「レシピどおりに作ったはずなのに、うまくできませんでした。」
厨房や教室でお菓子を作り続けてきて、このご相談は本当にたくさん受けてきました。
材料も同じ。
分量も同じ。
手順も間違えていない。
それでも、思っていたように焼き上がらないことがあります。
すると、
「私には向いていないのかもしれません。」
そう思ってしまう方も少なくありません。
でも私は、その必要はないと思っています。
〜レシピは「地図」であって、「完成品」ではありません〜
レシピは、とても大切です。
でも、レシピだけで同じお菓子になるわけではありません。
その日の室温。
バターのやわらかさ。
卵の温度。
オーブンのクセ。
こうした小さな違いが、仕上がりに影響することがあります。
だから、レシピどおりに作っても違いが出るのは、決して珍しいことではありません。
〜プロでも毎日同じではありません〜
「プロはいつも完璧なんでしょう?」
そう思われることがあります。
もちろん、できるだけ同じ品質になるよう努力しています。
でも実際には、その日の材料や気温を見ながら、少しずつ調整しています。
つまり、「レシピを見る力」だけではなく、「生地を見る力」も使っているのです。
これは、一日で身につくものではありません。
経験を重ねながら育っていく感覚です。
〜一回で判断しないことが大切です〜
一度失敗すると、
「このレシピは難しかった。」
と思ってしまうことがあります。
でも、私はぜひもう一度だけ作ってみてほしいと思います。
二回目には、生地の様子が少し分かるようになります。
三回目には、焼き色を見る余裕が生まれます。
同じレシピを繰り返すことで、「昨日の自分」と比べられるようになるのです。
〜失敗には、必ず理由があります〜
お菓子作りは不思議なもので、理由のない失敗はほとんどありません。
混ぜすぎたのかもしれません。
焼き時間が少し長かったのかもしれません。
材料の温度が違ったのかもしれません。
原因が分かれば、次は改善できます。
だから私は、「失敗」ではなく、「次のヒント」だと考えるようにしています。
〜香りは、成功していることを教えてくれることがあります〜
お菓子作りをしていると、見た目だけではなく、香りも大切な手がかりになります。
オーブンから漂ってくる甘い香り。
焼き色がつき始めた頃の香ばしさ。
ハーブを使った焼き菓子なら、植物のやさしい香り。
五感を使ってお菓子と向き合うようになると、レシピだけでは分からなかったことが、少しずつ見えてきます。
〜30年間作り続けて、私が今も大切にしていること〜
30年という時間の中で、たくさんのお菓子を焼いてきました。
それでも、新しいレシピに挑戦するときは、今でも学ぶことがあります。
だから、お菓子作りは面白いのです。
もし今日、思うように焼けなかったとしても、それだけで「向いていない」と決めないでください。
一回のお菓子で決まることはありません。
昨日より少しだけ生地が分かるようになった。
昨日より少しだけ香りを楽しめた。
その積み重ねが、気づけば「お菓子作りが好き」という気持ちを育ててくれます。
どうか焦らず、ご自身のペースで続けてみてください。
きっと、焼き上がる香りが、少しずつ特別なものになっていくと思います。
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