ハーブスイーツを作っていると、自然にこんな疑問が生まれます。
「このハーブには、何を合わせたらいいのだろう」
カモミールには何が合うのか。
ローズには。
レモングラスには。
ローズマリーには。
ハーブスイーツを考えるうえで、組み合わせはとても大切です。
そして同時に、とても面白いところでもあります。
もちろん、
「このハーブには、この素材が合いやすい」
という定番の組み合わせはあります。
けれど、長くお菓子を作っていると、少しずつ分かってきます。
大切なのは、
相性のいい組み合わせを覚えることだけではない。
むしろ、
なぜ、その組み合わせが心地よく感じられるのか。
そこを考えられるようになることの方が、ずっと大切なのではないかと思っています。
〜「合う・合わない」だけでは、少しもったいない〜
たとえば、
ローズとベリー。
カモミールと柑橘。
ローズマリーとチョコレート。
レモングラスと果物。
こうした組み合わせを見て、
「相性がいいんですね」
と覚えることはできます。
もちろん、それも最初の一歩としては大切です。けれど、
「では、なぜ合うのでしょう」
と聞かれると、少し見え方が変わってきます。
香りが似ているからなのか。
反対の性質を持っているからなのか。
酸味がハーブの香りを明るく見せているのか。
油脂が香りの角をやわらげているのか。
苦味が入ることで、甘さとのバランスが整っているのか。
そこまで考え始めると、単なる組み合わせ表だったものが、
自分で次の組み合わせを考えるためのヒントに変わっていきます。
〜ハーブだけを見ていても、組み合わせは決まりません〜
フレーバーペアリングを考えるとき、ついハーブと素材の二つだけを見てしまいがちです。
けれど、お菓子の中にはもっと多くの要素があります。
甘味。
酸味。
苦味。
油脂。
香ばしさ。
食感。
温度。
そして、焼いたときに生まれる香り。
たとえば同じローズでも、
イチゴと合わせる場合と、
チョコレートと合わせる場合では、
まったく違う表情になります。
どちらもローズです。
けれど、周りにいる素材が変わることで、ローズ自身の見え方まで変わります。
つまり、
ハーブの香りは、単独で完成しているわけではないということです。
何と一緒にいるのか。
どんなお菓子の中にいるのか。
どのくらいの甘さなのか。
どんな食感なのか。
そうした関係の中で、ひとつの味わいが生まれます。
〜似たもの同士を合わせることもあれば、違うものを合わせることもあります〜
フレーバーペアリングというと、
香りの似たもの同士を合わせるイメージを持つ方もいるかもしれません。それも、ひとつの方法です。
花のような香りを持つハーブに、同じように華やかな果物を合わせる。
柑橘を思わせるハーブに、レモンやオレンジを合わせる。
香りの方向が近いもの同士は、比較的自然にまとまりやすくなります。
けれど、それだけではありません。
あえて違う方向のものを合わせることで、面白さが生まれることもあります。
爽やかな香りに、濃厚なチョコレート。
青さのあるハーブに、バターのコク。
華やかな香りに、ほんの少しの苦味。
一見すると離れているように見えるものが、一緒になることで、それぞれの良さを引き出す。
お菓子作りには、そういうことがよくあります。
だから、
「似ているから合う」だけでもなく、
「定番だから合う」だけでもない。
そこに、フレーバーペアリングのおもしろさがあります。
〜組み合わせには、役割があります〜
何かを合わせるとき、
その素材が何をしているのかを考えてみると、組み合わせが見えやすくなります。
たとえば果物の酸味が、
ハーブの香りを明るく見せているのかもしれません。
チョコレートの苦味やコクが、
香りを落ち着かせているのかもしれません。
ナッツの香ばしさが、
青さをやわらげているのかもしれません。
紅茶の香りが、
ハーブとお菓子の間をつないでいるのかもしれません。
つまり素材は、
ただ「おいしいから入れる」のではなく、
全体の中で何かしらの役割を持つことができます。
それが見えてくると、
「この素材がなければいけない」
という考え方から少し自由になれます。
同じ役割を持つ別の素材へ置き換えてみる。
季節の果物に変えてみる。
もう少し軽くする。
もう少し深くする。
そんな発想が生まれてきます。
〜季節によっても、心地よい組み合わせは変わります〜
同じハーブでも、
春に食べたい組み合わせと、
冬に食べたい組み合わせは違います。
春なら、軽やかな果物と。
夏なら、爽やかな酸味と。
秋なら、ナッツや香ばしさと。
冬なら、チョコレートやスパイスと。
もちろん、決まりではありません。
ただ、季節の空気や気温によって、
「おいしい」と感じる方向は少しずつ変わります。
ハーブスイーツを暮らしの中で楽しむなら、こうした季節感もフレーバーペアリングの一部だと思っています。
今日は暑いから、少し軽く。
寒いから、少し深く。
誰かへの贈り物だから、少し華やかに。
家でゆっくり食べるから、穏やかに。
組み合わせは、
素材だけで決めるものではなく、
いつ、どこで、誰と食べるのか
というところまで広げて考えることができます。
〜フレーバーペアリングは、暗記するためのものではありません〜
組み合わせについて学ぶと、
どうしても
「このハーブにはこれ」
という一覧表を作りたくなります。
それも便利です。
最初の頃は、ひとつの道しるべになります。
けれど、そこで終わってしまうと、
一覧表にない組み合わせへ進みにくくなります。
だから私たちは、定番の組み合わせを知ることと同じくらい、
組み合わせを考えるための視点を持つことを大切にしています。
なぜ、この素材を合わせるのか。
香りはどう変わるのか。
甘味との関係はどうか。
酸味は必要か。
油脂は多い方がいいのか。
食感は軽い方がいいのか。
そんなことを一つずつ考えていく。
最初は少し難しく感じても、
実際に作って食べていくうちに、少しずつ感覚が育っていきます。
〜ひとつの組み合わせから、次の組み合わせへ〜
たとえば、あるハーブとオレンジがよく合ったとします。
そこで、
「オレンジと合う」
だけで終わらせず、
「柑橘の明るい酸味と相性がいいのかもしれない」
と考えてみる。
すると、
レモンならどうだろう。
グレープフルーツなら。
柚子なら。
と、次の組み合わせが生まれます。
あるいは、
ベリーと合わせたときに華やかさが増したなら、
別の赤い果実ではどうだろう。
ジャムなら。
ドライフルーツなら。
そんなふうに、一つの経験から枝を伸ばすことができます。
この枝の伸ばし方が分かってくると、組み合わせの世界は一気に広がります。
〜Herb Sweets Methodの二つ目の柱、「フレーバーペアリング」〜
私たちが考えるHerb Sweets Methodには、
三つの柱があります。
『香りのバランス』
『フレーバーペアリング』
『レシピクリエーション』
です。
香りのバランスで、
まずハーブそのものの存在感を見ます。
その次に、
その香りを何と出会わせるのか。
ここで登場するのが、
フレーバーペアリングです。
単に、
「この組み合わせがおすすめです」
と伝えるためのものではありません。
素材同士の関係を見ながら、自分で組み合わせを考えられるようになるための視点として捉えています。
〜「合うものを探す」から、「関係を考える」へ〜
ハーブと素材の組み合わせに、絶対的な正解があるわけではありません。
同じ組み合わせでも、
配合が変われば印象は変わります。
焼き方が変われば、香りも変わります。
甘さが変われば、感じ方も変わります。
だからこそ、
「これは合う」
「これは合わない」
と早く決めてしまうより、
まずは、
「なぜ、こう感じたのだろう」
と考えてみる。
そこから、
もう少し酸味を。
もう少しコクを。
もう少し香ばしさを。
と、調整してみる。
その積み重ねが、自分なりの組み合わせの感覚を育てていきます。
フレーバーペアリングとは、
組み合わせを暗記することではなく、
素材と素材の関係を見つけること。
そして、そこからまだ見たことのないハーブスイーツへ進んでいくこと。
この先の記事で、フレーバーペアリングについて、もう少し具体的に掘り下げていきたいと思います。
香りが似ている素材をどう考えるのか。
反対の特徴を持つ素材をどう合わせるのか。
甘味や酸味、苦味、油脂は組み合わせの中でどんな役割を持つのか。
ハーブを単独で見るところから、
素材との「関係」を見るところへ。
そこから、ハーブスイーツの世界はさらに広がっていきます。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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