お菓子を作ったあと、
「また作ろう」
と思うことがあります。
とても上手にできたから。
家族が喜んでくれたから。
思っていた以上においしかったから。
理由はいろいろあります。
ハーブスイーツにも、そんな「また作りたい」と思う瞬間があります。
けれど、それは必ずしも完璧に焼けたときだけではありません。
もう少し香りを変えてみたい。
次は違う果物を合わせてみたい。
庭のハーブがまた育ってきた。
あの人にも食べてもらいたい。
そんな小さな気持ちから、次のお菓子作りが始まることもあります。
今回は、ハーブスイーツを作ったあとに生まれる「また作りたい」という気持ちは、どんなところからやってくるのか。
暮らしの中の小さな場面から考えてみたいと思います。
〜オーブンを開けたときの香り〜
お菓子作りには、食べる前から楽しめる時間があります。
オーブンの中で生地が少しずつ膨らむ。
バターや砂糖の甘い香りが漂ってくる。
そこへ、ローズマリーやカモミール、ミントなどの香りが重なります。
「そろそろかな」
と思いながらオーブンをのぞく。
焼き上がって扉を開けた瞬間、ふわっと温かい香りが広がる。
その瞬間に、
「またこの香りを嗅ぎたいな」
と思うことがあります。
食べることだけではなく、作っている途中の香りも、次のお菓子作りへつながっています。
〜まだ温かいうちに食べたひと口〜
焼き上がったばかりのお菓子には、家庭で作ったからこそ楽しめる時間があります。
まだ温かいスコーンを割る。
中から湯気と一緒にローズマリーの香り。
マフィンをひと口食べる。
果物の甘さのあとから、カモミールがふわっと香る。
クッキーをかじると、バターの香ばしさの中にミントの爽やかさ。
「うん、これ好きだな」
そんな瞬間があります。
その小さな満足が、
「今度また焼こう」
という気持ちにつながります。
〜思っていたより、おいしくできたとき〜
初めての組み合わせには、少し不安があります。
カモミールとこの果物は合うかな。
ローズマリーをお菓子に入れて大丈夫かな。
ミントは強くなりすぎないかな。
それでも作ってみる。
焼き上がったものを食べてみたら、
「あ、ちゃんと合う」
と思う。
思っていた以上にまとまっている。
そんな小さな驚きは、とてもうれしいものです。
新しい組み合わせがひとつ自分の中に増えると、
「次はこれも試してみようかな」
と自然に次のアイデアが出てきます。
〜少しだけ心残りがあるとき〜
不思議なことに、完璧にできなかったときにも「また作りたい」と思うことがあります。
ハーブが少し弱かった。
もう少し焼き色をつけてもよかった。
果物を少し増やしたい。
ローズマリーは、ほんの少し減らしてもよさそう。
そんな小さな心残りです。
大きな失敗ではありません。
でも、
「次はこうしてみよう」
と思うところがひとつある。
すると、そのお菓子はそこで終わりません。次へ続いていきます。
お菓子作りのおもしろさは、一回で完成しなくてもよいところにもあります。
〜誰かが「おいしい」と言ってくれたとき〜
家族に食べてもらう。
友人に少し渡す。
すると、
「これ、おいしいね」
と言ってもらえることがあります。
それだけで、
「また作ろうかな」
と思えるものです。
さらに、
「何の香り?」
と聞かれる。
「カモミールなんだよ」
と答える。
そこからハーブの話が始まる。
自分が好きなものを誰かも楽しんでくれた。そんな経験は、次のお菓子作りの力になります。
〜「また食べたい」と言われたとき〜
「おいしい」もうれしい言葉ですが、
「また作って」
「また食べたい」
と言われるのも、うれしいものです。
一度きりのお菓子ではなく、誰かの記憶に少し残ったということだからです。
「あのローズマリーのスコーン、また食べたい」
「あのカモミールのクッキー、好きだった」
そんなふうに言ってもらえると、そのお菓子は少しずつ定番になっていきます。
何度も作るうちに、自分の中でも、
「これはうちのお菓子だな」
と思えるものになっていきます。
〜季節が巡ってきたとき〜
去年の春に作ったカモミールのお菓子。
夏に焼いたミントのマフィン。
秋のりんごとハーブの焼き菓子。
冬に食べたチョコレートとハーブのお菓子。
季節が一巡すると、
「あ、そろそろあれを作る時期だな」
と思うことがあります。
レシピを見なくても、季節の空気が思い出させてくれる。
そんなお菓子があります。
「また作りたい」は、味の記憶だけでなく、季節の記憶から生まれることもあります。
〜庭のハーブが元気になったとき〜
庭や鉢植えでハーブを育てていると、お菓子作りのきっかけが向こうからやってくることがあります。
ローズマリーの枝先が伸びた。
ミントの葉が増えた。
レモンバームが元気。
「あ、そろそろ使おうかな」
葉を摘んで、台所へ持ち帰る。
何を作るかは、そのあと考える。
そんな順番の日もあります。
ハーブが育つことと、お菓子を作ることがつながっていると、自然に「また」が生まれます。
〜同じハーブの違う表情を見つけたとき〜
ひとつのハーブでも、使い方はひとつではありません。
カモミールをクッキーに。
次はマフィンに。
牛乳へ香りを移してクリームに。
ローズマリーをスコーンに。
次はチョコレートと合わせてみる。
ミントをマフィンに。
次はカカオと一緒に。
同じハーブなのに、お菓子が変わると表情も変わります。
「こんな使い方もできるんだ」
と知ると、また次を試したくなります。
〜違うハーブでも作ってみたくなったとき〜
カモミールでおいしくできた。
すると、
「ローズならどうだろう」
と思う。
ローズマリーのスコーンが気に入った。
次はレモンタイムも合うかもしれない。
ひとつうまくいくと、そこから枝分かれするように興味が広がります。
ハーブスイーツは、ひとつのお菓子から次のお菓子へつながりやすいものです。
香りの種類が違うだけで、同じ生地にも新しい表情が生まれるからです。
〜「この組み合わせを覚えておきたい」と思ったとき〜
お菓子を食べていて、
「この組み合わせ、好きだな」
と思うことがあります。
カモミールとりんご。
ローズマリーと柑橘。
ミントとチョコレート。
ローズとベリー。
そんな組み合わせをひとつ見つけると、忘れたくなくなります。
メモを残す。
写真を撮る。
レシピの端に書いておく。
それが次に作るための小さな種になります。
〜少しずつ自分の好みが分かってきたとき〜
何度か作っていると、自分の好みが見えてきます。
ハーブは強く香らせすぎないほうが好き。
果物と合わせるのが好き。
焼きたての香りを楽しみたい。
カモミールはこのくらい。
ローズマリーはほんの少し。
そんな自分なりの基準です。
最初はレシピを見ながら作っていたものが、少しずつ自分のお菓子になっていきます。
すると、作ることそのものが楽しくなります。
〜上手になったことに、自分で気づいたとき〜
前より生地の状態が分かる。
焼き上がりを見るだけで、もう少しかなと分かる。
ハーブの量も、少し感覚で考えられるようになった。
以前より自然に作れる。
そんな変化に、ある日ふと気づくことがあります。
大きな成長ではありません。
でも、
「前より分かるようになったな」
と思う。それも、また続けたくなる理由です。
〜作る時間そのものが好きになったとき〜
ハーブスイーツの楽しみは、完成したお菓子だけではありません。
材料を並べる。
粉を量る。
ハーブを細かくする。
バターを混ぜる。
生地をまとめる。
オーブンへ入れる。
少しずつ香りが変わっていく。
そうした作業そのものが心地よくなることがあります。
何かを考えながら作る日。
何も考えず、手だけ動かす日。
どちらもあります。
「作っている時間が好き」
と思えるようになると、また自然に台所へ立ちたくなります。
〜誰かのためではなく、自分のために焼きたくなったとき〜
いつも誰かに食べてもらうために作らなくても構いません。
今日は自分のため。
少しお茶を飲みたいから。
好きな香りを楽しみたいから。
クッキーを数枚だけ焼く。
小さなスコーンを作る。
そんな日があります。
誰かに頼まれたわけではない。
必要でもない。
それでも、
「食べたいから作ろう」
と思える。
そこには、趣味としてのお菓子作りの大きな楽しさがあります。
〜誰かの顔が浮かんだとき〜
反対に、
「これ、あの人に渡したら喜ぶかな」
と思うこともあります。
カモミールが好きだったな。
チョコレートが好きだから、ミントと合わせようかな。
そんなふうに誰かの顔を思い浮かべる。すると、作る理由がひとつできます。
お菓子は、誰かとの間に小さなきっかけを作ってくれます。
〜香りの記憶をもう一度味わいたくなったとき〜
香りは、記憶と結びつくことがあります。
以前作ったローズマリーのスコーン。
焼き上がったときの台所の香り。
家族と食べた午後。
窓の外の季節。
そんなものが一緒に残ります。
そして、ふとした日に思い出す。
「あれ、また食べたいな」
味だけではなく、そのときの時間まで思い出す。
それも、「また作りたい」が生まれる瞬間です。
〜完成させようとしすぎないから、続けられる〜
毎回、もっと上手に。
もっときれいに。
もっと完璧に。
そう思っていると、お菓子作りが少し疲れることがあります。
でも、今日はこれでいい。
おいしく食べられた。
次は少し変えてみよう。
そのくらいなら、また作れます。
ハーブスイーツも同じです。
香りが少し弱かった。
それなら次へ。
少し強かった。
次は減らす。
一回ごとに完成させるのではなく、続けながら育てる。
そんな考え方が、「また」を残してくれます。
〜「また作りたい」は、小さな余白から生まれる〜
お菓子を食べ終えたあと、
「完璧だった」
と思うことだけが、次につながるわけではありません。
もう少し試したい。
別の香りも知りたい。
次の季節にも焼きたい。
誰かにも食べてもらいたい。
そんな小さな余白がある。
だから、また作る。
そして何度か作っているうちに、自分の好きな香りや味が少しずつ分かってきます。
〜ハーブスイーツは、作るたびに次の楽しみを残してくれます〜
ハーブスイーツを「また作りたい」と思う瞬間。
それは、ひとつではありません。
オーブンを開けたときの香り。
まだ温かいうちに食べたひと口。
家族の「おいしい」。
少しだけ残った心残り。
庭のハーブが育った日。
季節が巡ってきたとき。
新しい組み合わせを思いついたとき。
そんな小さな出来事の中にあります。
お菓子をひとつ作る。食べる。
そこで終わってもよい。
でも、
「次はこうしてみようかな」
と思ったら、もう次のお菓子作りは少し始まっています。
大きな目標がなくても構いません。
また食べたい。
また香りを感じたい。
また作ってみたい。
その気持ちがひとつあれば十分です。
ハーブをひとつ知るたびに。
季節がひとつ巡るたびに。
少しずつ「また」が重なっていく。
そんな繰り返しの中で、ハーブスイーツは特別なものではなく、自分の暮らしの中にある楽しみのひとつになっていくのだと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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