日本ハーブスイーツ協会の講座では、テキストの中に主要なハーブスイーツのレシピを掲載しています。
その数は、全部で32種類。
ホームページなどをご覧になった方は、
「32種類のお菓子を学べる講座なんだな」
と思われるかもしれません。
もちろん、それは間違いではありません。
けれど、私たちが本当にお伝えしたいハーブスイーツの世界は、32種類で終わるものではありません。
むしろ、その先から始まります。
32種類のレシピは、完成された32個の答えというよりも、
そこから自由に枝を伸ばしていくための、32個の入口。
そんなふうに考えて作っています。
■一つのレシピから、いくつもの景色が広がっていく
例えば、一つの焼き菓子を覚えたとします。
テキストには、その基本となる作り方だけを載せて終わり、という構成にはしていません。
そこからどんなアレンジができるのか。
別のハーブではどうなのか。
手元に指定されたハーブがない場合、どんなハーブへ置き換えて考えられるのか。
そうした派生の考え方や、実際のアレンジレシピについても掲載しています。
つまり、
「このレシピには、このハーブを使わなければいけない」
という覚え方ではありません。
基本となる一つのお菓子を作りながら、
「では、こちらのハーブに変えたらどうなるだろう」
「こんな香りなら、この生地にも合いそうだな」
「今あるハーブを使うなら、こんな組み合わせも楽しそう」
と、少しずつ考えられるようになっていく。
そこまで含めて、一つのレシピです。
私は、これをハーブスイーツで「遊べる」ようになることだと思っています。
■レシピを覚えることが、目的ではありません
お菓子作りを学ぶとき、最初はどうしてもレシピ通りに作ります。
材料を量り、順番を確認して、温度や時間を守る。
もちろん、それはとても大切です。
まず基本となる形を知るからこそ、その後の応用があります。
けれど、いつまでもレシピを一字一句追い続けなければ何も作れないとしたら、それは少しもったいないようにも思います。
私たちが講座の先に思い描いているのは、テキストを開かなければ作れない人ではありません。
テキストを何度も読み、実際に焼き、アレンジも試していくうちに、少しずつ自分の中へ考え方が入っていくこと。
そしていつか、
「今日はこれを焼いてみようかな」
と、自分で組み立てられるようになることです。
その日の季節。
手元にあるハーブ。
食べてもらう人。
自分が今、食べたい味。
そんなものを眺めながら、自分なりのハーブスイーツを考えていく。
そこまで行けば、32種類という数字そのものは、もうあまり重要ではなくなります。
■32種類の、その先にあるもの
私が好きなのは、むしろこちらです。
32種類を学んだ、その先。
そこには、テキストにも私たちにも分からないハーブスイーツが待っています。
なぜなら、作る人が違うからです。
住んでいる場所も違います。
育てているハーブも違います。
好きな味も違います。
家族の好みも違います。
季節も、その日の気分も違います。
同じ基本を学んでも、そこから何を作っていくのかは、一人ひとり違って当然です。
ですから、講座を修了した方が将来どんなハーブスイーツを焼いているのか、私たちにも分かりません。
私は、それがとても豊かなことだと思っています。
こちらが用意した32種類だけを、ずっと繰り返していただきたいわけではありません。
むしろ、
「そんな組み合わせを思いついたんですね」
「そんなハーブスイーツになったんですね」
と、私たち自身が驚かされるくらいがいい。
教える側が用意した世界よりも、学んだ人たちがその先に作っていく世界のほうが大きくなっていく。
文化というものは、本来そうやって育っていくのではないでしょうか。
■代用ハーブを載せているのにも理由があります
テキストの中で代用できるハーブについて触れているのも、この考え方の一つです。
「このハーブがないから作れない」
ではなく、
「では、別のハーブならどうだろう」
と考えられるようになってほしいからです。
もちろん、ハーブなら何でも置き換えればよいわけではありません。
香りも味も、それぞれ違います。
だからこそ、実際に作りながら、
似ているところ。
違うところ。
お菓子に入れたときの表情。
そんなものを一つずつ知っていきます。
そうすると、いつしかレシピの文字だけを見るのではなく、その向こう側にある素材を見るようになります。
これは製菓を長く続けていくうえでも、とても大切な感覚です。
■「作り方」から「考え方」へ
最初は、
「どうやって作るんだろう」
から始まります。
それが少しずつ、
「なぜ、このハーブなんだろう」
へ変わる。
そして、
「別のハーブならどうだろう」
になり、
やがて、
「私は今日は、こんなお菓子を作ってみたい」
へ変わっていく。
この変化を、私たちは大切にしています。
レシピを増やし続ければ、100種類でも200種類でも掲載することはできるかもしれません。
けれど、私たちが目指しているのは、たくさんの完成レシピを暗記してもらうことではありません。
限られた基本から、自分自身で世界を広げていけること。
だから、分かりやすく、作りやすく、そしてアレンジへ進みやすい形になるよう、テキストを組み立てています。
32種類のレシピは、そのための共通言語のようなものなのかもしれません。
■趣味でも、仕事でも、「自分で作れる」という豊かさ
これは、趣味として楽しむ方にも、いつか仕事へ活かしたい方にも同じです。
趣味なら、
庭のハーブを摘んで、その日の気分でお菓子を考える。
季節が変われば、使うハーブも変えてみる。
家族の好きな味へ少し寄せてみる。
そんな自由が生まれます。
仕事として活かす場合にも、覚えたレシピだけを販売するのではなく、自分のお店、自分の教室、自分のお客様に合わせて考える力が必要になってきます。
そこに、その人らしさが生まれます。
同じ講座を学んだからといって、みんなが同じハーブスイーツを作る必要はありません。
むしろ、
学んだあとに、それぞれ違う世界へ進んでいけること。
それが、私たちにとっては嬉しいことです。
■32種類は、ほんの入口です
ですから、日本ハーブスイーツ協会のテキストをご覧になるとき、
「32種類のレシピが載っている」
という数字だけではなく、
その一つひとつから、さらに別のレシピへ枝が伸びていることも知っていただけたら嬉しく思います。
そして、その枝の先から、さらに自分で新しい枝を伸ばしていく。
一本が二本になり、二本が四本になり。
季節や素材、自分の好みによって、また違うお菓子が生まれていく。
そう考えると、ハーブスイーツの世界には、本当の意味での終わりはありません。
32種類の、その先。
むしろ私たちが皆さんに見ていただきたいのは、そちらの景色です。
テキストの最後のページを閉じたあと、
「さて、次は何を作ろうかな」
と考える。
冷蔵庫や戸棚をのぞき、ハーブを眺めて、
「これと、これを合わせてみようかな」
と少し楽しくなる。
そして、まだ自分でも作ったことのないハーブスイーツを焼いてみる。
私たちの講座は、そこへ辿り着くための土台でありたいと思っています。
レシピを覚えるためではなく、レシピから自由になるために。
32種類の向こう側には、自分がこれから何を焼いていくのか、自分自身にもまだ分からないくらい、豊かな世界が広がっています。
その世界で、どうぞたくさん遊んでください。
それこそが、ハーブスイーツを学ぶ楽しさの一つなのだと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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