お菓子が思うように焼けなかった日。
そんな日は、少しだけ肩を落としてしまうことがあります。
膨らまなかった。
焼き色が濃くなりすぎた。
食感が思っていたものと違った。
私も今までに、数え切れないほど経験してきました。
若い頃は、「今日は運が悪かったのかな」と思うこともありました。
でも、同じような失敗を何度も経験するうちに、考え方が少し変わってきました。
失敗には、ちゃんと理由があります。
材料の温度だったのかもしれません。
混ぜ方が少し違っていたのかもしれません。
オーブンの温度が思っていたより高かったのかもしれません。
理由が分かれば、次は少し工夫ができます。
だから私は、失敗した日ほど振り返るようになりました。
うまく焼けた日は、もちろん嬉しいものです。
でも、不思議なことに、あとから思い出すのは失敗した日のほうが多いように感じます。
「あの日に気づいたから、今がある。」
そんな出来事が、いくつも積み重なっています。
失敗は、決して歓迎したいものではありません。
できることなら、毎回きれいに焼き上げたいと思います。
それでも、お菓子作りは思い通りにならない日があるからこそ、少しずつ深まっていく世界なのだと思います。
大切なのは、失敗しないことではありません。
失敗をそのまま終わらせないことです。
一つ理由を見つける。
一つ工夫してみる。
その小さな積み重ねが、いつの間にか自分だけの経験になっていきます。
三十年という時間も、特別な才能が積み重なったわけではありません。
小さな失敗を、一つずつ受け取りながら歩いてきた時間でした。
だから今日うまくいかなかったとしても、大丈夫です。
その一日もまた、次のお菓子を静かに育ててくれているのです。
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