たくさんのお菓子を作り、お客様とお話ししてきました。
その中で、何度も耳にしてきた言葉があります。
「私なんて、まだまだです。」
「本や動画みたいには作れません。」
「友人のほうがずっと上手なんです。」
そのお気持ちは、とてもよく分かります。
私自身も、若い頃は誰かと比べながらお菓子を作っていました。
でも30年という時間を歩いてきて、少しずつ考え方が変わりました。
〜比べることは、悪いことではありません〜
誰かの作品を見て、
「すごいな。」
と思うことがあります。
憧れることもあります。
それは決して悪いことではありません。
向上心につながることもあります。
でも、比べることが苦しさだけになってしまうなら、少し立ち止まってもよいのではないかと思います。
〜家庭のお菓子には、順位がありません〜
お店のお菓子には、品質があります。
コンクールには、順位があります。
でも、家庭のお菓子には、順位はありません。
お子さんが「おいしい。」と笑ったクッキー。
ご夫婦でゆっくり味わった焼き菓子。
一人のお茶時間に寄り添ったマフィン。
そこに、一位も二位もありません。
その家だけの時間があります。
〜昨日の自分と比べると、景色が変わります〜
教室などでお客様を見ていて感じることがあります。
長く楽しんでおられる方は、人と比べる時間が少しずつ減っていきます。
代わりに、
「前より混ぜ方が落ち着いた。」
「今日は焼き色が好きだった。」
そんな小さな変化を喜ぶようになります。
その積み重ねが、静かな自信につながっていくのだと思います。
〜ハーブには、それぞれの個性があります〜
ハーブも、比べるものではありません。
カモミールにはカモミールの良さがあります。
レモングラスにはレモングラスの魅力があります。
どちらが優れているということではなく、それぞれに違う役割があります。
人も、お菓子も、どこか似ているように感じます。
〜お客様から教えていただいたこと〜
あるお客様が、こんなことを話してくださいました。
「写真を撮ることをやめたら、お菓子作りが楽しくなりました。」
その言葉が、とても印象に残っています。
誰かに見せるためではなく、自分で味わうために焼く。
その気持ちに戻ったとき、お菓子作りはもう一度、穏やかな趣味になったのだそうです。
〜今、私が思うこと〜
私がお菓子を作り続けてきて思うのは、お菓子作りは競争ではないということです。
誰かより上手になることより、
昨日より少し楽しめたこと。
そのほうが、ずっと大切なのではないでしょうか。
もし今、
「私は上手じゃない。」
そう思っておられるなら、どうか安心してください。
あなたのお菓子には、あなたの暮らしがあります。
あなたの台所があります。
あなたの大切な人との時間があります。
それは、誰かと比べられるものではありません。
だから今日も、ご自身のお菓子を、ご自身のペースで楽しんでいただけたら嬉しく思います。
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