お菓子作りを学ぶとき、
最初に必要になるのは、
やはりレシピです。
材料。
分量。
混ぜ方。
温度。
焼成時間。
ひとつひとつを確認しながら作り、
まずは、
「こうすると、このお菓子になる」
という基準を知ります。
これは、とても大切なことです。
基本を知らないまま自由に変えてしまえば、なぜうまくいったのかも、
なぜうまくいかなかったのかも、
分からなくなってしまいます。
だから最初は、レシピ通りに作る。
けれど、
Herb Sweets Methodで考える
『レシピクリエーション』は、
そこをゴールにはしていません。
ひとつの基本レシピを知ったあと、
その中にある仕組みを少しずつ理解し、そこから別の一品へ枝を伸ばしていく。
つまり、基本レシピは完成形であると同時に、次のレシピを生み出すための出発点でもある。
そこから、レシピクリエーションは始まります。
〜まずは、ひとつの完成形を知る〜
自分でレシピを作りたいと思うと、
すぐに、
「何か新しいものを考えなければ」
と思うかもしれません。
けれど、最初からゼロから作る必要はありません。
むしろ、まずは完成されたレシピをきちんと作ることが大切です。
たとえば、
カモミールを使ったマフィン。
レモングラスのスコーン。
ローズを使ったクッキー。
ひとつ作ることで、
そのお菓子の基準ができます。
生地の甘さ。
食感。
焼き上がり。
ハーブの香り。
ほかの素材との関係。
その基準を知っているからこそ、
次に何かを変えたとき、
違いが分かります。
つまり、基本レシピは、
ただ再現するためのものではなく、
比較するための基準にもなります。
〜レシピを「材料の一覧」としてだけ見ない〜
レシピには、
材料と分量が書いてあります。
小麦粉100g。
砂糖50g。
バター60g。
卵。
ハーブ。
果物。
そうすると、どうしても、
ひとつひとつを数字として見てしまいます。
けれど、レシピクリエーションへ進むときは、その数字の向こう側を
少し見てみます。
小麦粉は、
生地の骨格を作っています。
卵は、
水分やコク、つながりを作っています。
砂糖は、甘味だけでなく、
食感や焼き色にも関わります。
油脂は、口どけやコク、そして香りの感じ方にも関わります。
果物には、香りだけでなく、
酸味や水分があります。
ハーブには、香りだけではなく、
種類によって苦味や青さもあります。
つまり、レシピの中の材料には、
それぞれ役割があります。
その役割を見ることが、自分で
レシピを考えるための第一歩です。
〜最初に変えるなら、「ひとつだけ」〜
基本レシピから何かを作ってみたい。
そう思ったとき、私は、一度に全部変えない方がいいと思っています。
ハーブを変える。
果物も変える。
砂糖も減らす。
油脂も変える。
焼成温度まで変える。
これでは、
完成したものが元と違っていても、
何が影響したのか分かりません。
だから最初は、
ひとつだけ変えてみる。
たとえば、
カモミールをレモンバーベナへ。
オレンジをレモンへ。
イチゴをラズベリーへ。
チョコチップをナッツへ。
まずは、一つだけです。
作る。
食べる。
元のレシピと比べる。
すると、
変えた素材が、
お菓子全体にどんな変化を与えたのかが見えやすくなります。
〜ハーブを変えるときは、香りの強さをそのまま置き換えない〜
レシピに、
あるハーブが3g使われている。
だから、
別のハーブに変えるときも3g。
一見すると、これが一番
分かりやすい置き換え方です。
けれど、ハーブは種類によって、
香りの強さが違います。
同じ重量でも、
感じ方は同じではありません。
さらに、
青さ。
苦味。
華やかさ。
爽やかさ。
余韻の長さ。
それぞれ違います。だから、
ハーブを置き換えるときには、
単純に重量だけを見るのではなく、
元のハーブがお菓子の中で、
どんな位置にいたのかを考えます。
主役だったのか。
ほかの素材を支えていたのか。
ほんのり香る程度だったのか。
ここで、
Herb Sweets Methodの最初の柱、
『香りのバランス』
が生きてきます。
〜素材を変えるときは、「何をしていた素材か」を考える〜
たとえば、あるレシピにオレンジが入っていたとします。
別の果物へ変えたい。
そのとき、まず考えたいのは、
オレンジが何をしていたのかです。
柑橘の香り。
酸味。
甘味。
果汁による水分。
果皮を使っているなら、
少しの苦味。
いくつもの役割があります。
その中で、このレシピでは何が重要だったのか。
もし酸味が大切だったなら、
別の酸味のある果物を考える。
香りの明るさが大切だったなら、
別の柑橘を考える。
水分量が変わるなら、
生地への影響も考える。
ここで、Herb Sweets Methodの二つ目の柱、
『フレーバーペアリング』
がつながります。
〜「代用」と「アレンジ」は、少し違います〜
似ているようで、
少し違うものがあります。
代用とアレンジです。
代用は、元の役割をできるだけ保ちながら、別の素材へ置き換えること。
アレンジは、元のレシピを土台にしながら、あえて違う方向へ広げること。
たとえば、オレンジがないからレモンに変える。
これは代用に近い考え方です。
一方で、
オレンジをチョコレートへ変えて、
まったく違う味わいへ持っていく。
これは、よりアレンジに近くなります。どちらも、
レシピクリエーションです。
最初は代用から。
慣れてきたらアレンジへ。
そうやって、
少しずつ元のレシピから距離を広げていくことができます。
〜「なぜ、この材料なのだろう」と考えてみる〜
レシピを作るとき、
材料を見ながら、
ひとつだけ問いを持ってみます。
なぜ、この材料なのだろう。
なぜ、
このハーブなのか。
なぜ、
この果物なのか。
なぜ、
このくらいの砂糖なのか。
なぜ、
この油脂なのか。
なぜ、
この温度で焼くのか。
全部の答えがすぐに分からなくても構いません。
作って、食べるうちに、
少しずつ見えてきます。
そして、
この「なぜ」が分かってくると、
変えていい部分と、簡単には変えない方がいい部分が見えてきます。
〜変えやすいところと、慎重に変えたいところがあります〜
レシピの中には、
比較的変えやすい部分があります。
トッピング。
ジャム。
果物。
ナッツ。
一部のハーブ。
こうしたものは、比較的アレンジ
しやすいことがあります。
一方で、生地の骨格そのものに
関わる材料は、
少し慎重に考えます。
小麦粉。
油脂。
卵。
砂糖。
水分。
これらを大きく変えると、
香りだけではなく、
膨らみ。
食感。
焼き上がり。
保存性。
さまざまなものが変わります。
もちろん、そこまで変えるレシピクリエーションもあります。
けれど、最初からすべてに手を入れる必要はありません。
まずは、壊れにくいところから遊んでみる。それで十分です。
〜レシピを「木」のように考えてみる〜
ひとつの基本レシピを、
一本の木だと考えてみます。
根っこにあるのは、
基本の配合と製法です。
そこから、枝が伸びます。
ハーブを変える枝。
果物を変える枝。
チョコレートを加える枝。
紅茶を合わせる枝。
季節を変える枝。
さらに、
その枝からまた別の枝が伸びます。
たとえば、
基本のカモミールマフィン。
そこから、
カモミールとオレンジ。
そこから、
カモミールとレモン。
あるいは、
カモミールとリンゴ。
カモミールとハチミツ。
同じ基本レシピから、
いくつもの一品が生まれます。
レシピクリエーションは、
毎回ゼロから木を植えることではありません。
一本の木から、枝を育てていくこと。
そう考えると、
ずっと身近になります。
〜ひとつの基本レシピを深く知ることは、とても大きな財産です〜
たくさんのレシピを知ることも、
もちろん楽しいものです。
けれど、ひとつの基本レシピを、
何度も作ることにも大きな価値があります。
一度目は、レシピ通りに。
二度目は、ハーブを変えて。
三度目は、果物を変えて。
四度目は、組み合わせを変えて。
何度も触れているうちに、
「この生地は、このくらいなら受け止められる」
という感覚が生まれます。
ここまで来ると、そのレシピは、
ただ紙に書かれた作り方ではありません。自分で使えるひとつの型になります。
〜「型」があるから、自由に遊べます〜
自由という言葉は、何も決まっていない状態のように聞こえるかもしれません。
けれど、お菓子作りでは、
型があるからこそ自由になれることがあります。
基本のクッキー。
基本のマフィン。
基本のスコーン。
基本のショートブレッド。
それぞれの特徴を知っていれば、
「このハーブなら、どの生地が合いそうか」
と考えられます。
同じ組み合わせでも、
マフィンにするのか。
スコーンにするのか。
クッキーにするのか。
それだけで、まったく違う
ハーブスイーツになります。
基本を知ることは、
選択肢を狭めることではありません。
選択肢を増やすことなのです。
〜32種類の基本から、その先へ〜
私たちが講座の中で、
さまざまな基本レシピを用意しているのも、完成した32種類を覚えてほしいからだけではありません。
それぞれに、違う生地があります。
違うハーブがあります。
違う組み合わせがあります。
違う考え方があります。
いくつもの基本に触れることで、
少しずつ、
「この作り方なら、こちらにも使えそう」
「このハーブなら、あの生地にも合いそう」
というつながりが見えてきます。
そして、32種類のレシピが、
32個の別々の完成品ではなく、
たくさんのレシピを生み出すための32個の入口に変わっていきます。
〜33番目を、自分で作ってみる〜
32種類を作ったあとに、
もうひとつ作る。33番目。
それは、大きな発明でなくていいと思います。
ハーブをひとつ変えただけでもいい。
季節の果物を使っただけでもいい。
自分の好きなチョコレートを合わせただけでもいい。
大切なのは、
誰かに与えられたレシピではなく、
自分でひとつ選んだということです。
その小さな選択が、
レシピクリエーションの始まりです。
〜最初は、「少し違う」で十分です〜
自分のレシピというと、
世界にひとつしかないものを作らなければいけないように感じます。
でも、そんな必要はありません。
まずは、基本から少し違う。
それでいいのです。
ひとつ変える。
少し調整する。
食べてみる。
気に入れば残す。
違えば戻す。
また試す。
この繰り返しの中で、
少しずつ、
元のレシピとは違うものになっていきます。
そして気づいたときには、
「これは私の好きな組み合わせだな」
という一品が生まれています。
〜Herb Sweets Methodにおける、『レシピクリエーション』〜
Herb Sweets Methodには、
三つの柱があります。
『香りのバランス』
『フレーバーペアリング』
『レシピクリエーション』
です。
香りのバランスで、ハーブをどう
感じさせるかを考える。
フレーバーペアリングで、
何と組み合わせるかを考える。
そして、その二つを使いながら、
ひとつのお菓子として形にしていく。
それが、
レシピクリエーションです。
だから、
三つ目だけが突然始まるわけではありません。
前の二つで身につけたものが、
ここで一つにつながります。
〜レシピ通りに作れることは、自由になるための始まりです〜
レシピ通りに作ることと、
自由に作ること。
この二つは、
反対にあるように見えます。
けれど、私はつながっていると
思っています。
まず、レシピ通りに作れる。
そこから、
なぜこうするのかが少し分かる。
分かるから、
ひとつ変えられる。
ひとつ変えられるから、
次も考えられる。
そうして、
少しずつ自由になります。
だから、基本を学ぶ時間は、
決して自由の反対ではありません。
自由に創るための準備です。
〜完成形を見ることから、可能性を見ることへ〜
レシピを見たとき、最初は、
「これを作るためのもの」
として見ます。
それでいいのです。
でも、少し慣れてきたら、
もうひとつの見方をしてみます。
「ここから、何ができるだろう」
このハーブを変えたら。
この果物を変えたら。
季節を変えたら。
食べる人を変えたら。
別の生地にしたら。
すると、
一枚のレシピの向こう側に、
たくさんの可能性が見えてきます。
基本レシピは、守るためだけの
ものではありません。
学び、
理解し、
やがて、
自分の手で広げていくためのもの。
それが、
Herb Sweets Methodで考える、
『レシピクリエーション』の
最初の一歩です。
二本目では、
ここからさらに進んで、
基本レシピのどこを残し、
どこを変えるのか。
アレンジをするときに、何を基準に考えればよいのかについて、
もう少し具体的に見ていきたいと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
■あわせて読みたい
ハーブスイーツメソッドについて丁寧にお話しています
▼
https://www.herbsweets-japan.com/blog/190249/
一一一一一一一一一一一
あなたの普段の日常に、穏やかなハーブの香りと学びを。 ご自宅で気軽に楽しむ初級講座から、資格取得を目指す講座まで。講座の内容や、それぞれの学び方は、『ハーブスイーツマイスター講座のご案内』にてご覧いただけます。 ▼ https://www.herbsweets-japan.com/
他の記事もお読みになりたい方へ。私たち日本ハーブスイーツ協会の活動や、私たちがハーブスイーツを好きになったきっかけなどをまとめています。 https://www.herbsweets-japan.com/blog/cate/15677/