『香りで楽しむお菓子と味で楽しむお菓子はどう違う?ハーブの立ち位置から考えます』

2026年09月10日 13:54
日本ハーブスイーツ協会

お菓子を食べたとき、

「甘くておいしい」

と感じることがあります。

一方で、

「この香り、好きだな」

と思うこともあります。

甘味。

酸味。

ほろ苦さ。

コク。

そうした味わいを楽しむお菓子。
そして、

バニラ。

柑橘。

紅茶。

スパイス。

ハーブ。

そんな香りが印象に残るお菓子。

では、

「味で楽しむお菓子」と「香りで楽しむお菓子」は、何が違うのでしょうか。

もちろん、実際のお菓子では味と香りをきれいに分けることはできません。
私たちは、舌で感じるものと鼻で感じるものを合わせながら、「おいしい」と感じています。
その中でハーブは、とくに香りの部分へ働きかけることが多い素材です。
今回は、味と香りの違いをやさしく整理しながら、ハーブがハーブスイーツの中でどんな立ち位置にいるのかを考えてみたいと思います。

〜お菓子の「味」は、舌で感じるものだけではありません〜

普段、

「このケーキ、おいしい」

と言うとき。

私たちは甘さだけを感じているわけではありません。

砂糖の甘味。

果物の酸味。

チョコレートのほろ苦さ。

バターのコク。

そして、鼻へ抜けていく香り。

それらが一緒になって、ひとつのお菓子の印象を作っています。

そのため、

「味で楽しむ」

「香りで楽しむ」

と分けて考えることはできますが、実際には二つは深くつながっています。

〜味で分かりやすい素材があります〜

たとえば、レモン。

酸味があります。

チョコレート。

甘さや苦味、コクがあります。

キャラメル。

甘味と香ばしさがあります。

果物には、甘味や酸味、水分、食感があります。
こうした素材は、口に入れたときに味として存在を感じやすいものです。お菓子そのものの味の方向を、大きく作ることがあります。

〜ハーブは、香りから存在に気づくことが多い素材です〜

一方でハーブは、少量をお菓子へ使った場合、

「甘い」

「酸っぱい」

といった味より先に、香りとして存在を感じることがあります。

カモミールの穏やかな香り。

ローズマリーの清々しい香り。

ミントの爽やかさ。

ローズの華やかさ。

レモンバームの明るい香り。

ひと口食べて、

「あ、何か違う」

と感じる。

そのあと、

「カモミールだ」

「ローズマリーだ」

と気づく。

ハーブスイーツでは、そんな香りから始まるおいしさがあります。

〜「食べた瞬間」より「あとから」感じることもあります〜

ハーブのおもしろいところは、口に入れた瞬間だけが見せ場ではないことです。

クッキーをひと口。

最初はバター。

次に砂糖の甘さ。

噛んでいると、小麦の香ばしさ。

そして、あとからローズマリーがふっと鼻へ抜ける。

そんな順番があります。

ハーブは、

「最初から全部を主張する素材」

ではなく、

「あとから印象を加える素材」

として使うこともできます。

〜香りは、お菓子の印象を大きく変えます〜

同じような生地でも、香りが変われば印象は大きく変わります。

プレーンなクッキー。

カモミールのクッキー。

ローズマリーのクッキー。

ローズのクッキー。

基本の甘さや食感が近くても、それぞれ違うお菓子に感じられます。
香りは目に見えません。

けれど、お菓子の雰囲気を作る大切な要素です。

〜甘さが同じでも、軽く感じることがあります〜

たとえばミント。

甘いチョコレート菓子へミントを合わせると、あと味が爽やかに感じられることがあります。

砂糖の量が減ったわけではありません。

それでも、

「少し軽い」

「すっきりしている」

と感じる。

香りによって、甘さの印象まで変わることがあるからです。
ハーブスイーツでは、この「感じ方の変化」を楽しむことができます。

〜ローズマリーなら、甘さの中に清々しさが加わります〜

バターを使ったスコーン。

そこへ少量のローズマリー。

スコーンそのものには、

小麦。

バター。

砂糖。

そうした焼き菓子らしい味があります。
ローズマリーが加わると、その味の中にきりっとした香りが入ります。

甘さを消すのではありません。

バターを隠すのでもありません。

その間に、少し違う風を通してくれるような存在です。

〜カモミールなら、味を包むように香ることがあります〜

カモミールは、比較的穏やかな香りを持つハーブです。

クッキー。

マフィン。

りんごを使った焼き菓子。

そんなお菓子へ加えると、強く前へ出るというより、全体へやさしくなじむことがあります。

「カモミール味」

とはっきり分かるというより、

「なんだかやわらかな香りがする」

そんな感じ方もあります。
香りで楽しむお菓子には、この曖昧さも魅力になります。

〜ローズなら、華やかさそのものが印象になります〜

ローズを使うと、花の香りがお菓子へ加わります。

甘さ。

酸味。

食感。

そうしたものとは別に、

「華やか」

という印象が生まれます。
ベリーと合わせれば、さらに明るく。
チョコレートと合わせれば、少し深く。
味だけを数字で表しても分かりにくい部分です。香りが、お菓子の雰囲気を作っています。

〜味は「何を食べたか」を、香りは「どんな印象だったか」を残すことも〜

もちろん、いつもそうとは限りません。
けれど、お菓子を思い出すとき、

「甘かった」

「酸っぱかった」

という味の記憶だけでなく、

「あのローズマリーの香り」

「あのカモミールのやさしい感じ」

と香りの印象が残ることがあります。

味が、お菓子の輪郭を作る。
香りが、そのお菓子の記憶を少し深くする。
そんな関係になることもあります。

〜香りで楽しむお菓子にも、味の土台は必要です〜

ハーブの香りが魅力だからといって、

「香りさえよければいい」

というわけではありません。

クッキーなら、クッキーとしておいしい。

スコーンなら、スコーンとしておいしい。

マフィンなら、生地そのものがおいしい。

その上にハーブの香りがあります。
土台のお菓子が整っているからこそ、香りも心地よく感じられます。

〜ハーブだけが前に出ると、香りを楽しみにくくなることもあります〜

香りのお菓子だからといって、ハーブを強くしすぎると、

苦い。

青臭い。

香りが重たい。

食べ続けにくい。

そんな印象になることがあります。
香りで楽しむことと、香りを強くすることは同じではありません。

バター。

砂糖。

果物。

チョコレート。

そしてハーブ。

それぞれが見えるところを探すことが大切です。

〜味で楽しむ素材とハーブは、競わせなくてもいい〜

たとえばチョコレートとミント。

チョコレートには、甘さや苦味、コクがあります。
ミントには、爽やかな香りがあります。

どちらを勝たせる必要もありません。
チョコレートのおいしさを感じたあと、ミントがふっと香る。
それでひとつのお菓子になります。

違う役割を持つ素材だからこそ、一緒に使うことができます。

〜フルーツとハーブも、違う部分を支え合います〜

フルーツには、

甘味。

酸味。

水分。

食感。

色。

があります。

ハーブには、香りがあります。

たとえば、りんごとカモミール。

りんごの甘酸っぱさや果肉を楽しみながら、カモミールが穏やかに香る。

オレンジとローズマリーなら、柑橘の味とローズマリーの清々しさ。

味と香りが別の方向からひとつのお菓子を作ります。

〜ナッツなら、香ばしさとハーブの香りを重ねられます〜

ナッツには、香ばしさやコク、食感があります。
そこへハーブを合わせると、

噛んだときにはナッツの香ばしさ。

そのあとにハーブの香り。

という流れを作ることもできます。

ローズマリーとくるみ。

カモミールとアーモンド。

ローズとピスタチオ。

味や食感を持つ素材と、香りを持つハーブ。
それぞれの違いを活かした組み合わせです。

〜香りは、温度によっても感じ方が変わります〜

ハーブスイーツでは、温度も大切です。

焼きたてのスコーン。

まだ温かいマフィン。

オーブンから出したばかりのクッキー。

温かい状態では、香りが立ちやすく感じられることがあります。
少し冷めると、香りが穏やかになる。
翌日には、生地となじんだ印象になる。

同じお菓子でも、香り方が変わります。これは、味だけを見ていると気づきにくい楽しみです。

〜香りを意識すると、食べる速度が少し変わることがあります〜

ハーブスイーツを食べるとき、

「どんな香りかな」

と思う。

すると、自然と少しゆっくり食べることがあります。

ひと口。

噛む。

香りを感じる。

飲み込む。

あと味を見る。

お茶をひと口。

味だけでなく香りへ意識を向けることで、お菓子を味わう時間そのものが少し変わります。

〜香りは、目に見えない材料です〜

小麦粉は見えます。

バターも見えます。

果物も見えます。

ナッツも見えます。

でも、香りは見えません。

それでも、

「この香りがなかったら、同じお菓子ではない」

と思うことがあります。

バニラ。

柑橘。

紅茶。

スパイス。

そしてハーブ。

香りも、お菓子を形作る立派な材料のひとつです。

〜ハーブは、その「見えない部分」を広げてくれます〜

ハーブスイーツのおもしろさは、お菓子作りに新しい味をひとつ足すことだけではありません。

「香りをどう作ろう」

と考えるようになることです。

どのハーブを選ぶのか。

強く香らせるのか。

穏やかに残すのか。

果物と重ねるのか。

バターとなじませるのか。

あと味に残すのか。

香りを意識すると、お菓子を見るところがひとつ増えます。

〜ハーブは主役にも、脇役にもなれます〜

ローズの香りを中心にしたお菓子なら、ハーブが主役。

りんごのマフィンに少量のカモミールを加えるなら、ハーブは脇役。

チョコレートの中にミントを残すなら、余韻を担当する存在。

ハーブの立ち位置は、いつも同じではありません。
だからこそ、

「ハーブスイーツだから、ハーブを一番強くしなければ」

と考えなくてもよいのです。

〜味の中に、香りの居場所を作る〜

ハーブスイーツを作るときには、

「どれくらいハーブを入れればいいか」

だけでなく、

「このお菓子のどこで香ってほしいか」

と考えてみる方法があります。

最初から香る。

噛んでいる途中に分かる。

最後に余韻として残る。

どれも違った魅力があります。

味の中に、ハーブの香りが心地よく収まる場所を探します。

〜「味で楽しむ」と「香りで楽しむ」は、どちらかではありません〜

ここまで分けて考えてきましたが、実際のお菓子は、

味だけ。

香りだけ。

ではありません。

チョコレートのおいしさには、カカオの香りがあります。
果物のおいしさにも、果実の香りがあります。
ハーブにも、香りだけでなく苦味や青さがあります。

味と香りは、互いに重なり合っています。
違いを知ることは、きれいに二つへ分けるためではありません。
お菓子のおいしさを、もう少し細かく見てみるためです。

〜ハーブの立ち位置を簡単に考えると〜

ハーブスイーツの中で、ハーブは、

「甘さや酸味そのものを作る主材料というより、香りや余韻を通して、お菓子全体の感じ方を変える素材」

として働くことが多いものです。

もちろん、種類や使い方によっては味にも大きく影響します。
けれど、まずは、

「香りの材料」

として考えると、ハーブの役割が分かりやすくなります。

〜香りを意識すると、いつものお菓子が少し違って見えてきます〜

いつものクッキー。

いつものスコーン。

いつものマフィン。

それだけでも十分においしいものです。
そこへ、食用のハーブをひとつ。

カモミール。

ローズマリー。

ミント。

ローズ。

レモンバーム。

少量を加えて焼いてみる。
ひと口食べた瞬間には、いつもの味。でも、少ししてから、

「あ、香る」

と気づく。

その瞬間に、お菓子の中にもうひとつの世界があることが分かります。

味を楽しむ。

香りを楽しむ。

そして、その二つが重なったところを楽しむ。
ハーブは、その間をつないでくれる素材のひとつです。

甘さだけでもない。

香りだけでもない。

ひと口の中で、それぞれがちょうどよく重なる。

そんな場所を探していくことも、ハーブスイーツを作り、味わう楽しさなのだと思います。


日本ハーブスイーツ協会
白水


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