『レモングラスとブルーベリーのタルト』
焼き上がりの香ばしい香りと共に、オーブンから取り出された鮮やかなブルーベリーのタルト。
このお菓子に隠し味として忍ばせたレモングラスが、どのように遠い異国で愛され、人々の暮らしに溶け込んでいるのか、その柔らかな風景を少しだけ覗いてみましょう。
レモングラスと聞くと、多くの人がタイやベトナムといった東南アジアのみずみずしい景色を思い浮かべるかもしれません。
そこは、たっぷりと降り注ぐ太陽の光と、時折激しく地面を叩くスコールが同居する、生命力にあふれた土地です。
朝靄に包まれた市場へ足を運べば、長い葉を束ねたレモングラスが、ごく当たり前の野菜として山積みになっています。
その土地の人々にとって、レモングラスは特別な日のためのハーブではなく、毎日の食卓に欠かせない、いわば「お守り」のような存在です。
湿度の高い熱帯の空気の中で、その清々しいレモンのような香りは、人々の心と体をスッと軽くしてくれるのです。
例えば、タイの家庭の台所。
お母さんが慣れた手つきでレモングラスの茎をトントンと叩き、香りを引き出して鍋に入れる様子は、日常の何気ない、けれど温かな光景です。
スープから立ち上がる蒸気には、レモングラスの爽やかさと、家族を想う優しさが混じり合っています。
また、祝祭の席でも、大きな魚や肉を蒸し上げる際の下敷きとして使われ、その香りは宴の喜びを彩る大切な役割を果たしています。
風が吹き抜ける高床式の家々で、庭先に植えられたレモングラスがサラサラと音を立てる。
そんな、植物と人が共に呼吸しているような、穏やかな時間がそこには流れています。
さて、そんな南の国の風を運んできたレモングラスを、細かくミルしてアーモンドクリームに練り込んだのが今回のタルトです。
遠い異国の家庭で愛されてきたハーブが、こうして形を変えて、現代の日本に住む私たちのティータイムへと静かにつながっています。
慌ただしい日常の中で、一口このタルトを頬張れば、ブルーベリーの甘酸っぱさの奥から、どこか懐かしくも新しい、澄んだ風が吹き抜けるのを感じられるはずです。
海を越え、時代を超えて大切にされてきた香りが、今日という日を少しだけ特別なものにしてくれます。
一杯の温かい紅茶を淹れて、レモングラスが育った遠い空に想いを馳せながら、ゆっくりとこの一皿を楽しんでいただければ幸いです。
詳しいレシピなどは、日本ハーブスイーツ協会の『ハーブスイーツマイスター講座』のホームページにてご紹介しています。
このハーブスイーツの『ハーブスイーツに使う、それぞれのハーブの歴史』についての過去記事はこちら。
https://www.herbsweets-japan.com/blog/171967/
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■まず最初に、全体像を静かに辿りたい方はこちら▼
https://www.herbsweets-japan.com/blog/173534/