「お菓子作りは、ストレス解消になるって聞きます。本当ですか?」
お菓子を作り、お客様とお話ししてきて、このご質問も何度かいただいてきました。
私は、そのたびに少し考えます。
なぜなら、お菓子作りは魔法ではないからです。
疲れている日もあります。
思うように焼けない日もあります。
だから、「必ずストレスがなくなります」とは言えません。
でも、長年続けてきて、一つだけ確かに感じていることがあります。
〜手を動かすと、頭の中が少し静かになります〜
粉を量る。
卵を割る。
生地を混ぜる。
一つひとつは、とてもシンプルな作業です。
でも、その時間は自然と手元へ意識が向きます。
仕事のこと。
明日の予定。
気になっていたこと。
そうした考えが、少しだけ遠くなる瞬間があります。
私は、ふっと抜けるその時間が好きです。
〜「うまく作ること」が目的ではありません〜
疲れている日に焼くお菓子は、少し形が違うこともあります。
焼き色が思ったより濃くなることもあります。
でも、それでいいと思っています。
今日は今日のお菓子。
そう思えるようになってから、お菓子作りがもっと好きになりました。
〜焼き上がる香りには、不思議な力があります〜
オーブンから甘い香りが漂ってくると、自然と深呼吸したくなります。
焼きたての湯気。
バターの香り。
ほんのり広がる植物の香り。
その空気に包まれていると、「今日は少しゆっくりしよう。」という気持ちになることがあります。
〜ハーブは、「頑張れ」とは言いません〜
ハーブを使うようになってから、私はよく思うことがあります。
植物は、人を急がせません。
「もっと早く。」
とも、
「もっと上手に。」
とも言いません。
ただ、静かに香ってくれます。
だから私は、その香りに助けられる日があります。
〜お客様から教えていただいたこと〜
あるお客様が、こんなことを話してくださいました。
「焼いている間だけは、仕事のことを忘れられるんです。」
私は、その言葉がとても印象に残っています。
ストレスが消えたわけではないのかもしれません。
でも、心が少し休める時間になったのだと思います。
〜今、私が思うこと〜
30年間、お菓子を作り続けてきて思うのは、お菓子作りは「問題を解決する時間」ではないということです。
むしろ、自分自身を少し休ませる時間なのかもしれません。
すべての日が順調でなくても大丈夫です。
今日は少し疲れたな。
そんな日に、お茶を淹れて、小さな焼き菓子を一つ味わう。
その穏やかな時間が、明日へ向かう力になることがあります。
お客様を見続けてきて、私はその姿を何度も見てきました。
だから今日も、お菓子作りが誰かの暮らしに、小さな安らぎを届けられたら嬉しく思っています。
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