何かを学ぼうとするとき、
「それを仕事にするのですか?」
「資格を取って、何かに活かすのですか?」
そんなふうに聞かれることがあります。
もちろん、学んだことを仕事に活かすのも素敵なことです。
新しい技術を身につけたり、資格を取得したり、それをきっかけに教室を始めたり。
学びが仕事へつながっていく道もあります。
けれど、学ぶ理由は、それだけではありません。
たとえば、休日の午後。
お気に入りのハーブをひとつ選んで、お菓子を焼いてみる。
カモミールの香りを確かめながら生地を混ぜたり、ローズマリーを細かく刻んだり、焼き上がるまでの時間にお茶を淹れたり。
そんな時間を、以前より少し深く楽しめるようになる。
それも、学びがもたらしてくれるもののひとつです。
知識が増えると、それまで何となく見ていたものが、少し違って見えるようになります。
「このハーブは、こんな香りだったんだ」
「このお菓子には、こちらの組み合わせのほうが似合いそう」
「今日は少し控えめに使ってみようかな」
そんな小さな気づきが、暮らしの中に増えていきます。
ハーブスイーツについて学ぶことも同じです。
上手に作ることだけが目的ではありません。
ハーブの香りを知ること。
素材との組み合わせを考えること。
季節によって使いたいハーブが変わること。
同じレシピでも、少しずつ自分らしい好みが見えてくること。
そうした一つひとつも、立派な学びです。
そして不思議なことに、学んだことは、その分野だけに留まらないことがあります。
香りに意識を向けるようになると、庭の植物の変化にも気づくようになる。
季節を意識するようになると、旬の果物にも目が向く。
お菓子を丁寧に作る時間を持つことで、暮らしそのものを少し丁寧に感じられるようになる。
ひとつの小さな学びから、日常の見え方まで変わっていくことがあります。
大人になると、学ぶことには、つい「役に立つかどうか」という物差しを持ち込みがちです。
仕事に使えるのか。
収入につながるのか。
資格になるのか。
もちろん、それらも大切です。
けれど、
「好きだから、もっと知りたい」
それだけでも、学ぶ理由として十分なのだと思います。
子どもの頃には、もっと自然にそうしていたはずです。
面白そうだから調べる。
好きだから繰り返す。
できるようになることが嬉しくて、もう少し続けてみる。
そこに必ずしも、将来の仕事や成果が必要だったわけではありません。
大人になってからの学びにも、そんな自由があっていいのではないでしょうか。
ハーブスイーツを学んだからといって、必ず講師になる必要はありません。
資格を取得したからといって、必ず仕事にしなければならないわけでもありません。
家族のために焼く。
友人にプレゼントする。
自分のお茶の時間を楽しむ。
庭で育てたハーブを使ってみる。
季節が変わるたびに、ひとつ新しいお菓子を作ってみる。
そんな楽しみ方もあります。
そして、長く好きでいられるものほど、
「何かにしなければ」
と急がないほうがよいこともあります。
まずは知る。
作る。
味わう。
また作りたくなったら作る。
その繰り返しの中で、自分なりの楽しみ方が少しずつ育っていきます。
もしその先で、
「もう少し深く学びたい」
「誰かに伝えてみたい」
「いつか仕事にしてみたい」
と思う日が来たなら、そのとき考えればいい。
学びの行き先を、最初から決めておく必要はありません。
学ぶことは、未来の仕事をつくるためだけのものではなく、
今日の暮らしを、ほんの少し豊かにするためのものでもあります。
香りを知る。
作る楽しさを知る。
季節を感じる。
自分の好きなものを、以前より少し深く知る。
そんな学びが日常の中にひとつあるだけでも、暮らしには小さな楽しみが増えていきます。
ハーブスイーツの学びも、そんな場所であれたらと思っています。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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