お菓子を作る目的は、人によってさまざまです。
家族と一緒に食べるため。
自分のお茶の時間を楽しむため。
友人へ手渡すため。
そして、カフェでお客様に提供するため。
同じお菓子作りでも、どこで、誰に届けるのかによって、考え方は少し変わってきます。
今回は、カフェで出すお菓子と、自宅で楽しむお菓子の違いを、やさしく考えてみます。
〜自宅のお菓子は、その日の気分を大切にできます〜
自宅で楽しむお菓子には、自由があります。
今日は少し甘さを控えよう。
庭のハーブが元気だから使ってみよう。
冷蔵庫にある果物を合わせてみよう。
そんなふうに、その日の気分や手元にある材料から作ることができます。
少しくらい形が違っても、
「今日はこんな感じになったね」
と楽しめます。
焼きたてをすぐ食べることもできますし、家族の好みに合わせて味を変えることもできます。
自宅のお菓子は、暮らしの中に寄り添う柔らかさを持っています。
〜カフェのお菓子は、「いつ来てもおいしい」が大切です〜
一方、カフェで提供するお菓子には、安定感が求められます。
今日食べたお客様にも。
来週食べるお客様にも。
できるだけ同じおいしさを届ける必要があります。
味。
食感。
大きさ。
焼き加減。
香り。
盛り付け。
こうしたものを毎回大きく変えずに作ることが大切になります。
自宅なら、その日の偶然も楽しめます。
カフェでは、その偶然をできるだけ少なくしながら、お客様に安心して選んでもらえるお菓子へ整えていきます。
〜カフェでは、飲み物との組み合わせも考えます〜
自宅では、お菓子だけを楽しむ日もあります。
カフェでは、多くの場合、コーヒーや紅茶、ハーブティーなどの飲み物と一緒に提供します。
そのため、
「このお菓子は、何と一緒に食べると心地いいだろう」
という視点も大切になります。
たとえば、香りの強いお菓子に、さらに個性の強い飲み物を合わせると、少しにぎやかすぎることもあります。
反対に、やさしい焼き菓子へ香りのあるお茶を合わせることで、全体がきれいにまとまることもあります。
お菓子単体ではなく、ひとつのお茶時間として考える。
これは、カフェならではの視点です。
〜ハーブスイーツでは「香りの分かりやすさ」も考えます〜
自宅なら、
「今日はローズマリーを少し強めにしてみようかな」
と自由に試すことができます。
けれど、カフェでは初めてハーブスイーツを食べる方もいらっしゃいます。
ハーブに慣れている方ばかりではありません。
そのため、香りを強く出せばよいというより、
「食べたときに自然においしいと感じてもらえるか」
という視点が大切になります。
ハーブが主張しすぎず、お菓子の中にきれいになじんでいる。
けれど、食べたあとには、
「あ、いい香りだな」
と感じてもらえる。
そんなバランスを考えることも、カフェで提供するハーブスイーツの面白さです。
〜見た目も、おいしさの一部になります〜
自宅で食べるお菓子なら、少しくらい不揃いでも気にならないことがあります。
むしろ、その素朴さが楽しいこともあります。
カフェでは、お客様がまず目でお菓子を見ます。
ショーケースに並んでいる姿。
お皿に盛られた姿。
テーブルへ運ばれてきた瞬間。
そこから、もうお菓子を味わう時間は始まっています。
だからといって、華やかに飾る必要があるわけではありません。
シンプルな焼き菓子でも、丁寧に焼かれ、きれいに盛り付けられていれば十分魅力的です。
そのお店らしい見せ方を考えることが大切です。
〜提供するまでの時間も考える必要があります〜
自宅では、オーブンから出したばかりのスコーンをそのまま食べることができます。
まだ温かいうちに食べられるのは、家庭のお菓子の大きな魅力です。
カフェでは、作ったお菓子を一定時間保管してから提供することもあります。
そのため、
時間が経ったときに食感はどうなるか。
香りはどう変わるか。
盛り付けたときに状態を保てるか。
ということも考えます。
作った瞬間だけおいしいのではなく、お客様へ届く瞬間までおいしいこと。
ここも、自宅とカフェの大きな違いのひとつです。
〜原価や作業のしやすさも大切になります〜
自宅では、
「今日は少し高価な材料を使ってみよう」
という楽しみ方もできます。
カフェでは、おいしさだけでなく、継続して提供できるかどうかも考えます。
材料を安定して仕入れられるか。
仕込みに時間がかかりすぎないか。
価格とのバランスが取れているか。
忙しい営業の中でも提供しやすいか。
こうした部分まで含めて、一つのお菓子を考えていきます。
〜自宅には自宅の、カフェにはカフェの豊かさがあります〜
ここまで比べると、カフェのお菓子作りのほうが難しく感じるかもしれません。
けれど、優劣の話ではありません。
自宅のお菓子には、
その日の気分で作る自由。
家族と一緒に食べる楽しさ。
焼きたてを味わえる幸せ。
があります。
カフェのお菓子には、
知らない誰かに届ける喜び。
お店の空間と一緒に味わってもらう楽しさ。
また食べたいと思ってもらえる嬉しさ。
があります。
どちらにも、それぞれの良さがあります。
もし、自宅で楽しんでいたハーブスイーツを、
「いつかカフェで出してみたい」
と思うようになったなら、
まずはお菓子を大きく変える必要はないと思います。
誰に食べてもらいたいのか。
どんな飲み物と合わせたいのか。
どんな時間を過ごしてほしいのか。
そんなところから少しずつ考えてみる。
その先に、自宅のお菓子とはまた違った、誰かへ届けるハーブスイーツの世界が広がっていきます。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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