お菓子を食べたとき、
「甘くておいしい」
と感じることがあります。
一方で、
「この香り、好きだな」
と思うこともあります。
甘味。
酸味。
ほろ苦さ。
コク。
そうした味わいを楽しむお菓子。
そして、
バニラ。
柑橘。
紅茶。
スパイス。
ハーブ。
そんな香りが印象に残るお菓子。
では、
「味で楽しむお菓子」と「香りで楽しむお菓子」は、何が違うのでしょうか。
もちろん、実際のお菓子では味と香りをきれいに分けることはできません。
私たちは、舌で感じるものと鼻で感じるものを合わせながら、「おいしい」と感じています。
その中でハーブは、とくに香りの部分へ働きかけることが多い素材です。
今回は、味と香りの違いをやさしく整理しながら、ハーブがハーブスイーツの中でどんな立ち位置にいるのかを考えてみたいと思います。
〜お菓子の「味」は、舌で感じるものだけではありません〜
普段、
「このケーキ、おいしい」
と言うとき。
私たちは甘さだけを感じているわけではありません。
砂糖の甘味。
果物の酸味。
チョコレートのほろ苦さ。
バターのコク。
そして、鼻へ抜けていく香り。
それらが一緒になって、ひとつのお菓子の印象を作っています。
そのため、
「味で楽しむ」
「香りで楽しむ」
と分けて考えることはできますが、実際には二つは深くつながっています。
〜味で分かりやすい素材があります〜
たとえば、レモン。
酸味があります。
チョコレート。
甘さや苦味、コクがあります。
キャラメル。
甘味と香ばしさがあります。
果物には、甘味や酸味、水分、食感があります。
こうした素材は、口に入れたときに味として存在を感じやすいものです。お菓子そのものの味の方向を、大きく作ることがあります。
〜ハーブは、香りから存在に気づくことが多い素材です〜
一方でハーブは、少量をお菓子へ使った場合、
「甘い」
「酸っぱい」
といった味より先に、香りとして存在を感じることがあります。
カモミールの穏やかな香り。
ローズマリーの清々しい香り。
ミントの爽やかさ。
ローズの華やかさ。
レモンバームの明るい香り。
ひと口食べて、
「あ、何か違う」
と感じる。
そのあと、
「カモミールだ」
「ローズマリーだ」
と気づく。
ハーブスイーツでは、そんな香りから始まるおいしさがあります。
〜「食べた瞬間」より「あとから」感じることもあります〜
ハーブのおもしろいところは、口に入れた瞬間だけが見せ場ではないことです。
クッキーをひと口。
最初はバター。
次に砂糖の甘さ。
噛んでいると、小麦の香ばしさ。
そして、あとからローズマリーがふっと鼻へ抜ける。
そんな順番があります。
ハーブは、
「最初から全部を主張する素材」
ではなく、
「あとから印象を加える素材」
として使うこともできます。
〜香りは、お菓子の印象を大きく変えます〜
同じような生地でも、香りが変われば印象は大きく変わります。
プレーンなクッキー。
カモミールのクッキー。
ローズマリーのクッキー。
ローズのクッキー。
基本の甘さや食感が近くても、それぞれ違うお菓子に感じられます。
香りは目に見えません。
けれど、お菓子の雰囲気を作る大切な要素です。
〜甘さが同じでも、軽く感じることがあります〜
たとえばミント。
甘いチョコレート菓子へミントを合わせると、あと味が爽やかに感じられることがあります。
砂糖の量が減ったわけではありません。
それでも、
「少し軽い」
「すっきりしている」
と感じる。
香りによって、甘さの印象まで変わることがあるからです。
ハーブスイーツでは、この「感じ方の変化」を楽しむことができます。
〜ローズマリーなら、甘さの中に清々しさが加わります〜
バターを使ったスコーン。
そこへ少量のローズマリー。
スコーンそのものには、
小麦。
バター。
砂糖。
そうした焼き菓子らしい味があります。
ローズマリーが加わると、その味の中にきりっとした香りが入ります。
甘さを消すのではありません。
バターを隠すのでもありません。
その間に、少し違う風を通してくれるような存在です。
〜カモミールなら、味を包むように香ることがあります〜
カモミールは、比較的穏やかな香りを持つハーブです。
クッキー。
マフィン。
りんごを使った焼き菓子。
そんなお菓子へ加えると、強く前へ出るというより、全体へやさしくなじむことがあります。
「カモミール味」
とはっきり分かるというより、
「なんだかやわらかな香りがする」
そんな感じ方もあります。
香りで楽しむお菓子には、この曖昧さも魅力になります。
〜ローズなら、華やかさそのものが印象になります〜
ローズを使うと、花の香りがお菓子へ加わります。
甘さ。
酸味。
食感。
そうしたものとは別に、
「華やか」
という印象が生まれます。
ベリーと合わせれば、さらに明るく。
チョコレートと合わせれば、少し深く。
味だけを数字で表しても分かりにくい部分です。香りが、お菓子の雰囲気を作っています。
〜味は「何を食べたか」を、香りは「どんな印象だったか」を残すことも〜
もちろん、いつもそうとは限りません。
けれど、お菓子を思い出すとき、
「甘かった」
「酸っぱかった」
という味の記憶だけでなく、
「あのローズマリーの香り」
「あのカモミールのやさしい感じ」
と香りの印象が残ることがあります。
味が、お菓子の輪郭を作る。
香りが、そのお菓子の記憶を少し深くする。
そんな関係になることもあります。
〜香りで楽しむお菓子にも、味の土台は必要です〜
ハーブの香りが魅力だからといって、
「香りさえよければいい」
というわけではありません。
クッキーなら、クッキーとしておいしい。
スコーンなら、スコーンとしておいしい。
マフィンなら、生地そのものがおいしい。
その上にハーブの香りがあります。
土台のお菓子が整っているからこそ、香りも心地よく感じられます。
〜ハーブだけが前に出ると、香りを楽しみにくくなることもあります〜
香りのお菓子だからといって、ハーブを強くしすぎると、
苦い。
青臭い。
香りが重たい。
食べ続けにくい。
そんな印象になることがあります。
香りで楽しむことと、香りを強くすることは同じではありません。
バター。
砂糖。
果物。
チョコレート。
そしてハーブ。
それぞれが見えるところを探すことが大切です。
〜味で楽しむ素材とハーブは、競わせなくてもいい〜
たとえばチョコレートとミント。
チョコレートには、甘さや苦味、コクがあります。
ミントには、爽やかな香りがあります。
どちらを勝たせる必要もありません。
チョコレートのおいしさを感じたあと、ミントがふっと香る。
それでひとつのお菓子になります。
違う役割を持つ素材だからこそ、一緒に使うことができます。
〜フルーツとハーブも、違う部分を支え合います〜
フルーツには、
甘味。
酸味。
水分。
食感。
色。
があります。
ハーブには、香りがあります。
たとえば、りんごとカモミール。
りんごの甘酸っぱさや果肉を楽しみながら、カモミールが穏やかに香る。
オレンジとローズマリーなら、柑橘の味とローズマリーの清々しさ。
味と香りが別の方向からひとつのお菓子を作ります。
〜ナッツなら、香ばしさとハーブの香りを重ねられます〜
ナッツには、香ばしさやコク、食感があります。
そこへハーブを合わせると、
噛んだときにはナッツの香ばしさ。
そのあとにハーブの香り。
という流れを作ることもできます。
ローズマリーとくるみ。
カモミールとアーモンド。
ローズとピスタチオ。
味や食感を持つ素材と、香りを持つハーブ。
それぞれの違いを活かした組み合わせです。
〜香りは、温度によっても感じ方が変わります〜
ハーブスイーツでは、温度も大切です。
焼きたてのスコーン。
まだ温かいマフィン。
オーブンから出したばかりのクッキー。
温かい状態では、香りが立ちやすく感じられることがあります。
少し冷めると、香りが穏やかになる。
翌日には、生地となじんだ印象になる。
同じお菓子でも、香り方が変わります。これは、味だけを見ていると気づきにくい楽しみです。
〜香りを意識すると、食べる速度が少し変わることがあります〜
ハーブスイーツを食べるとき、
「どんな香りかな」
と思う。
すると、自然と少しゆっくり食べることがあります。
ひと口。
噛む。
香りを感じる。
飲み込む。
あと味を見る。
お茶をひと口。
味だけでなく香りへ意識を向けることで、お菓子を味わう時間そのものが少し変わります。
〜香りは、目に見えない材料です〜
小麦粉は見えます。
バターも見えます。
果物も見えます。
ナッツも見えます。
でも、香りは見えません。
それでも、
「この香りがなかったら、同じお菓子ではない」
と思うことがあります。
バニラ。
柑橘。
紅茶。
スパイス。
そしてハーブ。
香りも、お菓子を形作る立派な材料のひとつです。
〜ハーブは、その「見えない部分」を広げてくれます〜
ハーブスイーツのおもしろさは、お菓子作りに新しい味をひとつ足すことだけではありません。
「香りをどう作ろう」
と考えるようになることです。
どのハーブを選ぶのか。
強く香らせるのか。
穏やかに残すのか。
果物と重ねるのか。
バターとなじませるのか。
あと味に残すのか。
香りを意識すると、お菓子を見るところがひとつ増えます。
〜ハーブは主役にも、脇役にもなれます〜
ローズの香りを中心にしたお菓子なら、ハーブが主役。
りんごのマフィンに少量のカモミールを加えるなら、ハーブは脇役。
チョコレートの中にミントを残すなら、余韻を担当する存在。
ハーブの立ち位置は、いつも同じではありません。
だからこそ、
「ハーブスイーツだから、ハーブを一番強くしなければ」
と考えなくてもよいのです。
〜味の中に、香りの居場所を作る〜
ハーブスイーツを作るときには、
「どれくらいハーブを入れればいいか」
だけでなく、
「このお菓子のどこで香ってほしいか」
と考えてみる方法があります。
最初から香る。
噛んでいる途中に分かる。
最後に余韻として残る。
どれも違った魅力があります。
味の中に、ハーブの香りが心地よく収まる場所を探します。
〜「味で楽しむ」と「香りで楽しむ」は、どちらかではありません〜
ここまで分けて考えてきましたが、実際のお菓子は、
味だけ。
香りだけ。
ではありません。
チョコレートのおいしさには、カカオの香りがあります。
果物のおいしさにも、果実の香りがあります。
ハーブにも、香りだけでなく苦味や青さがあります。
味と香りは、互いに重なり合っています。
違いを知ることは、きれいに二つへ分けるためではありません。
お菓子のおいしさを、もう少し細かく見てみるためです。
〜ハーブの立ち位置を簡単に考えると〜
ハーブスイーツの中で、ハーブは、
「甘さや酸味そのものを作る主材料というより、香りや余韻を通して、お菓子全体の感じ方を変える素材」
として働くことが多いものです。
もちろん、種類や使い方によっては味にも大きく影響します。
けれど、まずは、
「香りの材料」
として考えると、ハーブの役割が分かりやすくなります。
〜香りを意識すると、いつものお菓子が少し違って見えてきます〜
いつものクッキー。
いつものスコーン。
いつものマフィン。
それだけでも十分においしいものです。
そこへ、食用のハーブをひとつ。
カモミール。
ローズマリー。
ミント。
ローズ。
レモンバーム。
少量を加えて焼いてみる。
ひと口食べた瞬間には、いつもの味。でも、少ししてから、
「あ、香る」
と気づく。
その瞬間に、お菓子の中にもうひとつの世界があることが分かります。
味を楽しむ。
香りを楽しむ。
そして、その二つが重なったところを楽しむ。
ハーブは、その間をつないでくれる素材のひとつです。
甘さだけでもない。
香りだけでもない。
ひと口の中で、それぞれがちょうどよく重なる。
そんな場所を探していくことも、ハーブスイーツを作り、味わう楽しさなのだと思います。
日本ハーブスイーツ協会
白水
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あなたの普段の日常に、穏やかなハーブの香りと学びを。
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