引く」こともアレンジです〜
レシピクリエーションというと、
新しい素材を加えることを思い浮かべます。
でも、
引くことも立派なアレンジです。
ハーブを少し減らす。
甘さを少し控える。
トッピングを外す。
香りの強い副材料を減らす。
そうすることで、別の素材が見えやすくなることがあります。
たとえば、
果物をより主役にしたいなら、
ハーブを少し後ろへ下げる。
ハーブを主役にしたいなら、
別の香りを減らす。
つまり、
レシピクリエーションは、
材料を増やすことではなく、
全体の関係を整えること
でもあります。
〜変えたあとに「元のレシピへ戻れる」ことも大切です〜
アレンジを続けていると、
どんどん変えたくなります。
でも、時々、
元のレシピへ戻ってみます。
すると、
「やっぱりこのバランスはよくできていたな」
と感じることがあります。
逆に、
「この部分は、自分の方が好きだな」
と思うこともあります。
元へ戻れる基準があるからこそ、
自分の変更を評価できます。
だから、基本レシピは、
アレンジしたあとにも大切です。
変えるための出発点であり、
戻ってこられる基準点でもあります。
〜一度に一つ、記録は短く〜
レシピクリエーションを学びながら進めるなら、
難しい記録は必要ありません。
少しだけ残しておきます。
「ローズを少し減らした」
「オレンジをレモンへ」
「チョコを加えたらハーブが弱く感じた」
「翌日の方がまとまった」
この程度で十分です。
大切なのは、何を変えたのか。
どう感じたのか。この二つです。
それが残っていれば、
次にまた一歩進めます。
〜失敗したら、「全部ダメ」にしない〜
アレンジして、うまくいかなかった。
そんなこともあります。
香りが弱い。
生地が重い。
酸味が強い。
食感が変わりすぎた。
でも、
全部が悪かったとは限りません。
「香りの方向は好きだった」
「果物の組み合わせはよかった」
「食感だけ直したい」
そんなふうに、良かった部分と、
調整したい部分を分けて見ます。
すると、失敗したレシピが、
次の試作の土台になります。
レシピクリエーションでは、
一度で完成させることより、どこを直せばよいか見つけられることの方が大切です。
〜ひとつの基本レシピから、いくつもの方向へ〜
たとえば、ひとつのマフィンレシピがあります。
そこから、
ハーブを変える。
果物を変える。
チョコレートを加える。
ナッツを加える。
季節を変える。
贈る人に合わせる。
少しずつ方向を変えることで、
同じ基本から、
まったく違う一品が生まれます。
これが、レシピクリエーションの
おもしろさです。
完成したレシピを壊すのではなく、
その中にある可能性を見つける。
そう考えると、アレンジは怖いものではなくなります。
〜「残すもの」が分かると、自由になります〜
自由に作るというのは、
全部を変えることではありません。
むしろ、
何を残すかが分かっているから、
自由に変えられます。
この食感は残す。
この香りの位置は残す。
この生地の骨格は残す。
その上で、
果物を変える。
ハーブを変える。
季節を変える。
そうやって、少しずつ自分の一品へ近づけていきます。
〜Herb Sweets Methodの三つの柱が、ここで重なります〜
レシピクリエーションでは、
三つの柱が自然に重なってきます。
ハーブを変えるなら、
香りのバランス。
素材を変えるなら、
フレーバーペアリング。
そして、
それらをひとつのレシピとして形にするのが、
レシピクリエーション。
つまり、
レシピクリエーションだけを単独で考えるのではありません。
前の二つで学んだことを使いながら、全体を組み立てていきます。
〜「どこを変えるか」より、「なぜ変えるか」〜
最初は、何を変えよう。
どこをアレンジしよう。
と考えます。
でも、少し慣れてくると、
問いが変わります。
なぜ、ここを変えるのか。
季節を出したいから。
香りを軽くしたいから。
誰かに食べてもらいたいから。
手元にあるハーブを使いたいから。
自分の好きな方向へ近づけたいから。
理由があると、変更に筋が通ります。
そして、
完成したお菓子を食べたときにも、
その変更がよかったのかどうかを考えやすくなります。
〜基本を守ることと、自由に創ることは両立します〜
基本を守ると、自由がなくなるように感じるかもしれません。
でも、私は逆だと思っています。
基本があるから、何を変えたのかが分かる。
何を変えたのかが分かるから、
次の調整ができる。
その積み重ねで、少しずつ自由になります。
だから、Herb Sweets Methodにおけるレシピクリエーションは、
基本を壊すことではありません。
基本を理解しながら、自分の方向へ広げていくこと。
そこを大切にしています。
〜次は、「自分のレシピ」と呼べるところまで〜
一本目では、
基本レシピを出発点として見ること。
二本目では、
そこから、何を残し、
何を変えるのかを考えてきました。
そして次の三本目では、いよいよ、
どのようにして一つのアレンジを、自分のレシピへ育てていくのか。
というところへ進みます。
少し変える。
作る。
食べる。
また調整する。
その繰り返しの先に、
「これは私の一品だな」
と思えるものが生まれてきます。
レシピを学ぶことから、
レシピを使うことへ。
レシピを使うことから、
自分で創ることへ。
その最後の一歩について、
次はもう少し深く考えてみたいと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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一一一一一一一一一一一
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