慌ただしい一日の途中で、ふと甘いものが食べたくなることがあります。
仕事や家事の合間だったり、少し疲れた午後だったり。
そんなときに、小さな焼き菓子と温かい飲み物があるだけで、気持ちが少しゆるむことがあります。
ハーブスイーツには、そこにもうひとつ、「香り」という楽しみがあります。
たとえば、カモミールのやわらかな香り。
ローズマリーのすっと澄んだ香り。
レモンバームやミントの爽やかな香り。
お菓子を口に運ぶ前から、香りがふわりと届いてきます。
その瞬間、知らないうちに少し呼吸が深くなることがあります。
もちろん、ハーブスイーツを食べれば何か特別なことが起こる、というお話ではありません。
ただ、香りを感じるためには、一瞬だけ手を止める必要があります。
「いい香りだな」
そう思うほんの数秒だけでも、意識が目の前へ戻ってきます。
忙しい日常の中では、こうした小さな間を持つことは、案外少ないものです。
ハーブスイーツを作る時間にも、似たところがあります。
ドライハーブの袋を開ける。
庭のハーブを少し摘む。
葉を刻む。
粉と混ぜる。
オーブンから漂ってくる香りを待つ。
一つひとつは、ごく普通のお菓子作りの動作です。
けれど、そこにハーブの香りが加わることで、いつもの台所が少しだけ違って感じられます。
「今日は、よく香っているな」
そんな小さなことに気づける時間があります。
それだけでも十分なのだと思います。
私たちは、ハーブスイーツを暮らしの中で楽しむことを、何か難しいものだとは考えていません。
特別な日にだけ作るものでもなく、上手に作らなければならないものでもありません。
いつものクッキーに少しハーブを加えてみる。
紅茶と一緒に、小さな焼き菓子を味わってみる。
庭にあるハーブを眺めながら、「今度これで何か焼いてみようかな」と考える。
そんなところから始まります。
暮らしを豊かにするものは、必ずしも大きな出来事ではありません。
いつもの午後に好きな香りがあること。
焼き上がったお菓子をまだ少し温かいうちに食べること。
家族と「これ、おいしいね」と話すこと。
一人で静かに味わうこと。
そうした小さな時間が積み重なって、日々の景色を少しずつ変えていきます。
ハーブスイーツのある暮らしで、呼吸が少し深くなるように感じるのは、もしかするとハーブそのものだけが理由ではないのかもしれません。
香りに気づくこと。
手を動かすこと。
待つこと。
味わうこと。
そして、自分が今ここにいることに、ほんの少し気づくこと。
ハーブスイーツは、そんな時間を暮らしの中へ連れてきてくれるものなのだと思います。
忙しい日は、忙しいままでいい。
何も特別なことをしなくてもいい。
ただ、ときどき小さなお菓子を焼いて、香りの中でひと息つく。
そんな時間が暮らしのどこかにあれば、それだけで少し嬉しいものです。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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