『香りのバランス③ 自分なりの「ちょうどいい香り」は、どう見つけるのでしょうか』

2026年09月08日 00:07
日本ハーブスイーツ協会

ハーブスイーツを作っていると、
少しずつ、

「このくらいの香りが好き」

という感覚が生まれてきます。

最初のうちは、レシピに書いてある分量をそのまま使います。

それで十分です。
むしろ、最初から自己流に変えるよりも、まずはひとつの基準を知ることが大切です。

けれど、

何度か作り、

食べ、

違うハーブにも触れていくうちに、

少しずつ自分の中に感覚が育ってきます。

「私はもう少し穏やかな方が好きだな」

「この組み合わせなら、もう少し香ってもよさそう」

「このハーブは、前に出すより後ろにいた方が心地いい」

そんな小さな判断です。

Herb Sweets Methodにおける

『香りのバランス』は、
誰かが決めた正解の香りへ近づくことだけを意味しているわけではありません。
基礎を知ったうえで、

作り、

食べ、

感じながら、

自分なりの「ちょうどいい」を見つけていくこと。

そこまで含めて、
香りのバランスだと考えています。

〜最初から「正解」を当てなくてもいい〜

ハーブを使うとき、

「失敗したくない」

と思うのは自然なことです。

香りが強すぎたらどうしよう。

弱すぎたら意味がないのでは。

苦くなったら。

青臭くなったら。

そう考えると、正しい分量をひとつ知りたくなります。

もちろん、レシピには基準となる
分量があります。
まずはそこから始めればいいのです。

けれど、その数字が、
すべての人にとって永遠に同じ「正解」になるわけではありません。
ハーブそのものにも個体差があります。

収穫された時期。

乾燥状態。

保存期間。

細かさ。

フレッシュかドライか。

そうした違いでも香りは変わります。

さらに、食べる人の感覚も違います。
だから、
レシピは正解そのものというより、
感覚を育てるための基準点として
使うと、ずっと自由になります。

〜まずは、基準の味を知る〜

自分なりの香りを探すからといって、最初からどんどん分量を変える必要はありません。

まずは、
一度きちんと作ってみます。
そして、

ゆっくり食べます。

香りは強いだろうか。

穏やかだろうか。

最初に感じるだろうか。

あとから広がるだろうか。

ほかの素材と一緒になっているだろうか。

食べ終わったあと、何が残るだろうか。

ここで大切なのは、
難しい言葉で分析することではありません。

「好き」

「もう少し欲しい」

「ちょっと強い」

「このくらいがちょうどいい」

それくらいでも十分です。

自分の感覚を、一度きちんと受け取る。そこから始めます。

〜一度に大きく変えない〜

香りを調整するとき、
とても大切なのが、
少しずつ変えることです。

たとえば、

「香りが弱かったから、次は倍にしよう」

と大きく変えてしまうと、
何がちょうどよかったのか分かりにくくなります。

少しだけ増やす。

少しだけ減らす。

また作る。

また食べる。

すると、

前回との違いが見えやすくなります。
これはハーブだけに限りません。

砂糖。

油脂。

果物。

チョコレート。

焼成時間。

いろいろなものが香りに影響します。

だからこそ、
できるだけ一度に多くを変えず、
ひとつずつ試してみる。

地味な作業ですが、
こういう小さな積み重ねが、
感覚を確かなものにしていきます。

〜「おいしかった」だけで終わらせない〜

もちろん、
お菓子はおいしく食べるものです。
毎回細かく分析しながら食べなければいけないわけではありません。

けれど、
学ぶために作るときだけは、
ほんの少し意識してみます。

「おいしかった」

のあとに、ひとつだけ問いを足してみるのです。

何がおいしかったのだろう。

ハーブの香りだろうか。

バターとの重なりだろうか。

果物の酸味だろうか。

食べたあとに残る香りだろうか。

あるいは、

ハーブが強く主張しなかったからこそ、全体がまとまっていたのかもしれません。

逆に、

「少し違うな」

と思ったときにも、
何が違ったのかを考えます。

香りが強い。

苦味を感じる。

ほかの素材が分からなくなる。

余韻が長すぎる。

青さが残る。

こうした感想は、

次に作るときの大切な手がかりになります。

〜メモは、未来の自分へのレシピになります〜

もし少し丁寧に学びたいなら、
簡単なメモを残しておくのもおすすめです。
難しい記録でなくて構いません。

たとえば、

「カモミール、今回は少し強め」

「オレンジと一緒だとちょうどいい」

「焼きたてより翌日の方が香りが落ち着いた」

「ローズはもう少し少なくても好きかも」

それだけです。

数字と一緒に、
自分の感想を一言残しておく。

すると、数か月後、
別のお菓子を作るときに、
その経験が使えることがあります。

「あのとき、このくらいで強かったな」

「この素材と合わせるなら、少し控えよう」

そんなふうに、過去の経験が次の
判断へつながっていきます。

レシピ帳が、
ただ作り方を書いたものではなく、
自分の感覚を蓄積した記録になっていきます。

〜翌日に食べると、また違うことがあります〜

ハーブスイーツは、
焼き上がった瞬間だけで判断しない方がいいこともあります。

焼きたて。

しっかり冷めたあと。

翌日。

それぞれで、

香りの印象が変わる場合があります。

焼きたては、
バターや小麦粉の焼けた香りが強く、ハーブが少し隠れていることがあります。

時間が経つと、全体の香りがなじみ、ハーブが分かりやすくなることもあります。

反対に、時間とともに香りが穏やかになることもあります。

だから、一度食べただけで、

「弱かった」

「強かった」

と決めなくてもいいのです。

少し時間を置いて、
もう一度食べてみる。

それだけで、違う印象が見えてくることがあります。

〜温度でも、香りの感じ方は変わります〜

まだ温かい状態。

室温。

冷たい状態。

食べる温度によっても、

香りの立ち方は変わります。

温かい方が、
香りが立ちやすいことがあります。

一方で、
冷めて全体が落ち着いたときに、
素材同士のまとまりを感じやすくなることもあります。

だから、
どの状態で食べるお菓子なのか。

そこも、香りのバランスを考える 材料になります。

家庭で焼いて、
まだ少し温かいうちに食べるお菓子。

翌日に贈る焼き菓子。

教室でその場で試食するもの。

販売して数日後に食べてもらうもの。

同じレシピでも、

「どの瞬間を完成と見るのか」

によって、
考え方は少し変わります。

〜自分だけでなく、誰かに食べてもらう〜

自分の感覚を育てるためには、
自分で食べることが何より大切です。

けれど、ときには誰かに食べてもらうことも、
とても良い学びになります。

「どうだった?」

と聞いたとき、
自分では穏やかだと思っていた香りを、相手は強く感じるかもしれません。

逆に、
自分では少し強いと思ったものを、

「このくらいが好き」

と言う人もいます。

そこで、どちらが正しいのかを決める必要はありません。

香りには、感じ方の幅がある。
そのことを知るだけでも大切です。

特に、教室やお店など、
自分以外の人に食べてもらうハーブスイーツを作るなら、この幅を見ることは重要になります。

〜「自分が好き」と「人に届ける」は、少し違います〜

家庭で自分が楽しむなら、
自分の好きな香りにすればいいと思います。

ローズが好きなら、
少し華やかに。

ミントが好きなら、
爽やかに。

それもハーブスイーツの楽しみです。

けれど、多くの人に食べてもらう場合は、少し違う視点も必要になります。

ハーブに慣れている人だけが食べるわけではありません。
初めてハーブスイーツを食べる人もいます。

香りに敏感な人もいます。

そこで、
自分の好みだけではなく、
誰に届けるお菓子なのかを考えます。

少し穏やかにする。

分かりやすい素材と合わせる。

香りを後ろへ置く。

そうした調整も、

香りのバランスのひとつです。

〜「ちょうどいい」は、ひとつではありません〜

ここまで考えると、
自分なりの「ちょうどいい香り」といっても、ひとつではないことが分かります。

自分で食べるときのちょうどいい。

家族と食べるときのちょうどいい。

贈り物にするときのちょうどいい。

教室で伝えるときのちょうどいい。

商品として作るときのちょうどいい。

季節によっても変わります。

春の軽やかな香り。

夏の爽やかな香り。

秋の少し深い香り。

冬の温かみのある香り。

同じ人が作っても、
そのときどきで、
心地よい場所は変わります。

だから、

「ちょうどいい」を固定しなくてもいいのです。

そのお菓子、その人、その場面にとってのちょうどいい。
それを探します。

〜香りの感覚は、作った数だけ育っていきます〜

香りのバランスを身につけるために、
特別な才能が必要なわけではありません。
たくさん香りを知っている人だけができることでもありません。

ひとつ作る。

食べる。

感じる。

少し変える。

また作る。

その繰り返しです。

最初は、

「強いか、弱いか」

くらいしか分からなくても、

だんだん、

「最初は弱いけれど、あとから残るな」

「この果物と一緒だと香りが明るくなる」

「バターが多いと少し穏やかになる」

と、見えるものが増えてきます。

経験が、少しずつ言葉になり、
やがて感覚になります。

〜感覚と理屈が、少しずつつながっていく〜

一本目では、
香りには前・中・後ろのような位置があるという話をしました。

二本目では、
油脂や砂糖、水分、焼成など、
お菓子の構造によって香りが変わることを見てきました。

そして三本目では、
その知識を、
自分の感覚につなげていきます。

食べて、

「少し強い」

と感じた。

そこで、

ただハーブを減らすのではなく、
なぜ強く感じたのかを考える。

油脂との関係なのか。

ほかの素材が少ないからなのか。

焼成の影響なのか。

逆に、
香りが弱いと感じたときにも、

何が隠しているのかを考える。

こうして、感覚と理屈が少しずつつながっていきます。

その状態になると、
初めて作るハーブスイーツでも、
以前の経験を使って予測できるようになります。

〜香りのバランスは、「調整できる力」へ〜

Herb Sweets Methodにおける

『香りのバランス』は、

正しい分量を暗記することではありません。

香りを強く出す技術でもありません。

まず感じる。

位置を見る。

お菓子全体を見る。

理由を考える。

少し調整する。

そしてまた食べる。

その繰り返しの中で、

自分で香りを整えられるようになること。
そこを目指しています。

レシピを見て、

「この通りに入れれば大丈夫」

というところから、

「このお菓子なら、このくらいがよさそう」

と考えられるところへ。

さらに、

「今日はこういう人に食べてもらうから、少し穏やかにしよう」

と選べるところへ。

香りを感じることが、少しずつ、
香りを扱うことへ変わっていきます。

「このくらいが好き」が、ひとつの基準になります

最終的には、自分の舌と鼻で、

「うん、このくらいが好き」

と思えること。

私は、それを大切にしています。

もちろん、技術も知識も必要です。

けれど、最後に食べるのは人です。

そして、
おいしいと感じるのも人です。

だから、数字だけではなく、
自分の感覚も育てていく。

理屈だけではなく、
食べたときの心地よさを見る。
その両方があって、香りのバランスは少しずつ自分のものになっていきます。

強い香りを作るのでもなく、
弱い香りを作るのでもなく、

その一品にとって、
いちばん心地よい場所へ香りを置く。

それが、

私たちが考える「香りのバランス」です。

そしてこの感覚が育ってくると、
次に自然と考えたくなることがあります。

この香りを、何と組み合わせよう。

そこから、

Herb Sweets Methodのもうひとつの柱、

「フレーバーペアリング」の世界へ、

少しずつつながっていきます。



日本ハーブスイーツ協会
 白水


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