焼き菓子は、待つことが仕事です

2026年08月18日 04:20
日本ハーブスイーツ協会

お菓子作りには、待つ時間がたくさんあります。

オーブンが温まるまで待つ。

生地を休ませるために待つ。

焼き上がるまで待つ。

粗熱が取れるまで待つ。

考えてみると、手を動かしている時間と同じくらい、「待つ時間」があるのかもしれません。

若い頃の私は、この時間が少し苦手でした。

何もしていないように感じてしまったのです。

少しでも早く次の工程へ進みたい。

そんな気持ちが、いつもどこかにありました。

けれど、お菓子は急がせても応えてはくれません。

まだ温かい焼き菓子を急いで型から外せば、崩れてしまうことがあります。

焼きたてをすぐに切れば、本来の食感にはなりません。

待つことにも、大切な意味があるのです。

お菓子を作り続けてきて思うのは、「待つ」という時間も、仕事の一部だということです。

ただ時間が過ぎるのを眺めているだけではありません。

香りの変化を感じたり、焼き色を見たり、次の段取りを考えたり。

静かに待ちながら、お菓子と向き合っています。

その時間があるからこそ、最後のひと手間にも迷いが少なくなります。

待つことは、遠回りではありません。

お菓子がおいしくなるために必要な時間です。

そして、その時間は、作る人の気持ちまでゆっくり整えてくれます。

暮らしの中でも、急がなくていいことは意外とたくさんあります。

花が咲くのを待つこと。

季節が巡るのを待つこと。

子どもの成長を待つこと。

どれも、人が無理に早めることはできません。

お菓子作りも、それによく似ています。

待つことを覚えると、お菓子は少しずつ教えてくれることが増えていきます。

だから私は今日も、オーブンの前で急がずに待ちます。

その静かな時間もまた、お菓子を作る大切な仕事なのです。


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