お菓子作りでは、ハーブもフルーツもよく使われます。
どちらも植物から生まれる素材です。
香りがあり、季節を感じさせてくれることもあります。
そのため、
「ハーブとフルーツって、お菓子の中ではどんな違いがあるの?」
と考えることがあるかもしれません。
もちろん、ひとことで分けられるものではありません。
ハーブにもさまざまな種類があります。
フルーツにも、甘いもの、酸味の強いもの、香りの華やかなものがあります。
それでも、お菓子に使ったときには少し違った役割が見えてきます。
フルーツは、甘味や酸味、水分、食感までお菓子全体へ影響しやすい素材です。
一方、ハーブは、少量でも香りや余韻を加え、お菓子の印象を変えることがあります。
今回は、ハーブとフルーツをお菓子にしたときの違いを、やさしく比較してみたいと思います。
〜フルーツは「味そのもの」を大きく作ることがあります〜
たとえば、いちごのマフィン。
りんごのケーキ。
オレンジのタルト。
ブルーベリーの焼き菓子。
フルーツを使うと、その果物の甘味や酸味、水分、果肉の食感までお菓子の中に入ります。
ひと口食べた瞬間に、
「りんごだ」
「いちごだ」
と分かることも多いでしょう。
フルーツそのものが、お菓子の味の中心になることがあります。
〜ハーブは「香り」で印象を変えることが多い素材です〜
一方、ハーブはフルーツほど大量に使わないことが多いものです。
ローズマリー。
カモミール。
ミント。
ローズ。
レモンバーム。
ほんの少し加えるだけでも、お菓子の香りが変わります。
たとえば、いつものスコーンにローズマリーを少し。
味の土台は、バターや小麦、砂糖です。
そこへローズマリーの清々しい香りが加わります。
ハーブは、お菓子そのものを別の味へ置き換えるというより、
「いつものお菓子に、新しい香りの層を加える」
ような使い方ができます。
〜フルーツには、甘味と酸味があります〜
フルーツをお菓子へ使うとき、大きな特徴になるのが甘味と酸味です。
いちごの甘酸っぱさ。
レモンの酸味。
りんごのやさしい甘さ。
オレンジの明るい風味。
これらは、お菓子全体の味のバランスに直接影響します。
砂糖の量を考えたり。
酸味との釣り合いを見たり。
果物の水分を考えたり。
フルーツは、味だけでなく配合にも関わる素材です。
〜ハーブは、甘味や酸味よりも香りの存在感が中心です〜
ハーブにも苦味や青さなどの味があります。
けれど、お菓子に少量使う場合には、まず香りとして感じられることが多いでしょう。
カモミールなら穏やかに。
ローズマリーならきりっと。
ミントなら爽やかに。
ローズなら華やかに。
甘さそのものを大きく変えなくても、食べたときの印象は変わります。
同じ配合のクッキーでも、ハーブが変わるだけで別のお菓子のように感じることがあります。
〜フルーツは「見た目」にも表れやすい素材です〜
フルーツを使ったお菓子は、見た目から分かりやすいことがあります。
赤いいちご。
紫色のブルーベリー。
橙色のオレンジ。
りんごの果肉。
切ったときに果物が見えるだけでも、お菓子の印象が変わります。
色や形そのものが、お菓子の魅力になります。
〜ハーブは、見た目より香りで気づくこともあります〜
ハーブも葉や花を残せば見た目に表れます。
けれど、細かくして生地へ混ぜたり、牛乳やクリームへ香りを移したりすると、見た目だけでは分からないこともあります。
普通のクッキーに見える。
ひと口食べる。
すると、
「あ、何か香る」
と気づく。
ハーブには、そんな少し控えめな入り方もあります。
〜フルーツは食感も楽しめます〜
果肉のあるフルーツは、食感もお菓子の一部になります。
りんごのしゃくっとした部分。
いちごのやわらかさ。
ドライフルーツの噛み応え。
ジャムのとろりとした感じ。
焼いた果物のしっとり感。
味だけでなく、口の中で感じる変化があります。
〜ハーブは、食感を目立たせすぎない使い方もできます〜
ハーブをそのまま生地へ入れる場合、葉や花の食感が残ることがあります。
そのため、細かく刻む。
ミルで細かくする。
液体へ香りを移してから漉す。
そんな方法もあります。
ハーブスイーツでは、
「葉を食べている」
という印象より、
「香りが自然に広がる」
ように工夫することがあります。
もちろん、見た目や食感を活かしてそのまま使う方法もあります。
〜フルーツは水分を持っています〜
お菓子作りでは、フルーツの水分も大切です。
生の果物を加えると、生地へ水分が入ります。
ジャムなら糖分と水分。
ドライフルーツなら、水分が少なく凝縮した味。
同じ果物でも状態によって違います。
そのため、フルーツを増やすときには、単純に量だけを増やせないことがあります。
お菓子の焼き上がりそのものに影響するからです。
〜ハーブは少量でも全体の印象を変えられます〜
ハーブの特徴のひとつは、少ない量でも香りが広がることです。
ローズマリーをほんの少し。
カモミールを少し。
ミントの葉を数枚。
それだけで、生地全体の印象が変わることがあります。
だからこそ、初心者の方は少量から始めるのがおすすめです。
フルーツのようにたっぷり入れて存在感を出すというより、
「どのくらい香らせるか」
を考える素材です。
〜フルーツだけでも、お菓子は完成します〜
いちごのショートケーキ。
りんごのタルト。
レモンケーキ。
ブルーベリーマフィン。
フルーツそのものを中心にしたお菓子はたくさんあります。
果物だけで、十分に香りや味の主役になります。
〜ハーブは「組み合わせることで見えてくる」ことがあります〜
ハーブも主役になることはありますが、ほかの素材と組み合わせることで魅力が分かりやすくなることがあります。
カモミールとりんご。
ローズマリーとオレンジ。
ミントとチョコレート。
ローズとベリー。
ハーブ単体では想像しにくい香りも、知っている素材と組み合わさることで、
「なるほど、こういうおいしさなんだ」
と分かります。
〜ハーブとフルーツは、実はとても相性のよい組み合わせです〜
違いはありますが、ハーブとフルーツは対立する素材ではありません。
むしろ、一緒に使うことでお互いを引き立てることがあります。
果物の甘味や酸味。
ハーブの香り。
この二つが重なることで、お菓子に奥行きが生まれます。
たとえば、りんごだけでもおいしいマフィン。
そこへ少量のカモミール。
すると、りんごのやさしい香りにもうひとつ穏やかな香りが加わります。
〜柑橘とハーブは、爽やかさを重ねやすい組み合わせ〜
レモン。
オレンジ。
グレープフルーツ。
こうした柑橘は、ハーブと合わせやすい素材です。
ローズマリーとオレンジ。
レモンバームとレモン。
ミントとグレープフルーツ。
それぞれに爽やかさがあります。
似た方向の香りが重なることで、全体の印象が分かりやすくなることがあります。
〜ベリーと花の香りを合わせると、華やかになります〜
いちご。
ラズベリー。
ブルーベリー。
こうしたベリー類には、ローズなどの華やかな香りを合わせる方法があります。
果物の甘酸っぱさ。
花の香り。
色合いも華やかです。
お菓子らしい甘さの中に、少し特別な香りが加わります。
〜りんごとカモミールは、やさしい組み合わせ〜
りんごの穏やかな甘さと、カモミールのやわらかな香り。
この二つは、どちらかが強く主張するというより、自然になじみやすい組み合わせです。
マフィン。
パウンドケーキ。
クッキー。
いろいろな焼き菓子で楽しむことができます。
初めてハーブとフルーツを合わせる方にも、イメージしやすい組み合わせでしょう。
〜フルーツが主役、ハーブが脇役でもいい〜
ハーブスイーツだからといって、ハーブを一番強く感じさせなければならないわけではありません。
たとえば、いちごのマフィン。
主役はいちご。
そこへエルダーフラワーやローズをほんの少し。
果物のおいしさを残しながら、香りに少し奥行きを加える。
そんな使い方もできます。
ハーブは、主役でなくても十分に仕事をしてくれます。
〜反対に、ハーブを主役にしてフルーツを支えにすることもできます〜
ローズの香りをしっかり楽しみたい。
そんなときには、ベリーを少し添える。
ローズマリーの香りを中心にしたスコーンへ、オレンジを少し合わせる。
こうすると、フルーツがハーブを支える側になります。
どちらを主役にするかで、お菓子の組み立て方も変わります。
〜同じフルーツでも、合わせるハーブで印象が変わります〜
たとえば、りんご。
カモミールを合わせれば穏やかに。
ローズマリーを合わせれば、少しきりっと。
ミントを使えば、また違った爽やかさになります。
フルーツが同じでも、ハーブを変えるだけで方向が変わります。
これも、ハーブを使うおもしろさです。
〜同じハーブでも、フルーツを変えると表情が変わります〜
反対に、同じハーブを使っていても、フルーツによって印象は変わります。
カモミールとりんご。
カモミールとオレンジ。
カモミールといちご。
同じカモミールでも、それぞれ違うお菓子になります。
ひとつのハーブを知るために、合わせるフルーツを変えてみる。
そんな楽しみ方もできます。
〜初心者なら、まずフルーツを主役にしてみる〜
ハーブスイーツを初めて作る場合には、知っているフルーツを主役にすると作りやすくなります。
いつものりんごマフィン。
そこへ少量のカモミール。
いつものオレンジスコーン。
そこへローズマリーを少し。
いつものチョコレート菓子にミント。
知っている味の中へ、新しい香りをひとつ加える。
このくらいから始めると、ハーブの違いが分かりやすくなります。
〜ハーブとフルーツでは「量の感覚」も違います〜
フルーツは、お菓子の中へある程度まとまった量を入れることがあります。
一方でハーブは、少量から調整することが多い素材です。
同じ植物だからといって、同じ感覚で使うわけではありません。
いちごを何粒も使うような感覚でローズマリーを入れてしまえば、香りが強くなりすぎることがあります。
それぞれの素材には、それぞれの使い方があります。
〜季節を感じさせる方法にも違いがあります〜
フルーツは、旬によって季節を感じやすいものです。
春のいちご。
秋のりんご。
冬の柑橘。
見るだけでも季節を連想できます。
ハーブの場合には、
庭で育つ姿。
摘んだときの香り。
季節ごとに感じる爽やかさや温かさ。
そうしたところから季節を感じることがあります。
両方を合わせると、季節のお菓子はさらに広がります。
〜どちらが優れているというものではありません〜
ハーブとフルーツ。
どちらがお菓子に向いているという関係ではありません。
フルーツには、甘味、酸味、水分、色、食感があります。
ハーブには、少量でも印象を変える香りがあります。
それぞれ役割が違います。
だからこそ、一緒に使う楽しさがあります。
〜違いを簡単にまとめると〜
お菓子にしたときの違いを簡単に整理すると、
フルーツは、
「甘味や酸味、水分、食感、色、香りなどを通して、お菓子の味そのものを大きく作りやすい素材」。
ハーブは、
「少量でも香りや余韻を加え、お菓子全体の印象を変えやすい素材」。
と考えると分かりやすいでしょう。
もちろん、すべてのフルーツやハーブが同じではありません。
けれど、お菓子作りの入口としては、この違いを知っておくと組み合わせを考えやすくなります。
〜ハーブとフルーツを一緒にすると、お菓子の世界はもっと広がります〜
ハーブとフルーツは、似ているところもあれば違うところもあります。
フルーツをひと口食べれば、甘さや酸味、果汁を感じます。
ハーブは、食べている途中やあとから、ふっと香ることがあります。
ひとつは味や食感まで大きく作る素材。もうひとつは、香りで印象を変えてくれる素材。
そんな二つを合わせる。
りんごにカモミール。
オレンジにローズマリー。
ベリーにローズ。
グレープフルーツにミント。
知っている果物の中へ、少しだけ新しい香りを加えてみる。
すると、
「いつものお菓子なのに、少し違う」
という瞬間が生まれます。
ハーブとフルーツの違いを知ることは、どちらかを選ぶためではありません。
それぞれのよさを知って、組み合わせを楽しむため。
そんなふうに考えてみると、ハーブスイーツの世界はまた少し広がっていくのだと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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