『ハーブスイーツは、香りを強くすればおいしくなるのでしょうか』

2026年09月07日 02:51
日本ハーブスイーツ協会

ハーブスイーツを作り始めた頃、多くの方が一度は考えることがあります。

「せっかくハーブを使うのだから、ちゃんと香りが分かるくらい入れたほうがいいのでは?」

それは、とても自然な感覚だと思います。

カモミールを使うなら、カモミールらしく。

ローズを使うなら、ローズの香りをしっかりと。

レモングラスなら、ひと口食べただけで爽やかな香りが伝わるように。

ハーブを主役として考えれば考えるほど、つい「香りを出すこと」へ意識が向きやすくなります。
けれど、ハーブスイーツを長く作っていると、少し違うところが見えてきます。

大切なのは、

どれだけ強く香らせるかではなく、どこに香りを置くか。

私はそう考えています。

〜ハーブティーと、お菓子の中のハーブは違います〜

ハーブそのものの香りを知るには、ハーブティーはとても分かりやすいものです。
お湯の中へ成分が溶け出し、そのハーブらしい香りや味わいを比較的まっすぐ感じることができます。

ところがお菓子になると、事情が変わります。

砂糖があります。

バターがあります。

卵があります。

小麦粉があります。

場合によっては、生クリームやチョコレート、果物、ナッツなども加わります。
さらに焼き菓子なら、そこへ熱が加わります。
つまりハーブは、単独で存在しているわけではありません。
たくさんの素材の中へ入り、その中でひとつの香りとして存在します。

だから、

「ハーブティーではこれくらい香ったから、お菓子でも同じくらい」

とは限りません。

お菓子になった瞬間、香りの見え方は変わります。

〜香りが強いことと、おいしいことは同じではありません〜

ハーブを増やしていけば、当然、香りは強くなっていきます。

けれど、あるところを越えると、

「いい香り」

だったものが、

「ハーブの味が強い」

という印象へ変わることがあります。

さらに強くなると、苦味や青臭さ、薬草のような印象が前へ出てくることもあります。

反対に、少なすぎれば、

「ハーブを使ったはずなのに、ほとんど分からない」

ということもあります。

その中間に、

バターの香りもする。

焼き上がった生地のおいしさもある。

果物やチョコレートの味も感じる。

そして、その後ろからハーブがふわりと現れる。

そんな場所があります。
私は、この場所を探すことがハーブスイーツのおもしろさのひとつだと思っています。

〜香りは、前に出るだけが仕事ではありません〜

たとえば、ひと口食べた瞬間に

「カモミールだ」

と分かるお菓子もあります。

それもひとつの表現です。

けれど、

「何だろう、このやさしい香り」

と感じて、少しあとからカモミールだと気づくお菓子もあります。

ローズも同じです。

華やかに香らせることもできれば、ベリーやチョコレートの奥にほんの少しだけ置くこともできます。

ローズマリーなら、存在感をはっきり出すこともできますし、焼き菓子全体の輪郭を少しだけ引き締めるように使うこともできます。

つまり、

ハーブが主役になる場合もあれば、ほかの素材を引き立てる脇役になる場合もある。
どちらが正しいというものではありません。
何を作りたいのかによって、香りの置き場所が変わります。

〜砂糖や油脂も、香りを考える材料です〜

ハーブスイーツを考えるとき、ハーブの量ばかりに目が向きがちです。
けれど実際には、同じ量のハーブを使っても、配合によって感じ方は変わります。

砂糖。

油脂。

水分。

生地の厚み。

焼成温度。

焼成時間。

こうしたものが、すべて香りに関わっています。
たとえば油脂には、香りを抱え込むような働きがあります。
砂糖によって苦味や青さの印象がやわらぐこともあります。

反対に、水分の多いお菓子では、香りが比較的直接的に感じられる場合もあります。

だから、

「このハーブは何g」

だけを覚えても、すべてのお菓子にそのまま応用できるわけではありません。

大切なのは、
そのお菓子の中で、ハーブがどう感じられているかを見ること。
これが、ハーブスイーツを自分で考えるための最初の一歩になります。

〜少しずつ、自分の感覚を育てていく〜

もちろん、最初から細かな違いがすべて分かる必要はありません。

まずはレシピ通りに作ってみる。

食べてみる。

香りを感じてみる。

「もう少し香ってもいいかな」

「これは少し強いかな」

「この果物と一緒なら、もう少し控えてもよさそう」

そんな小さな感想を持つだけで十分です。
次に作るとき、ほんの少し変えてみる。

また食べてみる。

この繰り返しの中で、
自分なりの「ちょうどいい」が少しずつ育っていきます。
そしてその感覚は、ひとつのレシピだけに使えるものではありません。

違うハーブ。

違う焼き菓子。

違う素材。

さまざまなハーブスイーツを作るときの、判断の土台になっていきます。

〜Herb Sweets Methodの最初の柱、「香りのバランス」〜

私たちが考えるHerb Sweets Methodには、三つの柱があります。

『香りのバランス』

『フレーバーペアリング』

『レシピクリエーション』

です。

その最初に置いているのが、

香りのバランス

です。

なぜ最初なのか。
それは、組み合わせを考える前にも、レシピを創る前にも、
まず、
そのハーブが、お菓子の中でどのように香っているのかを見る必要があるからです。

香りが強いのか。

弱いのか。

前に出ているのか。

後ろにいるのか。

ほかの素材を邪魔していないか。

反対に、ほかの素材によって消えてしまっていないか。
そんなことを少しずつ見られるようになると、ハーブスイーツの世界はぐっと広がります。

〜香りを足すのではなく、香りを整える〜

ハーブスイーツというと、

「何を加えるか」

に意識が向きます。

けれど私が長くお菓子を作ってきて感じるのは、
おいしさは、必ずしも「足すこと」だけで生まれるものではないということです。

少し減らす。

少し引く。

あえて前へ出さない。

ほかの素材が見える場所を残しておく。
そうすることで、かえってハーブの存在が美しく感じられることがあります。
香りを強くすることではなく、
全体の中で心地よい場所へ整えること。

Herb Sweets Methodにおける「香りのバランス」は、そこから始まります。

次の記事からは、この「香りのバランス」について、もう少し具体的に掘り下げていきたいと思います。

ハーブの香りは、どのように捉えればよいのか。
なぜ同じハーブでも、お菓子によって感じ方が変わるのか。

そして、自分なりの「ちょうどいい香り」をどう見つけていくのか。

ハーブスイーツを作るうえで、とても小さく見えて、実は大切なところです。

香りを強くすることから、

香りを整えることへ。

そこから、ハーブスイーツをもう少し深く楽しんでみたいと思います。


日本ハーブスイーツ協会
 白水

■あわせて読みたい
ハーブスイーツメソッドについて、詳しくお話しています

https://www.herbsweets-japan.com/blog/190249/

一一一一一一一一一一一
あなたの普段の日常に、穏やかなハーブの香りと学びを。 ご自宅で気軽に楽しむ初級講座から、資格取得を目指す講座まで。講座の内容や、それぞれの学び方は、『ハーブスイーツマイスター講座のご案内』にてご覧いただけます。 ▼ https://www.herbsweets-japan.com/

他の記事もお読みになりたい方へ。私たち日本ハーブスイーツ協会の活動や、私たちがハーブスイーツを好きになったきっかけなどをまとめています。 https://www.herbsweets-japan.com/blog/cate/15677/

記事一覧を見る