紅茶とハーブティー。
どちらも、温かいカップから香りが立ちのぼり、お菓子と一緒に楽しむことがあります。
そのため、
「紅茶文化とハーブ文化って、似ているものなの?」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、共通するところはあります。
香りを楽しむ。
植物から生まれる。
お茶の時間に飲む。
お菓子と合わせる。
暮らしの中に、小さな休息を作ってくれる。
けれど、その背景や広がり方を見ると、少し違います。
紅茶文化は、茶の葉を加工して淹れる「紅茶」という飲み物を中心に、食卓や社交、お菓子との組み合わせなどを含みながら育ってきました。
一方、ハーブ文化は、さまざまな植物を飲み物だけでなく、料理や香り、暮らしの中へ取り入れてきた、とても幅の広い文化です。
今回は、この二つの違いを、お菓子との関係からやさしく考えてみたいと思います。
〜紅茶は、基本的に「茶の葉」から作られます〜
まず、紅茶とは何かを簡単に整理してみましょう。
紅茶は、チャノキの葉を原料として作られるお茶です。
緑茶や烏龍茶なども、もともとは同じチャノキの葉から作られますが、加工方法の違いによって香りや色、味わいが変わります。
紅茶には、
ダージリン。
アッサム。
ウバ。
など、産地や製法によってさまざまな個性があります。
さらに、
アールグレイのように香りを加えた紅茶。
果物や花などを合わせたフレーバーティー。
いろいろな楽しみ方があります。
つまり紅茶文化では、まず「紅茶という飲み物」がひとつの大きな中心になります。
〜ハーブ文化は、もっと多くの植物を含みます〜
一方、ハーブ文化で扱われる植物はひとつではありません。
カモミール。
ローズマリー。
ミント。
ローズ。
レモンバーム。
レモングラス。
タイム。
エルダーフラワー。
ほかにも、たくさんあります。
葉を使うもの。
花を使うもの。
茎を使うもの。
果実や果皮を使うもの。
植物によって、使う部分も香りも違います。
そのため、ハーブ文化は「ひとつの飲み物の文化」というより、さまざまな植物と人の暮らしとの関わりを含んだ、広い文化として見ることができます。
〜ハーブティーと紅茶は、同じ「お茶」でも原料が違います〜
日本では、カモミールティーやミントティーなども日常的に「お茶」と呼びます。
そのため、紅茶とハーブティーが同じ仲間のように感じられることがあります。
けれど、原料は違います。
紅茶はチャノキの葉から。
ハーブティーは、食用として適切なさまざまなハーブから。
カモミールの花をお湯へ入れる。
ミントの葉を使う。
レモングラスを淹れる。
それぞれ植物そのものの香りを楽しみます。
同じカップで楽しむ飲み物でも、入口が違うのです。
〜紅茶文化には「お菓子と一緒に飲む」楽しみがあります〜
紅茶とお菓子は、とても親しみ深い組み合わせです。
スコーン。
ケーキ。
クッキー。
ビスケット。
サンドイッチ。
こうしたものと一緒に紅茶を楽しむ習慣があります。
紅茶をひと口。
お菓子をひと口。
また紅茶。
飲み物と食べ物が互いを引き立てます。
紅茶文化の中では、お菓子は「紅茶と一緒に楽しむもの」として大きな役割を持ってきました。
〜ハーブ文化では「飲み物になる」だけではありません〜
ハーブもハーブティーとして楽しむことができます。
けれど、ハーブの使い方はそれだけではありません。
料理へ加える。
お菓子へ使う。
香りを楽しむ。
庭で育てる。
季節の植物として眺める。
暮らしの中には、いろいろな入り口があります。
そのためハーブスイーツでは、
「ハーブティーとお菓子を合わせる」
だけではなく、
「ハーブそのものをお菓子の材料にする」
という楽しみ方が生まれます。
〜紅茶も、お菓子の材料になります〜
もちろん、紅茶も飲むだけではありません。
茶葉を細かくしてクッキーへ。
紅茶を濃く抽出してケーキへ。
ミルクティーの風味をクリームへ。
紅茶の香りを生地へ移す。
こうしたお菓子もあります。
紅茶のシフォンケーキ。
アールグレイのクッキー。
紅茶のパウンドケーキ。
すでに馴染みのあるお菓子も多いでしょう。
つまり紅茶には、
「お菓子と一緒に飲む」
だけでなく、
「お菓子そのものに使う」
楽しみもあります。
〜ハーブスイーツでは、香りの選択肢がさらに広がります〜
紅茶を使ったお菓子でも、香りを楽しめます。
けれど、ハーブは種類がとても多いため、香りの方向も幅広くなります。
カモミールなら穏やかに。
ローズマリーなら清々しく。
ミントなら爽やかに。
ローズなら華やかに。
レモンバームなら明るく。
使うハーブによって、同じクッキーでも違った表情になります。
ハーブスイーツでは、
「どのお菓子を作るか」
だけでなく、
「今日はどんな香りにしようか」
と考える楽しみがあります。
〜紅茶には、茶葉そのものの味わいがあります〜
紅茶には香りだけでなく、
渋み。
コク。
軽やかさ。
まろやかさ。
など、茶葉や淹れ方による味わいがあります。
そのため、お菓子との組み合わせを考えるときにも、
軽い紅茶には軽いお菓子。
コクのある紅茶には濃厚なお菓子。
といった楽しみ方があります。
紅茶そのものの個性と、お菓子との相性を見ることができます。
〜ハーブは、一種類ごとの個性が大きく違います〜
ハーブの場合には、植物が変わると香りの方向も大きく変わります。
カモミールとローズマリー。
ミントとローズ。
レモングラスとタイム。
同じ「ハーブ」と呼んでいても、まったく同じ系統の香りではありません。
そのため、
「ハーブに合うお菓子」
というひとつの答えではなく、
「このハーブには、何が合うだろう」
と一種類ずつ考えることになります。
〜紅茶とスコーンには、よく知られた組み合わせがあります〜
紅茶と聞いて、スコーンを思い浮かべる方も多いでしょう。
温かな紅茶。
焼きたてのスコーン。
ジャム。
クリーム。
この組み合わせには、長く親しまれてきた安心感があります。
お菓子と飲み物がひとつの時間を作ります。
紅茶文化では、このように「どう飲むか」「何と一緒に楽しむか」というところにも文化の厚みがあります。
〜ハーブスイーツでは、スコーンそのものに香りを入れられます〜
同じスコーンでも、ハーブ文化の側から見ると別の楽しみ方ができます。
ローズマリーのスコーン。
レモンタイムのスコーン。
ミントのスコーン。
生地そのものへハーブを入れる。
すると、割った瞬間に中から香りが立ちます。
飲み物とお菓子を組み合わせるだけではなく、お菓子の中そのものへ植物の香りを入れる。
ここに、ハーブスイーツらしい楽しみがあります。
〜紅茶とハーブを一緒に使うこともできます〜
紅茶文化とハーブ文化は、きれいに分かれているわけではありません。
一緒に楽しむこともできます。
紅茶とローズマリーのスコーン。
紅茶とミントのお菓子。
アールグレイとローズ。
紅茶とレモン系ハーブ。
紅茶の香りを土台にして、そこへハーブを重ねる。
すると、また違った香りのお菓子になります。
〜紅茶にも、花や果物の香りが加えられることがあります〜
紅茶には、香りを加えたものもあります。
代表的なもののひとつがアールグレイです。
また、花や果物などと組み合わせたフレーバーティーもあります。
そのため、
「紅茶は茶葉だけ」
「ハーブは植物の香り」
と完全に分けることもできません。
長い時間の中で、さまざまな香りの楽しみ方が生まれてきました。
だからこそ、紅茶とハーブの世界は重なるところもあります。
〜ハーブ文化は、庭との距離が近い楽しみ方もできます〜
ハーブのおもしろさのひとつは、自宅で育てやすい種類があることです。
鉢植えのミント。
庭のローズマリー。
レモンバーム。
タイム。
朝、庭へ出る。
少し摘む。
台所へ持っていく。
そしてお菓子へ使う。
「飲み物や材料を買う」ところからではなく、
「育てるところから」
楽しむこともできます。
植物の成長と、お菓子作りがつながります。
〜季節との関わり方にも少し違いがあります〜
紅茶は、一年を通して楽しむことができます。
暑い季節にはアイスティー。
寒い季節には温かな紅茶。
季節によって飲み方を変える楽しみがあります。
ハーブの場合には、それに加えて植物の成長そのものがあります。
春に芽が出る。
初夏に葉が茂る。
花が咲く。
冬にはドライハーブを使う。
庭や自然の変化とつながりやすいところがあります。
〜どちらにも「香りをゆっくり楽しむ時間」があります〜
違いはありますが、紅茶文化とハーブ文化にはよく似たところもあります。
お湯を沸かす。
香りが立つ。
少し待つ。
カップへ注ぐ。
お菓子をひとつ。
すぐに結果を求めるのではなく、少し時間をかけて楽しむ。
そんなところです。
忙しい日常の中に、小さな区切りを作ってくれます。
〜お菓子と飲み物の組み合わせを考える楽しみも共通しています〜
紅茶なら、
このケーキにはどの紅茶が合うだろう。
このスコーンには、少しコクのある紅茶かな。
と考えます。
ハーブティーなら、
この焼き菓子にはカモミール。
チョコレートにはミント系。
柑橘のお菓子にはレモン系のハーブ。
そんな組み合わせを考えることができます。
香りを比べながら選ぶ楽しさは、どちらにもあります。
〜ハーブスイーツなら「飲むハーブ」と「食べるハーブ」を比べられます〜
たとえばカモミール。
ハーブティーとして飲む。
次に、カモミールのクッキーを食べる。
同じ植物でも印象は違います。
お湯の中で感じる香り。
バターや砂糖と一緒になった香り。
ローズマリーでも同じです。
飲み物として。
お菓子として。
同じハーブの違う表情を知ることができます。
〜紅茶も「飲む」と「食べる」で表情が変わります〜
紅茶も同じです。
カップで飲むアールグレイ。
クッキーに入ったアールグレイ。
ケーキに使った紅茶。
それぞれ少し違います。
お菓子へ使うことで、バターや砂糖、果物などと香りが重なります。
飲み物だった素材を、食べる形へ変えてみる。
ここにも紅茶とハーブの共通するおもしろさがあります。
〜紅茶文化とハーブ文化は、どちらかを選ぶものではありません〜
紅茶が好きなら、紅茶を楽しめばよい。
ハーブが好きなら、ハーブを楽しめばよい。
そして、両方好きでもよいのです。
紅茶を飲みながら、カモミールのクッキー。
ハーブティーとプレーンなスコーン。
紅茶とローズマリーの焼き菓子。
組み合わせは自由です。
文化の違いを知ることは、境界線を作るためではありません。
それぞれのよさを知って、楽しみを広げるためです。
〜違いを簡単に整理すると〜
紅茶文化は、
「チャノキの葉から作られる紅茶を中心に、淹れ方や飲み方、お菓子や食事との組み合わせなどを含みながら育ってきた文化」。
ハーブ文化は、
「さまざまな食用ハーブや植物を、飲み物、料理、お菓子、香り、栽培など、暮らしの幅広い場面で楽しんできた文化」。
と考えると分かりやすいでしょう。
お菓子との関係では、
紅茶は「お菓子と一緒に飲む」という楽しみがよく知られています。
ハーブは、それに加えて「ハーブそのものをお菓子へ取り入れる」という楽しみが広がっています。
もちろん、紅茶もお菓子の材料になりますし、ハーブも飲み物になります。
境界はきれいな一本線ではありません。
〜違いを知ると、お茶の時間が少し広がります〜
紅茶を淹れる。
スコーンを置く。
そんな昔から親しまれてきた組み合わせがあります。
一方で、庭からローズマリーを少し摘み、スコーンへ混ぜる。
カモミールをクッキーへ。
ミントをチョコレートのお菓子へ。
そんな楽しみ方もあります。
紅茶文化は、飲み物とお菓子の関係を豊かにしてくれます。
ハーブ文化は、植物の香りそのものをお菓子の中へ連れてきてくれます。
そして、その二つは重なることもできます。
紅茶を飲みながらハーブスイーツを食べる午後。
紅茶そのものとハーブを組み合わせた焼き菓子。
どちらも、香りを楽しむ時間です。
違いを知ることで、
「こちらが正しい」
と分けるのではなく、
「こんな楽しみ方もあるんだ」
と選択肢が増えていく。
そんなところにも、紅茶とハーブ、そしてお菓子の世界のおもしろさがあるのだと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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