「もう少し」が、一番難しい加減でした

2026年08月16日 10:43
日本ハーブスイーツ協会

三十年お菓子を作ってきても、今でも難しいと感じることがあります。

それは、「もう少し」という加減です。

もう少し混ぜるべきか。

もう少し焼いたほうがいいのか。

それとも、ここで止めるべきなのか。

お菓子作りには、はっきりと線を引けない場面がたくさんあります。

レシピには目安が書かれています。

けれど、その日の気温や湿度、生地の状態によって、ちょうど良い加減は少しずつ変わります。

だから最後は、自分の目で見て、自分の手で感じ、自分で決めるしかありません。

若い頃の私は、「もう少し」を欲張ることがよくありました。

もう少し焼けば、もっと香ばしくなる。

もう少し泡立てれば、もっと軽くなる。

そんな期待を込めて続けた結果、少し焼きすぎたり、泡をつぶしてしまったり。

振り返れば、その「もう少し」が、お菓子を変えてしまうことが何度もありました。

反対に、少し勇気を出して早めに止めたことで、ちょうど良い仕上がりになった日もあります。

経験を重ねるとは、新しいことを増やすことだけではないのかもしれません。

「ここで十分です」と言える感覚を育てていくことでもあるように思います。

不思議なことに、この感覚はお菓子作りだけではありませんでした。

仕事も、暮らしも、人との関わりも。

あと一言、あと一歩、あと少し。

その加減を知ることは、とても難しく、それでいてとても大切なことでした。

だから私は今でも、お菓子を焼くたびに教えられています。

頑張りすぎなくてもいい。

足りないことばかりを見るのではなく、今ある良さを大切にしてもいい。

「もう少し」が難しいからこそ、お菓子作りはいつまで経っても飽きないのでしょう。

そして、その難しさがあるからこそ、一つ焼き上がるたびに、小さな喜びを感じられるのだと思っています。


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