旅をするハーブスイーツ『エルダーフラワーとイチゴのマフィン』

2026年04月17日 03:54
日本ハーブスイーツ協会の、エルダーフラワーとイチゴのマフィン

『エルダーフラワーとイチゴのマフィン』

ころんと丸いマフィンの表面から、真っ赤なイチゴが顔を覗かせています。
焼き色がついた生地の中には、細かくミルしたドライエルダーフラワーをたっぷりと練り込みました。

今回は、このお菓子に使われているエルダーフラワーが、遠い異国の地でどのように愛され、人々の暮らしに溶け込んでいるのか、その文化や地域性について少しお話しさせてくださいね。
北欧やイギリス、そして中欧の初夏を彩るものといえば、透き通るような白い花を咲かせるエルダーの木です。
マスカットのような甘く爽やかな香りを漂わせるこの花は、ヨーロッパの人々にとって、単なる植物以上の、家族のような親しみ深い存在でもあります。

例えば、イギリスの田舎道を歩けば、生け垣のあちこちにこの白い花がこんもりと咲いている風景に出会います。
風が吹くたびに優しく揺れるその姿は、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだかのようです。
そんな土地の家庭では、初夏になるとカゴを片手にエルダーの花を摘みに行くのが、古くからの楽しみの一つです。

摘んできた花は、砂糖やレモンと一緒に漬け込んで「コーディアル」と呼ばれるシロップに仕立てられます。
キッチンの窓辺に並んだ瓶の中で、花のエキスがゆっくりと溶け出していく時間は、その家ごとの穏やかな季節の儀式。
出来上がったシロップを冷たい水で割って、庭の木陰で家族と語らいながら喉を潤す。
そんな光景が、あちこちの食卓で見受けられます。

また、北欧の短い夏を祝福する祝祭の日にも、エルダーフラワーは欠かせません。
厳しい冬を乗り越えた人々にとって、この花の香りは「命の輝き」そのもの。
食卓には花を浮かぜた飲み物や、香り高い焼き菓子が並び、村中が幸せな香りに包まれます。

特別な日のごちそうというよりも、厳しい自然の中で生きる人々が、自然からの贈り物を大切に享受する、慎ましくも豊かな暮らしの象徴なのです。

そんな遠い異国の庭先で愛されてきた香りが、今、目の前にあるこのマフィンの中に息づいています。
オーブンから漂う甘い香りは、かつて誰かがどこかの国のキッチンで感じた幸せな時間と、どこか地続きのような気がしてきませんか。
忙しい日本の日常の中でも、ハーブの力を借りることで、私たちは一瞬にして風の抜ける草原や、穏やかなテラスの椅子へと心を運ぶことができます。

遠い土地で育まれた文化が、現代の私たちの暮らしに優しく寄り添い、ホッと一息つく瞬間に彩りを添えてくれる。
イチゴの甘酸っぱさとエルダーフラワーの清々しい香りが混ざり合うこのマフィンを頬張りながら、ぜひ、その背景にある豊かな物語にも想いを馳せてみてくださいね。
ひとくちごとに、心が旅をするような、そんな穏やかなティータイムになりますように。

詳しいレシピなどは、日本ハーブスイーツ協会の『ハーブスイーツマイスター講座』のホームページにてご紹介しています。

このハーブスイーツの『ハーブスイーツに使う、それぞれのハーブの歴史』についての過去記事はこちら。
https://www.herbsweets-japan.com/blog/171910/





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■まず最初に、全体像を静かに辿りたい方はこちら▼
https://www.herbsweets-japan.com/blog/173534/

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