ハーブスイーツを作ることが好きになってくると、あるとき、
「このまま自宅で楽しむだけでもいいのかな」
「誰かに食べてもらうところまで広げてみてもいいのかな」
そんなことを考えることがあります。
家族のために焼く。
自分のお茶の時間に楽しむ。
それだけでも十分に豊かな時間です。
一方で、
「このお菓子を誰かにも届けてみたい」
「ハーブの香りのおもしろさを、もっと人に知ってもらいたい」
という気持ちが生まれることもあります。
どちらが正しいということではありません。
大切なのは、自分がどんな形なら心地よく続けられるのかを考えることです。
今回は、自宅で楽しむことと、誰かに届けること。
その小さな分かれ道について、やさしく考えてみたいと思います。
〜自宅で楽しむだけでも、十分に価値があります〜
お菓子作りを続けていると、
「せっかく上手になったのだから、何かに活かしたほうがいいのかな」
と思うことがあります。
けれど、必ずしも仕事や販売につなげる必要はありません。
自分のために焼く。
家族のために焼く。
季節のハーブを使って、ゆっくりお茶の時間を楽しむ。
それだけでも、お菓子作りには十分な意味があります。
誰かに評価されなくてもいい。
売上にならなくてもいい。
好きだから作る。
その時間が楽しいから続ける。
趣味には、そうした自由があります。
そして、その自由さはとても大切です。
「誰かに届けたい」と思う気持ちも自然です
一方で、作り続けていると、
「これを誰かにも食べてもらいたいな」
と思うことがあります。
家族以外の人に。
友人に。
地域の人に。
教室に来てくれる人に。
自分のことをまだ知らない誰かに。
そんな気持ちが芽生えることがあります。
それも、とても自然なことです。
お菓子は、誰かと分け合いやすいものです。
「おいしかったよ」
と言ってもらえるとうれしい。
「この香り、何?」
と興味を持ってもらえるとうれしい。
そうした小さなやり取りが、次のお菓子作りにつながることもあります。
〜まずは「なぜ届けたいのか」を考えてみる〜
誰かに届けてみたいと思ったら、一度だけ立ち止まって、
「私は、なぜ届けたいのだろう」
と考えてみるのもよいでしょう。
喜んでもらいたい。
自分の作ったものを知ってほしい。
ハーブスイーツの楽しさを伝えたい。
お菓子を仕事にしてみたい。
人とつながりたい。
自分の経験を活かしたい。
理由はいろいろあります。
どれが正しいということではありません。
ただ、自分の気持ちが少し分かると、次に何をすればよいのかも見えやすくなります。
〜「届ける」は販売だけではありません〜
誰かに届けるというと、
「お菓子を売る」
ことを思い浮かべるかもしれません。
けれど、届け方はそれだけではありません。
作り方を教える。
レシピを紹介する。
文章を書く。
写真で伝える。
ハーブについて学んだことを共有する。
誰かと一緒にお菓子を作る。
こうした形でも、ハーブスイーツの楽しさを人へ届けることができます。
作ったお菓子そのものを届ける人。
知識を届ける人。
時間を届ける人。
楽しみ方を届ける人。
いろいろな形があってよいのです。
〜家族や友人に食べてもらうことから始めてもいい〜
いきなり大勢の人へ届ける必要はありません。
まずは身近な人に食べてもらうところからでも十分です。
「ちょっと作ってみたんだけど、食べてみる?」
そんな気軽なところから始まります。
そして、
「このくらいの香りが好き」
「私はもう少し控えめでもいいかな」
「この組み合わせ、おもしろいね」
そんな感想を聞く。
自分だけで食べていたときには気づかなかったことが見えてきます。
誰かに届けるというのは、自分以外の感覚に触れることでもあります。
〜誰かに届けると、少しだけ視点が変わります〜
自分のためだけに作るときは、
「自分がおいしいと思えばいい」
という自由があります。
けれど、誰かに届けるとなると、少し視点が変わります。
相手は食べやすいだろうか。
香りは強すぎないだろうか。
保存は大丈夫だろうか。
材料について分かりやすく伝えられるだろうか。
渡すタイミングはどうだろう。
自分だけではなく、相手のことを考えるようになります。
この変化は、お菓子作りをまた一段深くしてくれます。
〜ハーブスイーツでは「香りの好み」も意識する〜
ハーブスイーツは、香りの個性があるお菓子です。
自分にはちょうどよくても、別の人には少し強く感じられることがあります。
ローズマリーの青々しさ。
ミントの爽やかさ。
ローズの華やかさ。
カモミールの穏やかさ。
香りには好みがあります。
だから、誰かに届けるときには、
「自分がおいしいと思うか」
だけではなく、
「初めて食べる人にも受け入れやすいか」
という視点も持ってみます。
少し控えめにする。
身近な果物と合わせる。
分かりやすい焼き菓子にする。
そんな工夫で、ハーブスイーツの入口をやさしくすることもできます。
〜趣味と「届けること」の間には、いろいろな段階があります〜
自宅で楽しむか。
仕事にするか。
その二択で考える必要はありません。
その間には、たくさんの段階があります。
家族に作る。
友人に作る。
知人に頼まれて作る。
教室で伝える。
イベントに参加する。
発信する。
条件を整えたうえで販売する。
少しずつ広げていくこともできます。
「次はここまでやってみようかな」
と思えるところだけ進む。
そのくらいでもよいのです。
〜販売するなら、趣味とは違う責任が生まれます〜
もしお菓子の販売を考えるなら、そこには趣味とは違う責任があります。
食品を販売する以上、衛生管理や営業に関するルール、表示、製造環境などについて確認が必要になります。
必要な許可や届出は、販売方法や地域、施設などによって異なる場合があります。
ですから、
「少しだけだから」
「知り合いに売るだけだから」
と自己判断せず、実際に販売を始める前に、管轄する行政機関などへ確認することが大切です。
誰かに届ける喜びと同じくらい、
安心して食べてもらう責任も大切になります。
〜仕事にするなら、好きな気持ちだけでは見えない部分もあります〜
お菓子を仕事にすると、
作ること以外の仕事も増えます。
材料を仕入れる。
原価を考える。
包装する。
連絡をする。
予定を管理する。
片付ける。
発信する。
場合によっては、お客様への対応もあります。
好きなお菓子作りが、すべてそのまま仕事になるわけではありません。
だからこそ、
「作ること以外も含めて、この形を続けたいと思えるかな」
と考えてみることも大切です。
〜自宅で楽しむ自由を失いたくないなら、それも大切に〜
仕事にすると、納期や約束が生まれます。
作りたくない日にも作る必要があるかもしれません。
自分の好きなものだけではなく、相手が求めるものを考える場面も出てきます。
その変化を楽しめる人もいます。
一方で、
「私は好きなときに、好きなお菓子を焼く時間を大切にしたい」
と思う人もいます。
それなら、趣味として続けることが合っているのかもしれません。
好きなものを、好きなまま守る。
それも、とてもよい選択です。
〜誰かに届けることで見えてくる喜びもあります〜
反対に、誰かに届けることでしか得られない喜びもあります。
「また食べたい」
と言ってもらえる。
自分が考えた組み合わせを気に入ってもらえる。
ハーブに興味を持ってもらえる。
教えた人が、自宅でも作ってくれる。
そんな瞬間があります。
自分の中だけにあったものが、誰かの暮らしの中へ少し入っていく。
それは、作る人にとって大きな喜びになることがあります。
〜「届けたい相手」を想像してみる〜
迷ったときは、
「誰に届けたいのだろう」
と考えてみるのもひとつです。
小さな子どもと一緒に楽しみたい人。
家でゆっくりお茶を楽しみたい人。
ハーブが好きな人。
お菓子作りを学びたい人。
新しい香りに出会いたい人。
相手が少し見えてくると、自分が何をしたいのかも見えてくることがあります。
お菓子そのものを届けたいのか。
作る時間を届けたいのか。
学びを届けたいのか。
そこから、自分らしい形を考えていきます。
〜最初から答えを決めなくても大丈夫です〜
今は自宅で楽しむだけ。
数年後には、誰かに教えているかもしれません。
今は人に届けたいと思っている。
でも実際に始めてみたら、
「やっぱり趣味として楽しむほうが好き」
と気づくかもしれません。
それでよいのです。
暮らしも変わります。
興味も変わります。
自分自身も変わります。
一度決めたことを、ずっと守り続ける必要はありません。
「どちらが上」ではありません
自宅で楽しむ人。
誰かに届ける人。
仕事にする人。
教える人。
それぞれに違う良さがあります。
たくさんの人へ届けるから価値が高いわけではありません。
資格を持っているから、趣味より上ということでもありません。
家族のために一枚のクッキーを焼く時間も、
誰かのために教室を開く時間も、
それぞれに違う意味があります。
自分が大切にしたいものに合った形を選ぶこと。
それが、いちばん大切です。
〜迷ったら、小さく試してみる〜
頭の中だけで考えていても、分からないことがあります。
そんなときは、小さく試してみます。
友人に食べてもらう。
お菓子作りを一度一緒にしてみる。
作ったものを写真と言葉で紹介してみる。
小さなイベントへ参加してみる。
無理のない範囲で、一歩だけ外へ出してみる。
そうすると、
「これは楽しい」
「ここは少し大変」
「もっとやってみたい」
という自分の感覚が見えてきます。
分かれ道は、一度きりではありません
自宅で楽しむか。
誰かに届けるか。
その分かれ道は、一生に一度だけ現れるものではありません。
何度でも選び直すことができます。
今日は家族のために焼く。
しばらくは趣味として楽しむ。
いつか誰かに教えてみる。
また静かな時間へ戻る。
そうやって、自分の暮らしに合わせて形を変えていくこともできます。
ハーブスイーツとの関わり方も、ひとつでなくてよいのです。
〜自分が大切にしたいものから選んでみる〜
自宅で楽しむだけにするのか。
誰かに届けてみるのか。
その答えは、人によって違います。
そして、今すぐ決めなくても大丈夫です。
まずは、自分に問いかけてみます。
私は、作る時間そのものが好きなのか。
誰かに喜んでもらうことが好きなのか。
もっとハーブスイーツを伝えてみたいのか。
自分のペースを大切にしたいのか。
小さく仕事として試してみたいのか。
その答えを急がずに見ていく。
そして、
「少しやってみたいな」
と思ったら、小さく一歩だけ進んでみる。
「今はこのままが心地よいな」
と思ったら、その時間を大切にする。
どちらも、よい選択です。
大切なのは、誰かの基準ではなく、自分がハーブスイーツとどんな関係を育てていきたいか。
その気持ちを大切にしながら、自分に合った場所をゆっくり見つけてみてください。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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