お菓子作りを始めた頃は、「もっと」が口癖でした。
もっときれいに。
もっと華やかに。
もっと驚いていただけるように。
良かれと思って、一つ、また一つと何かを加えていたように思います。
もちろん、その時間も大切でした。
たくさん試したからこそ、自分に合うものと出会えたのです。
でも、長い時間の中で、少しずつ変わっていきました。
何を足すかではなく、何を残すかを考えるようになったのです。
この焼き菓子には、このくらいの甘さがちょうどいい。
このハーブは、そっと香るくらいが心地いい。
飾りも、言葉も、少し控えめなくらいが、そのお菓子らしい。
そんなふうに思うことが増えました。
引き算とは、何かを諦めることではありません。
本当に大切なものが見えてくることです。
余計なものが少しずつ減っていくと、不思議と残ったものが、以前よりも豊かに感じられます。
それは、お菓子作りだけではありませんでした。
仕事も。
暮らしも。
人との時間も。
たくさん持つことより、大切なものを大切にすることのほうが、私にはしっくりくるようになりました。
だから今でも、新しいことを学びながら、最後には「これは本当に必要だろうか」と自分へ問いかけています。
足すことは、比較的簡単です。
でも、引くことには勇気がいります。
だからこそ、その選択には、その人らしさが表れるのかもしれません。
日々お菓子を作り続けてきて、私が最後に覚えたのは、新しい技術ではありませんでした。
必要なものだけを、丁寧に残すこと。
その静かな引き算が、お菓子にも、暮らしにも、やさしい余白をつくってくれることを、お菓子が教えてくれたのです。
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