お菓子作りが好きで続けていると、
「家庭で作るお菓子と、プロが作るお菓子は何が違うんだろう」
と思うことがあります。
使う材料でしょうか。
技術でしょうか。
道具でしょうか。
もちろん、それらも違いのひとつです。
けれど、長くお菓子作りに携わっていると、一番大きな違いは「何のために作るのか」にあるように感じます。
今回は、家庭のお菓子作りとプロのお菓子作りの違いを、やさしく比べてみます。
〜家庭のお菓子は、「今日のおいしい」が大切です〜
家庭で作るお菓子には、とても自由なところがあります。
今日は少し甘さを控えよう。
家にある果物を入れてみよう。
庭のローズマリーが元気だから、少し摘んでスコーンに使ってみよう。
そんなふうに、その日の気分や家にある材料に合わせて作ることができます。
形が少しくらい不揃いでも、
「おいしいね」
と家族で食べられれば、それで十分なこともあります。
焼きたてをそのまま食卓へ持っていけるのも、家庭のお菓子ならではの贅沢です。
〜プロのお菓子には「同じものを届ける」責任があります〜
一方、販売するお菓子には再現性が求められます。
昨日買ってくださったお客様と、今日買ってくださったお客様。
どちらにも、できるだけ同じ品質のお菓子を届けなければなりません。
味。
大きさ。
焼き色。
食感。
香り。
見た目。
ひとつひとつを安定させる必要があります。
たまたま一度おいしく作れるだけではなく、何度作っても一定の仕上がりになること。
これは、プロのお菓子作りにとって大切な要素です。
〜作る量が変わると、お菓子作りの考え方も変わります〜
家庭では、クッキーを20枚焼く。
マフィンを6個作る。
そんな量が一般的です。
けれど仕事になると、同じお菓子を数十個、数百個と作ることもあります。
量が増えると、単純に材料を何倍かすればよいとは限りません。
混ぜ方。
生地の温度。
作業時間。
オーブンへの入れ方。
焼成の順番。
そうした細かな部分も変わってきます。
大量に作っても品質を保てるように、工程そのものを考える必要があります。
〜プロは「時間」も材料のひとつとして考えます〜
家庭のお菓子作りなら、
「今日はゆっくり作ろう」
という日があってもいいと思います。
途中でお茶を飲んだり、家族と話したり。
それも楽しい時間です。
仕事として作る場合は、限られた時間の中で複数のお菓子を仕上げなければなりません。
この生地を休ませている間に、次の仕込みをする。
オーブンが空く時間に合わせて、次の生地を用意する。
冷却している間に包装を進める。
お菓子作りそのものだけでなく、作業全体の流れを見る必要があります。
〜材料の選び方にも違いがあります〜
家庭では、
「今日は少し良いチョコレートを使ってみよう」
という楽しみ方ができます。
一方、販売するお菓子では、味だけでなく、
価格。
安定供給。
保存性。
作業性。
品質。
なども考えます。
どれだけおいしい材料でも、毎回仕入れられなければ商品として続けにくいことがあります。
おいしさを大切にしながら、継続して作れる形に整える。
これも仕事としてのお菓子作りには欠かせません。
〜ハーブスイーツでは、香りの安定も考えます〜
ハーブを使うお菓子では、さらに「香り」という要素があります。
同じ種類のハーブでも、収穫時期や状態によって香り方が少し違うことがあります。
家庭なら、
「今日は少し香りが強いね」
という違いも楽しめます。
けれど商品として届ける場合は、その違いを見ながら調整する必要があります。
香りを確認する。
使う量を考える。
焼いたあとにどのくらい残るかを見る。
ハーブスイーツでは、数字だけではなく、感覚を使った確認も大切になります。
〜衛生管理や保存まで考えるのがプロのお菓子作りです〜
家庭では、作ったお菓子をその日のうちに家族で食べることも多いと思います。
一方、販売する場合は、お客様がいつ食べるのかまで考える必要があります。
どのくらい保存できるのか。
どんな温度で保管するのか。
包装はどうするのか。
衛生的に作られているか。
アレルギー表示はどうするのか。
お菓子を作ったところで終わりではなく、安心して食べていただくところまでが仕事になります。
〜家庭のお菓子には、プロにはない良さもあります〜
ここまで読むと、
「やっぱりプロのお菓子のほうがすごいのかな」
と思うかもしれません。
けれど、そういうことではありません。
家庭のお菓子には、家庭のお菓子にしかない魅力があります。
子供と一緒に丸めた少し不揃いなクッキー。
庭で摘んだハーブを使ったスコーン。
焼き上がるのを待ちながら飲むお茶。
まだ温かいうちに、家族でひとつ味見する時間。
そこには、商品としてのお菓子とは違う価値があります。
誰かのために、その場で作る。
その日の暮らしの中で食べる。
それは、とても豊かなお菓子のあり方だと思います。
〜プロのお菓子にも、家庭のお菓子にも、それぞれの役割があります〜
家庭のお菓子作りは、自由に楽しむことができます。
プロのお菓子作りは、その楽しさに加えて、再現性や安全性、効率、責任を背負います。
目的が違うから、考えることも少し変わります。
けれど、どちらにも共通していることがあります。
それは、
「誰かにおいしく食べてもらいたい」
という気持ちです。
自分のために焼くクッキー。
家族のために作るマフィン。
お客様へ届けるケーキ。
形は違っても、お菓子の向こう側には、食べる人がいます。
家庭のお菓子も、プロのお菓子も。
それぞれの場所で、それぞれの良さを大切にすればいいのだと思います。
そして、家庭で楽しんでいたお菓子作りを、いつか誰かへ届けてみたいと思ったとき。
その先には、また新しい学びの世界が広がっています。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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