『フレーバーペアリング① 「相性がいい」とは、いったい何なのでしょうか』

2026年09月08日 01:48
日本ハーブスイーツ協会

ハーブスイーツを作っていると、
こんな言葉をよく使います。

「カモミールとオレンジは相性がいい」

「ローズとベリーはよく合う」

「ローズマリーとチョコレートも面白い」

確かに、実際に食べてみると、

「うん、合うな」

と感じる組み合わせがあります。

けれど、ここでもう一歩だけ踏み込んでみます。

そもそも、「相性がいい」とは何なのでしょうか。

香りが似ているからでしょうか。

味が似ているからでしょうか。

反対の特徴を持っているからでしょうか。

あるいは、
片方がもう片方を支えているのでしょうか。

フレーバーペアリングを考えるとき、私は、

「このハーブには、この素材が合います」

という組み合わせを覚えること以上に、なぜ、その二つを一緒にすると心地よく感じるのかを見ることが大切だと考えています。

〜フレーバーペアリングは、組み合わせ表ではありません〜

ハーブと素材の組み合わせを一覧にすると、とても便利です。

カモミールには、

オレンジ。

リンゴ。

ハチミツ。

ローズには、

ベリー。

チョコレート。

紅茶。

そんなふうに、

相性のよい素材を知っておけば、
最初の一歩はずいぶん楽になります。

もちろん、それ自体に意味があります。
けれど、

一覧表だけを頼りにしていると、
そこに載っていない素材と出会ったときに、また答えを探さなければなりません。

一方で、

「なぜこの組み合わせが合うのか」

が少し分かっていると、
新しい素材に出会ったときにも、
自分で考えることができます。

だからHerb Sweets Methodでは、

フレーバーペアリングを、

正しい組み合わせを覚えるものではなく、組み合わせを考えるための視点として捉えています。

〜「似ている」から、自然につながる組み合わせ〜

まず分かりやすいのが、
香りの方向が近いもの同士です。

たとえば、
柑橘を思わせる爽やかなハーブと、

レモンやオレンジ。

花を思わせる華やかなハーブと、

イチゴやラズベリーのような果実。

どこか共通する方向があるもの同士は、一緒になったときに自然につながりやすくなります。

片方の香りから、

もう片方の香りへ。

境目が強く出ず、ひとつのまとまった印象になります。

たとえばレモンバーベナ。

それ自体に、明るく柑橘を思わせる香りがあります。

そこへレモンを合わせれば、
まったく別の方向へ行くというより、もともと持っていた爽やかさを、さらに広げるような組み合わせになります。

これは、フレーバーペアリングのひとつの考え方です。

共通する香りを見つけ、その方向を伸ばす。

〜「違う」からこそ、引き立つ組み合わせもあります〜

けれど、相性がいいものは、
似ているもの同士だけではありません。

むしろ、一見すると違うものを合わせることで、お互いの特徴がはっきり見えることもあります。

たとえば、

爽やかなハーブと、

コクのあるチョコレート。

少し青さのあるハーブと、

バターの豊かな香り。

華やかな花の香りと、

少し苦味のある素材。

方向が違うからこそ、
片方だけでは出なかった奥行きが生まれます。

甘いだけではなく、
少し爽やか。

濃厚だけれど、
あと口は軽い。

華やかなのに、
どこか落ち着いている。

こうした複数の表情が生まれるのも、フレーバーペアリングのおもしろさです。

つまり、似ているから合う場合もあれば、違うから合う場合もある。
ここが、単なる「相性表」では説明しきれないところです。

〜片方が、もう片方の弱いところを補うこともあります〜

組み合わせには、
お互いを補う関係もあります。

たとえば、
少し青さのあるハーブ。

単独では、
その青さが前へ出すぎることがあります。

そこへ、甘味。

油脂。

香ばしさ。

果物の酸味。

そうしたものを加えると、
青さの角が少しやわらぐことがあります。

反対に、
濃厚なお菓子に爽やかなハーブを加えることで、あと口が軽く感じられることもあります。

つまり素材は、ハーブの個性をただ足すだけではなく、

整える役割
を持つことがあります。

この考え方が見えてくると、

「この素材と合うかどうか」

という二択ではなく、

「この素材を加えると、ハーブのどんな部分が変わるだろう」

と考えられるようになります。

〜主役と脇役は、いつも同じではありません〜

たとえば、
カモミールとオレンジを合わせたとします。

カモミールをしっかり香らせて、
オレンジを支える程度に使うこともできます。

反対に、オレンジを主役にして、
カモミールを後ろへ置くこともできます。

同じ二つの素材です。

でも、どちらを前へ出すかによって、完成するお菓子の印象は変わります。

ローズとチョコレートでも同じです。

ローズを華やかに見せるのか。

チョコレートの奥に、
ほんのりローズを感じさせるのか。

つまり、フレーバーペアリングは、

「AとBを組み合わせる」

だけではありません。
AとBを、どんな関係で一緒に置くのかまで含めて考えるものです。

〜香りだけでなく、味も関係しています〜

ハーブと素材の相性を考えるとき、
香りだけを見ていても、
すべては分かりません。

お菓子には、
甘味があります。

酸味があります。

苦味があります。

場合によっては、

少し渋味もあります。

たとえば、

華やかなハーブに、
酸味のあるベリーを合わせる。

すると、甘さだけでは出なかった
軽さが加わります。

濃厚なチョコレートに、
爽やかなハーブを合わせる。

すると、コクの中に抜けが生まれることがあります。

つまり、香りと香りだけでなく、
香りと味の関係も見ています。

〜食感も、組み合わせの一部です〜

さらに、
忘れたくないのが食感です。

同じ香りの組み合わせでも、
サクサクとしたクッキーにするのか。

しっとりしたマフィンにするのか。

ほろほろしたショートブレッドにするのか。

それだけで、
食べたときの印象は変わります。

たとえば、
爽やかなハーブなら、
軽い食感のお菓子にすると、
その印象がより明るく感じられることがあります。

反対に、
濃厚な生地と合わせることで、
爽やかな香りが対照的に引き立つこともあります。

だから、
フレーバーペアリングというと、
素材名だけを並べたくなりますが、
実際には、香り、味、食感まで含めた関係として見る方が、
ずっと広く考えることができます。

〜「よく合う」は、目的によっても変わります〜

同じ組み合わせでも、
何を作りたいかによって、
よいバランスは変わります。

夏のおやつなら、
爽やかさを前へ。

冬の焼き菓子なら、
少しコクを深く。

贈り物なら、
華やかさを少し足す。

日常のおやつなら、
毎日でも食べやすい穏やかさに。

つまり、
「相性がいい」というのは、
素材そのものだけで決まるものではありません。

どんな一品にしたいのか。
そこまで含めて考える必要があります。

〜一つの組み合わせを、少し分解してみる〜

たとえば、カモミールとオレンジがおいしかったとします。

そこで、

「カモミールとオレンジは合う」

と覚えるだけでも構いません。

でも、もう少しだけ分解してみます。

カモミールのやわらかな花のような香り。
オレンジの明るい香り。

少しの酸味。

焼いたときの甘さ。

そこに、
どんな関係があったのだろう。

もし、

「明るい柑橘の香りが、カモミールを軽やかに見せていた」

と感じたなら、
次はレモンではどうだろう。

柚子なら。

グレープフルーツなら。

と考えることができます。

ひとつの組み合わせから、
次の組み合わせへ。

こうして、
経験が枝分かれしていきます。

〜「素材名」ではなく、「特徴」を見る〜

フレーバーペアリングを自由に使えるようになるために、
少しずつ意識したいのが、
素材の名前ではなく、その素材が
持つ特徴を見ることです。

オレンジ。
ではなく、

明るい香り。

甘酸っぱさ。

少しの苦味。

チョコレート。
ではなく、

コク。

苦味。

ロースト香。

油脂感。

ベリー。
ではなく、

華やかさ。

酸味。

果実感。

そうして見ると、別の素材でも、
似た役割を持つものが見つかります。

すると、レシピに書いてある素材がなかったときにも、

「何か近い役割のものはないだろうか」

と考えられるようになります。

これは、やがてレシピクリエーションにもつながっていきます。

〜Herb Sweets Methodにおける、フレーバーペアリング〜

Herb Sweets Methodには、

三つの柱があります。

『香りのバランス』

『フレーバーペアリング』

『レシピクリエーション』

です。

香りのバランスでは、
ハーブそのものが、
お菓子の中でどんな位置にいるのかを見ました。

そして次に、その香りを、
何と出会わせるのか。

ここが、
フレーバーペアリングです。

似たものとつなぐ。

違うものをぶつける。

弱いところを補う。

どちらかを支える。

そうした関係を考えながら、
ひとつの味を組み立てていきます。

〜「合うかどうか」から、「どう合っているのか」へ〜

最初は、

「これとこれは合う」

というところから始めて構いません。
けれど、何度か作っているうちに、
少しだけ問いを変えてみます。

どうして合っているのだろう。

香りが似ているから。

酸味があるから。

甘さを軽くしているから。

コクを支えているから。

違う方向の香りが入って、

奥行きが出ているから。

理由は、ひとつとは限りません。

それでも、
少しずつ考えるようになると、
組み合わせを覚えるだけだったところから、組み合わせを自分で見つけるところへ進んでいきます。

それが、
Herb Sweets Methodで考える、

『フレーバーペアリング』の入り口です。

次の二本目では、さらに具体的に、
甘味、酸味、苦味、油脂、香ばしさなどが、ハーブとの組み合わせの中でどんな役割を持つのか
について見ていきたいと思います。


日本ハーブスイーツ協会
白水


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