「丁寧なお仕事ですね。」
そんな言葉をいただくことがあります。
そのたびに、とてもうれしく思います。
でも同時に、「私は特別なことをしているわけではないんですよ」とも感じています。
丁寧さとは、特別な才能ではありません。
毎日の小さな心がけが、少しずつ形になったものなのだと思います。
材料をきちんと量ること。
使った道具を元の場所へ戻すこと。
生地の様子をよく見て、急がずに手を動かすこと。
どれも、一つだけ見れば本当にささやかなことです。
私も最初からできていたわけではありません。
急いでしまった日もありました。
確認を怠って、やり直したこともありました。
そのたびに、「次はもう少し落ち着いてやってみよう」と、お菓子に教えられてきたのです。
だから今の丁寧さは、たくさんの失敗が育ててくれたものなのかもしれません。
丁寧に作ろうと力を入れすぎる必要もありません。
目の前の一つを大切にする。
それだけで十分です。
その積み重ねが、いつの間にか手つきになり、お菓子になり、暮らしにも表れてきます。
私は、お菓子作りを通して知りました。
丁寧さとは、速さの反対ではないということを。
ゆっくり動くことでもありません。
一つひとつに、ちゃんと心を向けることです。
そうして過ごした時間は、不思議と慌ただしさがありません。
忙しい日であっても、どこか穏やかな空気が流れています。
今日も、いつものようにお菓子を焼きます。
特別な技術を使うわけではありません。
目の前の一つを大切にする。
その繰り返しが、これからも私のお菓子を育ててくれるのだと思っています。
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