少しお湯を多めに沸かしたケトルから、白い湯気が優しく立ち上っています。
生徒さんをお迎えする前の、しんとした静かな台所。
お気に入りのティーカップをトレイにそっと並べていると、なんだか私自身の気持ちも、まあるく整っていくような気がするのです。
そんな穏やかな朝の空気の中で、今日は『レモンバームとカカオマスのスコーン』を焼き上げました。
自宅の小さなキッチンで、お二人くらいまでの生徒さんと机を囲む、本当にささやかなお菓子教室をひらいています。
大人数のきらきらした場所ではなく、普段着のまま、暮らしの延長線上でふらりと集まれるような、そんな場所でありたいなと思っています。
ここで大切にしているのは、お菓子を完璧に、上手に焼き上げることではありません。
それよりも、ハーブを刻んだときに手元からふわりと立つ香りに「いい匂いですね」と顔を見合わせたり、日常の忙しさをちょっとだけ横に置いて、深呼吸するような時間を一緒に分かち合うこと。
教えるというよりは、心地よい時間を一緒に味わっている感覚に近いのかもしれません。
オーブンに入れてしばらくすると、キッチンがなんとも言えない幸せな香りで満たされていきます。
摘みたてのレモンバームの、どこかきゅんとするような爽やかなシトラスの香りと、カカオマスのちょっぴりほろ苦くて深い香りが混ざり合って。
「わぁ、もう美味しそう」
焼き上がりを一緒に覗き込む瞬間の、生徒さんのぱあっと明るくなる笑顔を見るのが、私は何よりも大好きです。
お家へ持ち帰ったあと、どんな風に召し上がるのかな。
お気に入りのお茶を丁寧に淹れて、自分をちょっと労うような、そんな静かなひとときのお供になってくれたら嬉しいなと思います。
お菓子作りやハーブの世界が初めて、という方もたくさんいらっしゃいます。
最初は「私にもできるかしら」と、少し緊張した面持ちでエプロンを結ばれる姿も。
でも、全然大丈夫なんですよ。
まずは、目の前にある緑の葉っぱを指先でそっと触って、その香りに癒される。
それだけでもう、十分素敵なことだと思うのです。
自分のペースで、五感を開いていく心地よさを、ほんのり感じてもらえたらなと思っています。
「久しぶりに、自分のためだけの贅沢な時間でした」
そう言って、ハーブの香りをふんわりとまとったまま、少しほっとした表情で帰っていく後ろ姿を見送るとき。
この小さな台所で、誰かと時間を分かち合える喜びを、私自身もしみじみと感じるのです。
こんな時間が、毎日の暮らしの中にぽつんとあっても、いいのかもしれませんね。
あなたの普段の日常に、穏やかなハーブの香りを。
日本ハーブスイーツ協会の『ハーブスイーツマイスター講座』にて、その入口を静かにご用意しています。
このハーブスイーツの『仕事としてのハーブスイーツ』についての過去記事はこちら。
https://www.herbsweets-japan.com/blog/180742/
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