【お菓子を作り続けて思うこと】結局、私が一番好きだったのは、お菓子ではなく暮らしでした

2026年07月20日 18:06
日本ハーブスイーツ協会

長い間お菓子を作り続けてきました。

振り返れば、本当にたくさんのお菓子を焼いてきました。

新しいレシピに挑戦した日。

思いどおりに焼けて嬉しかった日。

失敗して落ち込んだ日。

その一つひとつが、今では静かな思い出になっています。

でも30年という時間を歩いてきて、一つだけ、はっきりと分かったことがあります。

私は、お菓子そのものが一番好きだったわけではありませんでした。

〜好きだったのは、台所に流れる時間でした〜

粉を量る音。

ボウルを混ぜる手の感覚。

オーブンの中で少しずつ色づいていく焼き菓子。

部屋いっぱいに広がる甘い香り。

そのどれもが、お菓子を作るためだけの時間ではありませんでした。

私にとっては、暮らしを取り戻す時間でもありました。

〜お菓子は、人を急がせません〜

仕事には締め切りがあり、

生活には予定があります。

世の中は、いつも少し急いでいます。

でも、お菓子は違います。

オーブンの前では、待つしかありません。

生地は、急かしても早く焼けてはくれません。

私は、その「待つ時間」に何度も救われてきました。

〜ハーブは、もっとゆっくりでした〜

ハーブと出会ってから、その思いはさらに深くなりました。

植物は、思いどおりには育ちません。

季節を待ちます。

雨を受け入れます。

風に揺れます。

その姿を見ているうちに、私も「急がなくてもいい」と思えるようになりました。

だからハーブスイーツは、お菓子である前に、暮らし方を教えてくれる存在になりました。

〜お客様が教えてくださったこと〜

お客様とお話ししてきて、一番心に残っているのは、お菓子の感想ではありません。

「今日は家族とゆっくり話せました。」

「焼きたてを食べながら笑いました。」

「なんだか心が落ち着きました。」

そんな言葉でした。

そのたびに私は、お菓子が届けているのは甘さではなく、時間なのだと教えられました。

〜昔の私は、知らなかったこと〜

以前の私は、おいしいお菓子を作ることだけを考えていました。

でも今は違います。

お菓子は、暮らしの真ん中にあるものではありません。

暮らしをやさしく照らす、小さな灯りのような存在です。

だから、完璧でなくてもいい。

少し形が違ってもいい。

そのお菓子を囲んで笑える時間があるなら、それだけで十分だと思えるようになりました。

〜私はおそらく、これからも焼き続けます〜

毎日毎日お菓子を作り続けてきました。

そして、これからもきっと焼き続けるのだろうと思います。

誰かに認めてもらうためだけではありません。

もっと上手になるためだけでもありません。

台所へ立つと、心が少し静かになるからです。

焼き上がる香りを吸い込むと、「今日も悪くない一日だった」と思えるからです。

家族とお茶を飲みながら、「おいしいね」と笑える時間が好きだからです。

結局、私が30年間で一番好きになったのは、お菓子ではありませんでした。

お菓子を通して育っていった暮らしでした。

だから今日も、私は静かにオーブンの扉を開けます。

その先にある穏やかな時間を、これからも大切に育てていきたいと思っています。


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