『香りのバランス① ハーブの香りは「強い・弱い」だけでは見えてきません』

2026年09月07日 10:37
日本ハーブスイーツ協会

ハーブスイーツを作るとき、最初に意識しやすいのは、

「このハーブは、どのくらい入れればいいのだろう」

ということだと思います。
香りが弱ければ、せっかくハーブを使った意味が感じられない。
けれど、入れすぎれば香りが強くなりすぎて、お菓子として食べにくくなる。

だから最初はどうしても、

「多いか、少ないか」

「強いか、弱いか」

というところから考え始めます。

もちろん、それも大切です。
けれど、ハーブスイーツを作り続けていると、香りにはもう少し違った見方があることに気づきます。

同じくらい香りを感じるお菓子でも、

食べた瞬間に香るもの。

噛んでいる途中から広がるもの。

飲み込んだあとに残るもの。

ほかの素材と一緒になって初めて感じるもの。

いろいろあります。

つまり、
香りのバランスとは、単純に香りの強弱を調整することだけではありません。

その香りが、
お菓子のどこにいて、いつ感じられ、何と一緒に存在しているのか。
そこまで含めて考えることが大切だと思っています。

〜まずは「香りがあるか」ではなく、「どんなふうに香るか」〜

焼き上がったハーブスイーツを食べて、

「ちゃんと香る」

と感じたとします。
でも、そこで終わらずに、もう少しだけ観察してみます。

ひと口目からハーブが前へ出てくるのか。

バターや焼き上がった生地の香りのあとから感じるのか。

果物と一緒になって広がるのか。

最後に余韻として残るのか。

ここを見るようになると、

同じ「香る」という言葉でも、ずいぶん違いがあることが分かってきます。

たとえばローズ。

食べた瞬間から華やかに香れば、ローズそのものが主役になります。

一方で、ベリーの香りの奥にほんの少しローズを置けば、

「ローズのお菓子」

というより、

「何となく華やかな果実のお菓子」

という印象になることもあります。

どちらも間違いではありません。
作りたいお菓子によって、
香りを置く場所が違うだけです。

〜香りには「前」「中」「後ろ」があります〜

これは厳密な分類という意味ではありません。
ハーブスイーツを考えるときの、ひとつの見方です。
私は香りを考えるとき、

前にいる香り

中にいる香り

後ろにいる香り

というふうに捉えることがあります。

前にいる香りは、

ひと口食べたときに、

「このハーブだ」

とすぐに分かる香りです。
お菓子の印象を大きく決めます。

中にいる香りは、
ほかの素材と混ざりながら感じる香りです。

ハーブだけが突出せず、

果物やバター、チョコレートなどと一緒になって、ひとつの味わいを作ります。

後ろにいる香りは、
はっきりとは主張しないけれど、
なくすと何か物足りなくなる香りです。

食べ終わったあとにふわりと残ったり、全体の印象を静かに支えたりします。

この三つを意識すると、

「もっと香らせよう」

という一方向だけではなく、

「このハーブは、少し後ろにいた方がいいかもしれない」

という選択肢が生まれます。

〜主役にしないからこそ、美しく感じる香りもあります〜

ハーブを使うと、どうしても

「ハーブを感じさせなければ」

と思いがちです。

けれど、お菓子の中では、
ハーブが必ずしも主役である必要はありません。

たとえばローズマリー。

爽やかで、少し青さがあり、輪郭のある香りです。

この香りをしっかり前へ出せば、
存在感のあるローズマリーのお菓子になります。

けれど、チョコレートやナッツの中へ少しだけ入れると、

ローズマリーそのものよりも、
全体の味を引き締めるように働くことがあります。

レモンバーベナのような明るい香りも、
単独で目立たせるだけではなく、
柑橘や果物の香りを少し持ち上げるように使うことができます。

ハーブが見えすぎない。
でも、いなくなると寂しい。

そんな位置もあります。
私は、こういう使い方もハーブスイーツのおもしろさだと思っています。

〜「香りが弱い」は、本当に失敗でしょうか〜

ハーブスイーツを食べて、

「思ったより香りが弱いな」

と感じることがあります。

そのとき、すぐにハーブを増やしたくなります。でも一度、

「弱い」の中身を見てみます。

本当にハーブそのものが少ないのか。それとも、

バターの香りが強いのか。

チョコレートの印象が強いのか。

甘さが前へ出ているのか。

焼成で香りが飛んだのか。

ほかの素材と一体化して、単独では分かりにくくなっただけなのか。

ここを見ずにハーブだけ増やすと、
全体としては強くなりすぎることがあります。

大切なのは、
ハーブの量だけを見るのではなく、
お菓子全体の中で、なぜそのように感じているのかを考えることです。

〜「強い香り」も、使い方によっては心地よくなります〜

反対に、

香りが強いことが悪いわけでもありません。

ローズのように華やかな香りを主役にしたい場合。

ミントの爽快感をはっきり出したい場合。

ローズマリーの青さを印象的に見せたい場合。

意図的に香りを前へ出すこともあります。
大切なのは、

「強くなってしまった」

のか、

「強くした」

のか。この違いです。

自分で意図して、

「今日はこのハーブを主役にしよう」

と決めたのであれば、
香りが前へ出ても構いません。

香りのバランスは、いつも穏やかにすることではありません。
作りたいお菓子に合わせて、香りの位置を選ぶこと。

これが大切です。

〜香りは、単独ではなく全体の中で見る〜

ハーブスイーツを作るとき、
ついハーブだけを取り出して考えてしまいます。
でも、実際に口へ入るのは、
ハーブだけではありません。

小麦粉。

砂糖。

卵。

バター。

果物。

チョコレート。

ナッツ。

紅茶。

さまざまな素材が同時に口の中へ入ります。
その中で、ハーブの香りがどう感じられるのか。
ここを見る必要があります。

たとえば、

同じ量のカモミールでも、

シンプルなクッキーと、

オレンジジャムを入れたマフィンでは、

感じ方は変わります。

同じ量のローズマリーでも、

クラッカーとチョコレートの焼き菓子では、
存在感が変わります。

だから、

「このハーブなら何g」

という数字だけでは、香りの
バランスを完全には決められません。

レシピの中で、

どんな素材と一緒にいるのか。

どんな生地なのか。

どんな温度で焼くのか。

そこまで含めて見る必要があります。

〜食べながら、香りの場所を探してみる〜

特別な道具は必要ありません。

まずは作ったお菓子を、

少しゆっくり食べてみます。

ひと口目。

噛んでいる途中。

飲み込む少し前。

食べ終わったあと。

どこで香っただろう。

何と一緒に香っただろう。

強かっただろうか。

弱かっただろうか。

それとも、
ちょうどよかっただろうか。

それだけでも、

香りを見る目は少しずつ変わっていきます。

何度も繰り返していると、

「このハーブは、今回はもう少し後ろに置きたい」

「この組み合わせなら、少し前へ出してもよさそう」

という感覚が育ってきます。

〜数字を覚えるより、感覚の基準を持つ〜

もちろん、
レシピの分量は大切です。
最初は、まずその通りに作ってみることをおすすめします。

基準がなければ、違いを比較することもできないからです。

けれど、何度も作るうちに、

数字だけではなく、

自分の中にも基準を作っていきます。

「私は、このくらいのローズが好き」

「このカモミールなら、もう少し穏やかな方が好き」

「チョコレートと合わせるなら、このくらいがちょうどいい」

そういう感覚です。

その基準が育っていくと、
新しいレシピに出会ったときにも、
自分で少し考えられるようになります。

〜香りのバランスは、「位置を見ること」から始まります〜

Herb Sweets Methodの三つの柱のひとつ、

香りのバランス。

その最初の一歩として、
まず覚えておきたいのは、

香りには単純な

「強い・弱い」

だけではないということです。

前に出る香り。
中でほかの素材と重なる香り。
後ろから全体を支える香り。

それぞれに役割があります。

そして、どこへ置くのが正しいという決まりもありません。

何を作りたいのか。

誰が食べるのか。

何と組み合わせるのか。

そのお菓子の中で、

ハーブにどんな役割を持たせたいのか。

そこから考えます。

香りを増やす前に、

まず、今、この香りはどこにいるのだろう。

そう考えてみる。

それだけで、
ハーブスイーツの香りは少し違って見えてきます。

次はさらに一歩進んで、
砂糖や油脂、水分、焼成など、
お菓子そのものの構造によって、ハーブの香りがどう変わっていくのか
について考えてみたいと思います。


日本ハーブスイーツ協会
 白水

■あわせて読みたい
ハーブスイーツメソッドについて、丁寧にお話しています

https://www.herbsweets-japan.com/blog/190249/

一一一一一一一一一一一
あなたの普段の日常に、穏やかなハーブの香りと学びを。 ご自宅で気軽に楽しむ初級講座から、資格取得を目指す講座まで。講座の内容や、それぞれの学び方は、『ハーブスイーツマイスター講座のご案内』にてご覧いただけます。 ▼ https://www.herbsweets-japan.com/

他の記事もお読みになりたい方へ。私たち日本ハーブスイーツ協会の活動や、私たちがハーブスイーツを好きになったきっかけなどをまとめています。 https://www.herbsweets-japan.com/blog/cate/15677/

記事一覧を見る